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文:小出 兼久 2006.02.02 写真:AP通信

一日のうちでめまぐるしく変化する気象
「誰でも天候について話す。しかし誰もそれに関して何もしない」とマーク・トウェインは冗談を言った。
我々は世界の気候を変化させている。その一方で地域気象に依存している。気象の影響は、農業に対して、あるいは水、森林、生物多様性、さらには経済、巨大で価値のある多くの生態系サービスと健康、保全にまでおよぶ。時にそれは国際社会の秩序ともなる。
明らかに大気が暖まっているということに対して科学的な疑問の余地はない。しかしそれほど人間にとって重大な問題であるのに、科学者間の論争は少ない。化石燃料の燃焼、森林破壊そして土壤を消耗する農作業には、少なくとも部分的に責任がある。さらに最近では、気候変動が予測よりも悪化しているという証拠も出てきて重大な局面を迎えている。
1999年は温暖と言われた1998年よりも温暖であった。(ともに観測史上5番目、6番目に温暖であった)観測記録が発生して以来、最も温暖な10年の7番目は1990年であった。これは年輪、氷芯などの分析により、過去1000年の中で最も温暖な10年を選んだものである。
2000年1月に米国科学アカデミーは、「過去20年にわたる地球の地表温度の観察では、温暖傾向は確かに現実にあり、20世紀の平均上昇率より現在の上昇率はかなり重大になっている」と結論を下していた。地球温度はこの100年の間に平均して約1℃上昇し、今後数10年でさらに急速に上昇すると予想されている。ほとんどの科学者は、大気中の二酸化炭素や他の温室効果ガスの増加により気候変動が引き起こされていると主張する。一方で、地球温暖化は地球自然界の気候循環の役目であると考える人もいる。いずれにせよ気候変動がこのまま続けば、我々を病気と空腹、水不足、洪水に直面させる恐れがある。
1998年11月2日(月)からアルゼンチンで開催された、第4回気候変動枠組条約締約国会議で、代表者の一人である、英国の気候学者の発表した記録が残されている。ハドリー・センター(英国気象庁)のフィル・ジョーンズ教授は次のように語った。
「最近の1000年間で毎年の最高気温を見ると、1998年は1106年の観測開始以来、英国で最も暑い年であった。我々は、様々な気候生物指標をもとに充実した作業を行っており、その結果は1998年の記録を裏付けるものであった。恐らく最近1000年間で最も温暖な年になると思う。」
この予測は最近の気候パターン動向をもとだされているが、ここでは、世界が温室効果ガスの縮小対策を何もとらずに排出しつづけるのを仮定しているのも批判している。そしてその報告書によれば、今日生きている人々の多くは、2041年〜2070年の間に居住する世界が一変し、恐ろしいことに直面するという。つまり、気候変動は多くの病気と飢餓を招き、苦しむ人々で世界は最悪の状況になるという。またこのことは、初期の予測には含まれない、新しい徴候を確認した結果でもあると強調している。「気候変動は、人間の健康ばかりか全ての生命に影響し、世界中が苦しむだろう。」と。

飢餓で苦しむ
今後50年の間、世界の森林は、主な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の吸収に役立たないと予測されている。その理由は、自らが二酸化炭素の主要発生源になるためである。最近の気候モデルによるシミュレーションと実際の観察の比較で、人間の温室効果ガス排出は過去半世紀にわたる地球温暖化を実質的に促進してきたことを示している。気候はモデル化してシミュレートでき、合理的に過去150年間の気候変動を取り出して分析できる。前述のハドリー・グループは、「これは、我々の前途予測に対して確信を与える」と言う。今生じていることの証拠があると言う。
太平洋において1997年〜1998年 より極端な天候状況が予測された。(気候攪乱の最も極端な例が記録されている)そのことは、将来に目を向ける必要性を訴え、実際の調査は前の予測者の一番の恐れを裏付けるものとなった。数世紀以上にわたる温室効果ガスの排出により、3°C温度が高くなっている。これは過去一万年間において最も極端な上昇割合である。
報告書の役目は、世界の森林の役目とそれに伴う処置を考えさせることにある。現在雨林は二酸化炭素の主要な発生源となりつつある。ブラジル北部では2050年までに熱帯林が消滅すると予測されている。雨林の枝枯れ病に加え、熱帯の草地は全体に砂漠または少なくとも温帯草地に転換されつづける。21世紀前半、植生は1年間に約2〜3GtC (1GtC=10億トンC:10億トン炭素)の割合でCO2を吸収しているが、人間のCO2排出は年間7GtCに達している。さらに、もし2050年以前に気候変動の影響で植生が枯れると、それ自体年間2GtCもの温室効果ガスを排出し、地球温暖化を加速させる。
博士は次のように言う「この(森林によって引き起こされる)増加分は、気候予測にまだ含まれていない。」これは「正フィードバック」を認識する外交プロセスである。我々が引き起こした地球温暖化が、それ自体原因となりさらに加速するプロセス、そして、全く予測不能の被害が生まれる。

浸水被害
食物などに関して、地域を限った予測も幾つかされている。例えば、約1億7000万人の人が極端な水不足に苦しむと予想される。収穫量が減り、飢餓の危険が増すのは、カナダとヨーロッパのような地域である。赤道付近ではそうならない。気候変動による飢餓の危険が人口の18%にまで及ぶとされるアフリカは、事態はさらに深刻である。
また、気候変動により世界の海水面のレベルは21mm上昇すると予測される。海洋上昇は、特に南と南東アジアの国々を浸水の危険にさらす。そしてこの予測が正確であるとするならば、マラリア感染も同様に増加する。これは、マラリアが現在風土病ではない地域でも新たに発生する可能性をほのめかしている。
気候変動予測の信頼度が増すにつれ、気候変動が自然界の循環にではなく、人間の行為によって引き起こされていることが明らかになり、それはそれまでの既成概念にゆさぶりをかけるものであった。気象観測の研究者による見解は、気候変動は現実で、我々がそれを引き起こすことに主要な役割を果たしていると、圧倒的一致をもって主張している。
科学者および多くの政治家たちは、ハドリー・センターからの証拠は、リアルでより緊急なことを示し、無視できないと認めている。ある科学者はこんなコメントを残していた。
多くの人は気候変動についてなんとなく心を悩ませているだろう。しかし、何を行うべきかという知識のある人は少ない。それでも、それを始めてあるいは何かを削減して、肯定的な効果がありえるならば、まだ何もしないでいられるだろうか?
あなたがすることにあなたは責任を負っている。ちがうだろうか?あなたの行為はすなわちあなたの気候となる、つまりそれがあなたの選択なのである。
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