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第9回:2006年夏、中国の気象危機

文:小出 兼久 2006.08.22 写真:AP通信

 


過去50年間の中でもっともひどい渇水に見舞われていると、新華社が報じた。


深刻な渇水

国営新華社通信によれば、中国は過去50年間でもっともひどい渇水に陥り、少なくとも1800万人に影響が出たと伝えている。渇水は、中国の西南部でひどく、最も深刻な被害がでているのは重慶で、四川省や遼寧省でも被害が出ているようだが、重慶では、雨が70日間以上降らず、河川の三分の二が完全に乾いてしまったと言う。山村に住む住民は、水を得るために2km以上の距離を歩かなければならない環境にあることもあり、そのため、少なくとも1人は熱射病で死んだと報じられている。そして新華社通信は、渇水が、12億4000万ドル以上の経済的損失をもたらしたと推測する数字をはじき出した。

四川省sichuan、重慶chongqing、遼寧省liaoningなど関連地図




気象危機

一方で、中国の民政部は、2006年の夏、過去6年間で最も厳しいトロピカルストーム(熱帯性豪雨)に直面したと15日現在で語っている。
8月15日(現在)までの情報によると、この災害で2,006人が死亡、318万人以上が罹災した。そして新たに発表された新華社による推定損失額は、200億ドル以上と修正されている。今年初頭には、何百人が死亡した台風被害がいくつかあり、冬の時期数ヶ月間には、大雪被害の発生した地域もあった。そして、この豪雨は追い討ちをかけるように、再び何百万もの人々に被害をもたらした。まさに自然災害のオンパレードであったわけだ。(しかもまだ終わったわけではない)

新華社電によれば、現在、遼寧省の四川において10割の人々、重慶の約8割は、今のところ十分な飲料水を確保していると語っている。しかし問題は飲料水だけでなく、凶作や家畜の死ももたらし、さらに、農地の巨大な範囲に影響を及ぼし始めている。四川の気象事務所は、トロピカルストームは今後もまだ続くだろうと予測している。

 

中国で多発するトロピカル・ストーム(*)であるが、日本を襲うかもしれない環境にある。熱帯低気圧は、発達してその中心付近の風速が17m/sに達すると「トロピカル・ストーム(熱帯性豪雨)」と呼ばれ、台風のように名前が付けられて観測されるようになる。ちなみに、更に風速が33m/s(64 kt、74mph)に達したものが、ハリケーン、サイクロン、台風と呼ばれる。(発生地域によって呼び名は異なるが同じ物)

亜熱帯化が始まっている日本。見慣れない生物だけでなく、体験したことのない気象現象の多発が、そこまで来ている。

 

 

中国トロピカルストーム:
無数の家が押し流され、都市と農地の広大な面積が破壊された




 

 

世界の気温(出展:気象庁)

 

月平均気温平年差分布図

 

月降水量平年比階級分布図

 

 

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過去と未来の気候と緑
第15回(最終回)地球温暖化 深刻に考える時期
第14回 2007年の警告 エルニーニョ現象は気候変動の引き金となる
第13回 植物の「ノアの箱船」は用意されている
第12回 生物燃料はグリーンエネルギーか?死神か
第11回 次世代燃料のもたらす未来
第10回 水の乱用は地球を犠牲にする
第9回 2006年夏、中国の気象危機
第8回 非常な気象ー気候変動は我々に責任があるか?
第7回 気候変化による危険:自然は凶器
第6回 英国を襲う渇水の恐怖
第5回 地球観測衛星隊ーNASAのA列車ー
第4回 気候変化のB面
第3回 地球温暖化で急速に広がる伝染病からの警告
第2回 気候からの冷酷な警告
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