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●2005, NO.13

誰もが良い空間を作りたいと思っている。しかし思いだけでそれが実現しないのも事実である。そこで、「良い公共空間」を決定づけるポイントを4つ掲げ、それぞれについてどのようなことを指すのか、チェックリストの形でまとめてみた。既存の公共空間や公共空間の計画を分析し、良い空間を実現する手助けとして欲しい。
掲載日:2005.11.24
良い公共空間を作るポイントとはなにか
良い公共空間とは、驚くほどシンプルなものである。Project for Public Spacesというアメリカの団体は、1000カ所を越える公共空間を評価し、非公式なものを含めると1万カ所以上の公共空間の調査を行った結果、大規模なプラザから小規模な近隣公園にいたるまで、良い空間というものは、次の4つの重要なポイントを共有していることを発見した。
1.アクセスがしやすい。
敷地内の他重要な施設への動線が上手く設計されている
2.快適な空間で良いイメージとなる展望を示している
3.そこで行われる様々な活動に多くの人々が参加している
4.人々が一度だけではなく何度も足を運んで集うような、
社会性を持った場所である
これらは、私たちそれぞれが住んでいる地域の公共空間を評価し、より良い空間へ変換していくための指針となる。では、1.〜4.についてより具体的に説明をする。
1.アクセス及び周辺部へのつながり(動線)
周辺部への動線を見れば、アクセスの良し悪しは容易に判断できる。良い空間の特徴は、到達しやすいこと、入りやすいこと、入ってからどこに行きたいかが分かりやすく示されていることである。その場で何が行われているのかを、近くからだけでなく遠くからも見通せることが望ましい。また、アクセスについては敷地境界も影響する。例えば、何もない壁沿いや空き地と比較すれば、道沿いに各種のショップが並んだ通りの方が人々の興味を引くし、一般的により安全である。さらに、アクセスのためのスペースとして、徒歩や公共交通機関で訪れる人への配慮がなされていること、自動車で来る人が多くても渋滞を引き起こさないだけの十分なスペースが確保されていること、も重要である。
アクセス容易度と周辺とのつながりの成否チェック

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その空間は遠くからも見通せるか YES ・NO
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建物内部の様子は外からも視認できるか YES ・NO
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敷地の隣にある建物からの動線が確保されているか YES ・NO
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その空間の周囲は何で囲まれているか。それは、殺風景な壁、駐車場、窓のないビルのように、人々を寄せ付けづらいものだろうか YES ・NO
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その空間は隣接した建物に出入りする人々が、頻繁に利用する場所となっているか YES ・NO
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歩いて入りやすい構造になっていて、車の激しい往来や、逆に全く人気のない通りなどで入場が阻害されることはないか YES ・NO
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周辺部への行き来を容易にする歩道が確保されているか YES ・NO
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身体障害者の利用に関して配慮がなされているか YES ・NO
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利用者が行きたいところへスムーズに行けるように動線が確保されているか YES ・NO
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バス、電車、自家用車、自転車など、複数の交通手段を利用者が選べるようになっているか YES ・NO
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その空間を良い空間とするには、4.はNO、それ以外はYESの答えが当てはまるように作られている必要がある。
2.快適さとイメージ
快適で誘い込まれるような場所ならば、成功した空間(良い空間)である。快適であると人々が感じるためには、安全で清潔で座ってくつろげる場所がなければならない。中でも、他は合格点であるにもかかわらず、座れる場所が十分にないことが大きな欠点となっている空間は想像以上に多い。四季を通じて様々な時間帯に、日なたあるいは日陰のいろいろな場所で、座ってくつろげる空間が数多く確保されていて、好きなところを選べることが、実は、人々が引きつけられる場所の要素として大きい。女性は自分たちが使用する公共空間に関して、より厳しい目で判断しているので、女性が数多くいる場所は一般的に良い空間であることが多い。
快適さとイメージを判断するためのチェック項目

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良い第一印象を持てたか YES ・NO
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男性と同数かそれ以上の女性の利用者がいるか YES ・NO
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座る場所が十分確保されているか。ベンチの配置は適切か。日陰、日なたを問わず、座る場所に関して多くの選択肢が用意されているか
YES ・NO
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清潔でゴミなどが散乱していないか。管理責任者が誰か、明確にされているか YES ・NO
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安全と感じられる場所か。警備担当者が配備されているか。そうであれば、彼らの職務は具体的にどこまでで、その警備体制は何時から何時まで有効なのか YES ・NO
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写真を撮っている人が多くいる、あるいは、写真を撮りたくなるような場所がたくさんあるか YES ・NO
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空間内の歩行者用通路が 自転車などによって占領されていないか。また、自動車の往来のために、そこへの入場が妨げられることはないか
YES ・NO
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すべてYESの答えが望ましいのはいうまでもない。
3.利用度と利用法
公共空間の利用法を決めることは何よりも大切なことである。人々は何らかの目的があって公共空間にやってくる。逆に、面白いことがなく、来る意味を感じてもらえなければ、誰も訪れないままに終わってしまう。もし空間が現実にそうなっているのであれば、それは何かが間違っていることの証左である。運動場があれば年少の子どもたちが日中利用するだろうし、バスケットコートがあればもう少し大きな子どもたちが放課後集まってくる。バンドのコンサートを開催すれば、様々な人たちが夜にやってくるだろう。
利用度と利用方法を考えるためのチェック項目

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よく利用されているか、それともいつも人がいないか
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多様な年齢層の人々によって利用されているか YES ・NO
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散歩、食事、バスケットボール、チェス、リラックス、読書など、何種類の利用方法を一度に行うことができるか
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敷地のどの部分がよく利用されているか。また、利用されていないか
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敷地の管理者がいるか。または誰がその任にあるかすぐにわかるか
YES ・NO
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肯定的な答えが多いほど好ましく、また、3はいくつかを並行して行える空間構成となっていることが望ましい。
4.社会性
社会性は、空間の質を決める最も重要な要因で最も難しい要因である。ある公共空間が、人々のお気に入りの場所となり、皆が友達と会う場所としたり、近所の人と挨拶を交わし見知らぬ人と知り合える場所となれば、それは良い空間の成功事例である。
社会性を考えるためのチェック項目

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友達と会う場所となっているか。多くの人が待ち合わせの場所として利用しているか YES ・NO
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グループで訪れ、その仲間内あるいは他のグループの人々と語らっているか YES ・NO
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来ている人々はお互いに面識があるか YES ・NO
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ここを訪れる人々は他の人たちにその存在を知らせたいと考えているか。または、場所の特徴を誇りをもって説明できるか YES ・NO
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笑顔でいる人が多くいるか。皆、伏目がちでなく目と目で挨拶をかわしているか YES ・NO
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多くの人が頻繁に利用しているか YES ・NO
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来る人たちの年齢層や人種の割合は、そのコミュニティーの全体像をおよそ表しているといえるか YES ・NO
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ゴミを見つけたら自分で拾おうとする人が多くいるか YES ・NO
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YESが多いことが好ましいが、NOである場合、なぜそうなるのか原因を分析することが必要である。
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