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第10回:水の乱用は地球を犠牲にする

文:小出 兼久 2006.09.05 写真:AP通信

 

 



世界の淡水が乱用されていると、国連生物多様性保全条約の議長 Ahmed Djoghlaf は言う。彼は、我々がこの重大な資源をよく管理するか、重大性を認識することから、生きていることを学ばなければならないと論じている。


生物多様性条約(CBD)とは、(1)生物多様性の保全、(2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用、(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の構成かつ公平な配分、の3つを目的とした国際的な条約で、現在、日本を含む187カ国およびECが加盟している。加盟国は、生物多様性保全と持続可能な利用を目的とする国家戦略や計画を作成し実施する義務を負っている。

 

非常に有益で有限の資源である水を、我々は、過剰消費や乱用している。

 

以下は、Ahmed Djoghlafの見解である。

・・・地球上で利用できる淡水は、水全体から見ればごくわずかである。そのため、生物多様性保全条約(CBD)は、水の利害関係がとても激しいことを認めている。人口が増えるにつれ水の消費も増加し、我々の日々の活動は、地球規模で淡水資源に大きな打撃を与えている。我々は、非常に価値があり有限である水を過剰消費し乱用している。

 

我々の活動によって発生した公害は、河川に流れ込み、希釈されて最終的に海へと運ばれるか、あるいは、湖沼や湿地の中に蓄積する。今、水環境があらゆる生態系の中で最も悪い状態にあるのは、今までにしてきたことを思えば、それほど驚くべきことではない。

 

我々の第二報告書は、世界の生物多様性についての展望を記しているが、そこでは、水環境における生態損失の割合は全環境中最速であると述べられている。これは、それ自体重大な関心事ではあるが、それよりも深刻な問題は、多くの人々がこれを開発により当然生じる結果と見なしていることである。私はそれは違うと思う。私の見方を述べるならば、それは、我々の不始末が作り出した結果にすぎない。

 

陸水生態系の生物は、食品と栄養、繊維、薬と維持文化的活動、社会福祉などの多数の利益のために、世界の何百万もの人々に直接に消費されている。その中には、容易く傷つけられやすい集団もある。我々陸水生態系が提供する商品・サービスから考えると、ある物に対する疑問が起こると、その解決が模索され、さらによい解決方法を構築しようという意識が高まることがある。
例えば、自然災害に対する恐れが高まった結果、食物や淡水、燃料に対する関心が高まり、確保と保全に向けた利用法が効率化するなかで、気候や水の流出量の研究が進み、浄水と廃棄物処理が規定され、大地の浸食防止対策が本格的に取られるようになってきた。
成功する開発には、これら機能をすべて管理する必要がある。私は、生態系の状態と人間の幸福の間には、不可避なつながりがあると思うので、これからも生態系の評価を続ける。



中国の渇水は何百万人にも影響する

 

CBDは、我々の節水のために水を管理しようとするが、水利用に対する人々の現実の嘆願は、はるかに協定を越えるものである。人々が貧困から脱却するか、豊かになろうと努力するとき、水の利用に一致した意見はない。
水の消費と管理は、既存の生物多様性を変化させるだろう。これは避けられない。しかし、我々が加える変化が次の世代の活動や権利を否定しないように、我々は生態系の存続を選択しなければならない。
これはむろん、容易な仕事ではない。しかし、CBDに参加した188人の当事者すべてが、それでも我々はこの取り組みを始めるべきであると一致した。私は議長としてこのコミットメントを取り上げるが、それは私の私自身に対するコミットにも他ならない。

 

私は、世界中の若者、女性、NGO、民間業者、市民団体などのそれを聞く必要のある人々に対して、CBDのメッセージを続ける努力を怠らない。従来の国境を越えて、誰もに共通の未来を保証できるよう、すべての国家すべての人々に対してパートナーシップを提供する。

 

水環境の生物の多様性が急速に悪化する情況は、我々を絶望させるにもかかわらず、楽観論を唱える余地がまったくないというわけではない。
我々は、水の多様な用途をよりよく管理する手法を学ぼうと目覚めつつある。水資源管理を成功させるには、水の多様な用途、それぞれが異なる環境にあることを理解しながらも、すべての国家すべての人々が、効率的な水管理という同様の結果を達成しようと深く理解しなければならない。その認識が浸透するとき、我々は、水の賢い利用を達成することができるだろう。

 

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過去と未来の気候と緑
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第14回 2007年の警告 エルニーニョ現象は気候変動の引き金となる
第13回 植物の「ノアの箱船」は用意されている
第12回 生物燃料はグリーンエネルギーか?死神か
第11回 次世代燃料のもたらす未来
第10回 水の乱用は地球を犠牲にする
第9回 2006年夏、中国の気象危機
第8回 非常な気象ー気候変動は我々に責任があるか?
第7回 気候変化による危険:自然は凶器
第6回 英国を襲う渇水の恐怖
第5回 地球観測衛星隊ーNASAのA列車ー
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第3回 地球温暖化で急速に広がる伝染病からの警告
第2回 気候からの冷酷な警告
第1回 気候変化の危険ー洪水ー
 
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