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●2006, NO.01

ランドスケープ・アーキテクチュア2005年6月号から ローレイン・ジョンソン

都市農園(アーバン・ファーム)をつくる動きが増えつつある中で、ランドスケープ・アーキテクトが果たすべき役割はあるのだろうか?ランドスケープ・アーキテクトはこれまで、都市農園を設計することに、どれほど積極的に関わってきたのだろうか?
オンタリオ州トロントとニューヨーク州ロチェスターの2つのプロジェクトは、都市農園の今後の課題や可能性とともに、都市再生の一翼を担うであろうこの分野におけるランドスケープ・アーキテクトの重要な役割を明らかにするものである。
都市農園を構成する要素については、様々な考え方がある。
北米で最も古い歴史を持つ組織『シティー・ファーマーCity Farmer:本部カナダ』の代表理事であるマイケル・リーベンストン氏によれば、「都市農園とは、ベランダやバルコニーのポットでハーブを育てることでもよく、何がしがの食べられる作物を都市において栽培することすなわち、都市農園と呼べると思う。」ということである。
一方でロチェスターにある環境デザイン&リサーチ事務所のトム・ロビンソン氏は、ガーデンと農園の間に明確に線を引いて区別している。すなわち「ガーデンと農園の違いは、食料生産が一定のコミュニティー規模で行われているかどうかにある。食料生産が、家庭菜園や近所の人々の間だけでなく、もっと広くコミュニティー(地域社会)を対象にしているものを農園と呼ぶ。」ということになる。
大きなコミュニティーを対象にしたロチェスターぶどう園(ロビンソン氏がプロジェクト・マネージャーを務めている。敷地面積:2.7エーカー)は、市の最貧困層が集中する地域に活性化と地域交流の促進をもたらしている。この地区では広範囲の破壊行為が原因で、高い空室率が続いていた。しかし同地には農業の歴史も根強く持続していた。ヴァインヤード(直訳:ぶどう園)の地は、ロチェスターに最後に残された農地である。何年にもわたりこの地は放置され、2000年まではガラクタの山が積み上がった不法投棄の温床であったが、農地であった事実だけは忘れられずにいたのである。(実際に農園として再生させるために、トラック95台分のガラクタの山を撤去する必要があった。)
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後半部分から
「ランドスケープ・アーキテクトが都市農園の設計に関わるケースは、極めて稀である」アメリカン・コミュニティーガーデン協会のローラ・バーマンは言う。
「その理由の一つは、コミュニティー・プロジェクトは往々にして予算の制約が厳しいからです。」
数々のコミュニティーとの仕事に関わってきたワシントン大学のダニエル・ウィンターボトムは続けてこう語る。「ランドスケープ・アーキテクトとして我々が導入できることは数多くある。だが、様々な人々と協働したり、コミュニティー内の政治的なことに関わることで、ややこしい面があることも事実である。」
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都市構造の中で、都市農園が辺境の端役から主役になっていくためには、都市農園所有者、政治家、コミュニティー・グループ、ランドスケープ・アーキテクトたちが、新しい発想で望むことが必要になってくる。「都市の中には多くの矛盾がある。都市農園はそれを映す事例の一つである。」とダニエル・ウィンターボトムは言う。「都市農園プロジェクトが持つ価値や目的は多元的であるために、デザインの可能性も無限の広がりを持っているといえる。ランドスケープ・アーキテクトはそこで主導的な役割を発揮すべきだし、少なくても話し合いの場には参加すべきであると思う。食料の確保という問題一つを取ってみても、都市農園の長期的な必要性は高まってくるのであるから。」
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