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●2005, NO.11

 

不動産開発業者による公園用地取得資金負担制度


by ピーター・ハーニック,2004年8月 掲載日2005.9.9

 

室内の居住空間が狭く混み合っている状態は、外部のオープンスペースによってバランスをとる必要がある。アパートビルを建て、古いレンガ造りの建物を改築し、個人住宅を再分割するような場合には、レクレーションや健康、社会とのつながり、眺望、自然を楽しむ、環境を改善するといった目的のために、外部の快適空間としての公園を作る必要があるのである。他地域に住む人々が戸建て住宅に庭を持つように、ニューヨーカーは公園を持つ。つまりニューヨークに住む人が増えるのであれば、より多くの公園が必要となる。こうした公園を創設し維持していく責任の全ては、行政が請け負ってくれるのが理想ではあるが、連邦レベルでの財政難や地方政府レベルでの増税反対の圧力を考えるとそれは難しく、そこで、パッチワーク・キルトのような形態の、公と民間のパートナーシップ(パブリック・プライベート・パートナーシップ)が大きな役割りを果たすことになる。

 


もし開発業者が、居住用マンションを建てて利益を上げるのであれば、彼らに新しい公園の提供を求めるのも、あながち的外れではないように考えられる。多くのコミュニティーでは、開発業者に公園を新設するための土地の供出や、政府が用地取得する際の費用の肩代わりを求めている。開発分譲の条件として運動場や小川沿いの遊歩道の確保を求めるこのシステムの概念は、「開発業者負担義務」や「開発業者による(環境)インパクトフィー」として知られているが、郊外を想定したもののように思われているかもしれない。しかし、人口過密地帯であるシカゴやマイアミ、ロングビーチ、アトランタ、ポートランド、オレゴン、ロス・アンジェルスなどにも同様の法律がある。

 


マイアミでは、ダウンタウンにおける居住用建築1,000平方フィート(約90�F)ごとに157ドル(約17,000円)を、商業施設建築1,000平方フィートごとに104ドル(約11,000円)を課金している。徴収された資金の用途は、その新築ビル周辺部での6年以内の公園用地取得や公園設備建設のために限定され、メンテナンスに使用することはできない。シカゴにも同様の「オープンスペース・インパクトフィー」というものがあり、それはより累進的で、小規模のアパートには313ドルを課金するのに対して、大規模アパートには1,253ドルを課す体系になっている。また購入しやすい安価な住宅については、一律100ドルとして査定されている。(シカゴ)市は7年間かけてこの徴収した資金を使うことになっており、期限が切れた場合は開発業者に返納するとしている。通常大規模開発の場合は、市は現金を徴収するよりも、等価の土地を受領する方を好むことが多い。

 


カリフォルニア州ロングビーチでは、1戸につき2,680ドルを徴収し、標準的なダブルベッド1室の新世帯が増えるごとに、38.72平方フィートの公園を作り出すという基準を設けている。そこで、おそらくニューヨークにおいても、同様の強制課金制度を考える時期にきているのではないかと思われる。現在ニューヨークには、道路に面したプラザを設けることの見返りとして容積率の割り増しを認める非公式な制度があるが、これは強制課金制度ではなく、また人口増加が著しい郊外においてはあまり機能しない。もし過去1990年から2000年の間に、ニューヨークにこの課金制度があったと仮定すると、685,000世帯の住居が作り出される過程で3億6000万ドルの公園用地取得資金が徴収できていたことになる。これは、公園用地として相応しい土地300エーカーを市の周辺部に取得できていたことになる。これで十分とは言えないものの、その面積はリバーサイドパーク一個分に相当し、またブライアントパークなら35個分に相当するのである。

 


このプログラム(制度)が、本当により多くの公園創出につながるのかどうかを検証するために、私がディレクターを勤める「シティーパークエクセレンスのための公有地センター」で、12の市について調査を行ったところ、様々な調査結果が得られた。6つの市においては、開発業者が支払ったインパクトフィーで1,329エーカーの公園用地が新たに取得されたというデータが出ている。この面積は、本来取得されているはずの計算上の面積の60%にしかならないのではあるが、ニューヨークの現状であるゼロよりは余程いい数字と言える。

 


開発業者への課金制度については議論のあるところであり、多くの開発業者は、住宅を供給していることで、十分社会への責任を果たしていると考えている。また、公園用地取得のための負担が課されることによって、ただでさえ高額なアパート取得費用がさらに上昇してしまうとも主張する。これは確かに一理あるものの、逆にこの制度を導入することによって、税金がわずかながら安くなるという議論もできるはずである。また、公園が近くにあることで、そのアパートの資産価値も高まる。都会で生活することは、よく、歯を食いしばりながら都市の谷間(アーバン・キャニオン)を抜けて、職場と住まいの間を行き来するようなものだと例えられるが、極論すれば、都市生活がもっと快適なものとなるような姿を目指すべきなのである。ニューヨークは、町に公園などなかった19世紀を経験しているわけで、誰しもその時代に逆戻りなどしたくないのは明白である。

 



あらゆる観点からみて、ニューヨークの公園システムは全米でも最上のものの一つである。しかしその大半は、1859年以降の先人たちによって創り出されたものなのである。このお金に換算できないほどの遺産を維持管理し、価値を高め、次世代により多くの公園を残していくことは、非常に重要なことである。開発業者への課金制度もその助けになる方策の一つである。

INDEX
フロントヤード(前庭)に対するイギリスの新しい基準
食物のためのデザイン
公園を通じたコミュニティーの再発見(1) (2) (3) (4)
良い公共空間を作るための4つのポイント
危機に瀕する5つの公共空間
●不動産開発業者による公園用地取得資金負担制度
世界で最も過大評価されている5つの場所
何が成功した場所を作るのか(1)
近隣公園のレポートカード
小規模公園の民間レポートカード
民間による公園のための資金調達
シアトルは、開発者が公園の代価を払うことを望む
あなたの都市はどう格付けされているか
ニューヨーク市の失われゆく公園
地球温暖化:暖まる
地球温暖化:明確なゴールを定める時期
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