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第7回:気候変化による危険:自然は凶器

文:小出 兼久 2006.07.21 写真:AP通信

 

 





今日の地球上の気象変化は、全世界で実に、何百万という人々の生活を破壊し、何百万人という命を奪っている。壊滅的な豪雨による洪水や土砂崩れ、堤防の決壊はすべて、気象変化で生じた激しい降雨が引き金となって起きている。

 

2000年に起きたインドの洪水では、ブラマプートラ川とその支流の堤防が決壊した。そして、その年に再び、インド東部で大洪水が起きた。また、昨年には、過去に無いほどの、大型サイクロン(台風)がやはりインド東部のオリッサ州を襲い、30,000人が生命と財産を失っている。さらに、中国、ブラジル、ロシア、米国、日本でも人々を死亡させるほどの洪水が起きている。2001年初めには、モザンビークで死者48人、被災者数十万人という洪水が起こり、国が機能しなくなったこともある。一方で、アフリカ、エチオピア東部では、近年にないひどい渇水の被害も報告される。この6年の間に、地球のいたるところで大きな災害が生まれている。

 

ちょうど2000年という節目の時期と関連して、地球の温暖化が気候を不安定にし始めているという推測が様々な分野で起きたのもこの頃である。

 

当時の国連環境計画(United Nations Environment Programme)の報告書は、「気候変化が自然災害をニュースにする主要な原因であるという疑い」はわずかしかないと述べ、別の要因を示唆している。それは、世界の多くの地域、特に、洪水がよく発生する地域では、我々人間の定住を目的として道を拓くなどの開発が盛んに行われ、その結果、深刻な森林破壊が起きているということで、また、さらにもう一つ、エルニーニョ現象により、世界中に暑く乾燥した気象が周期的にもたらされることも、激しい雨や洪水に結びつくことがあると付け加えている。

 

このことから、インドで発生した洪水は、これらすべてを原因とした結果なのかもしれないと、国際赤十字社のような支援組織は受けとめている。

 

我々は、気象変化やその結果生じる気象災害に対して、以前にまして備えるため、国や研究機関のさらなる準備の必要を感じるが、大元の原因が地球の温暖化というたったひとつに帰着するわけでもないと考える。もっとも、研究者の中には、人間の活動が急激な気候変化を引き起こしているのか疑わしいと、話すものも未だに存在している。

 


気象変化、つまり温暖化が進行しているのかどうかについて、観測データによる温度グラフには矛盾が示されている。最近の20年間に地表面で得られたデータは、人工衛星と気球による調査で得られたデータと関連して温暖化を実証する。しかしその様子は、対流圏の中で見られるにすぎなく、その範囲が地球表面からわずか約8kmの大気層であることから、温暖化の正否が議論される理由の一つとなっている。

電算で気象変化を予測する気候モデルは、一般に、表面と同様、高層大気でも気温が上昇するはずだと予測するが、実際には、温室効果ガスの濃度が増加した表面のみで温暖化の傾向は見られることになる。

365日24時間、地球の気象を観測する装置は、データを送りつづけているが、これを分析する間にも、世界では、大きな被害がさらに広がり、加速している。

 


我々は災害を自然界の現象と捉えながら、一方では、開発や人口過密による人災と指摘し、議論する。どちらにせよ我々人間や他の生物に、気象災害が大きな影響を与えていることは確かだろう。

 


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過去と未来の気候と緑
第15回(最終回)地球温暖化 深刻に考える時期
第14回 2007年の警告 エルニーニョ現象は気候変動の引き金となる
第13回 植物の「ノアの箱船」は用意されている
第12回 生物燃料はグリーンエネルギーか?死神か
第11回 次世代燃料のもたらす未来
第10回 水の乱用は地球を犠牲にする
第9回 2006年夏、中国の気象危機
第8回 非常な気象ー気候変動は我々に責任があるか?
第7回 気候変化による危険:自然は凶器
第6回 英国を襲う渇水の恐怖
第5回 地球観測衛星隊ーNASAのA列車ー
第4回 気候変化のB面
第3回 地球温暖化で急速に広がる伝染病からの警告
第2回 気候からの冷酷な警告
第1回 気候変化の危険ー洪水ー
 
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