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低影響開発とは、Low impact developmentの訳語で、頭文字をとってL.I.D(リッド)と呼ばれる。単語のとおり、自然に与える影響を最小限にしようとする開発のことを言う。この言葉は最近できた言葉ではなく、コンセプトも目新しいものではない。しかし、今まで低影響開発については、「生態系を保全する開発」とか「自然への人工的な影響を少なくする開発」というふうに結果・目標あるいは概念的な語られかたをされることが多く、実際に何をしたらよいのかについてはあいまいさが残っていた。そこでまず我々は、米国の視察や諸団体の協力をもとに、ここにL.I.Dについて紹介し定義する。
低影響開発L.I.Dとは、自然の原理を基にした革新的な雨水管理の方法である。
L.I.Dと従来の雨水管理
現在広く一般的に行われている雨水管理がどのようなものであるかというと、それは、降雨を下水管や雨水管を使って輸送し、放流もしくは集中化した処理システムで処理した後に放流するという一元的な方法である。これに対してL.I.Dとは、降雨自体を水源と見なし、敷地の隅々に降り注いだ雨をそのまま利用し、敷地レベルで雨水管理をする思想である。
リッドは、段階的に実施する開発条例になる可能性を秘める。降水を保全するために、緑地のある場所すべてで敷地からの降雨流出をその緑地に維持させ、浸透を最大限にすることにより流出を最小限にする。それは、水質改善にナチュラル・プロセス(自然浸透・貯留)を利用するために機能的ランドスケープを必要とする。それには次のようなものがある。
バイオレメディエーション
・バイオスウェイルBioswale (生物湿地・バイオ湿地・低湿地)
・バイオレテンションBioretention(バイオ貯留池・生物滞留池)
バイオレメデーション装置:生物浄化
リッドで用いるこれらの装置は、様々な野草、草花、潅木、樹木などを用いてつくることができる。その目的は、蒸発散を促進し、土壌の多孔量を保全し、生物学的活性を促進し、土壌や植物への汚染物質の取込みを促進するために設置する。つまり、多くの不浸透性の地域による流出が、バイオレメディエーション装置へと導かれ、そこで、水処理を草木、マルチ、土壤環境が行い、雨水を水循環に積極的に載せる・・・ということが実現するのである。
その特徴
そこで、この装置は、場所を限らずに、土地開発計画の全体にわたって、水源近くの表面流出を遮断するために戦略的に配置することになる。また、多くの場合、水質衛生の要素を提供するようにもともと立案されている。
さらに最近の調査では、流出の量制御を達することができることを示している。が、このバイオ処理方式は、(浸透、濾過、浄化について)同程度の効果が期待できる人工の装置や材料と異なり、ランドスケープ(造園)を美的に満足させるという追加利点を持っている。
廃水処理の知識や文献調査によって、土壤や植物が水を利用して、汚染物質をろ過する作用があることも認められている。
リッドの利点
●環境的利益●
- 自然の水循環サイクルを助長する
- 造園(庭・湿地)からの流出量と流出水位を保つ
- 河川の水位が高くなるのを防ぎ、洪水を防止し、魚類と野生動物環境を保護する
- 降雨流出中の汚染物質を減らす
- 甲殻類の繁殖地域や海岸が細菌汚染しないよう保護する
- 樹木や他の植物を保全または回復する
●開発者の利益●
- 敷地配置計画や降水装置の設置や改造に、新しい選択を提供する
- 降雨処理施設の建設コストを削減する
- 魅力ある近隣地区を生み出すのに役に立ち、敷地建物がより速くプレミアム付きで売れる
- 降水池を縮小し、その面積を他の多様性のある価値あるものを生み出すのに利用できる
- 降水処理費用を縮小する
●地方自治体や地域社会の利益●
- 洪水を防止する
- 河川や、野生生物の生息地、海洋生物の生息地を保全する
- 飲料水供給を維持する
- 降水処理施設の維持費を縮小する
- 道路、縁石、樋、他の基礎設備の低コスト化を行う
- 地域社会の外観と美的価値を上げる
- 敷地の資産価値を上げる
- コスト効率の良い都市の装置の近代化に対して新しい手法を提供する
- 下水処理施設の費用を削減する
資料) (c)Puget Sound Action Team, office of the govemor , State of wathingoton.
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