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雨の庭からの報告
植物による環境制御-微気象や環境の緩和-
文 小出兼久 2008.04.11
植物には多くの役割があることを理解しよう。
植物は、我々人間の身の回りの世話を良くしてくれる。そう言うと疑問に思うかもしれないが、植物は大気をきれいにし、気候を緩和し、騒音を減少し、まぶしい光を抑制し、浸食を制御する。そして、さらに、多くの植物が景観を美しくしてくれ、また、食べるとおいしい。もちろん、すべての植物がすべてのことをするのではなく、植物にもそれぞれの役割分担がある。
植物の大気浄化
植物は酸素を生み出すだけでなく既存の大気もきれいにしてくれる。その浄化の方法は次の4つである。
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光合成によって「新しい」大気を生み出し、汚染された大気を薄めて、大気全体に対するきれいな大気の比率を増やす。
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植物は水分を放出(蒸散)するが、その水分は浮遊粒子状物質を捕らえ、いくつかの汚染物質のフィルターとして作用する。一般に、1本の成熟したリンゴの木は、1日当たり約1,100リットルの水を放出している。
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植物の中には、葉や茎に細かい毛の生えたものがある。この植物の毛は、大気中の浮遊粒子状物質を捕らえると、雨が降って地面に流されるまでそれを保持したままである。ある大都市において、高密度に植裁された場所の風下の側のほこりを集計したところ、同地域の風上のほこりの総計よりも、75パーセント少なくなったという。
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樹木は、重い塵粒子と汚染物質が移動しないように、大気の移動を十分に遅くしてくれている。また、特に芳香性の満開の花や葉を持つ植物は、ガスや悪臭を覆い隠してくれる。
植物の微気候・微環境調節
植物が微気候を緩和できる方法はいくつかある。
植物は、太陽光の強度を緩和したり、風や湿度の調整を行うことで、家の周辺の温度に重大な影響を及ぼすことができる。例えば、樹木の下で陰になった場所は、水分が増加し直達日射は減少する。この両方の効果により、より涼しくなる。加えて、樹木には、水分を放出するだけでなく、葉キャノピーは、水分を含んだ大気が移動するのを防ぐ傾向がある。この湿った空気は、乾燥した空気よりも温まりにくく、また、樹木周囲の温度を下げるのを助長する。さらに、樹木は太陽放射を遮蔽することで、何かを保護することもできる。葉、小枝、枝は、太陽放射の大部分を吸収し、わずかな分だけを通過させて、残りを反射する。
1)落葉樹による気候調整
我々は、冷暖房費用を減らすために、ランドスケープで落葉樹を使用する。夏の間の日射しを家から反射させたり家を日陰にするために落葉樹を植えれば、家を涼しくするのに役立つ。そしてそれが冬になって落葉すると、日射しが家に届くようになり、家を暖めることができるのである。
2)植栽による遮音
適切に植えた植栽によって、騒音を減少することもできる。樹木、低木、つる性植物や芝生は、騒音を吸収する。植物の体は音波を散らし、音の伝わる方向を変更し、音を小さくしてくれる。音の制御に最も効果的なのは繁茂している植物であるが、重要なのは植栽の幅である。例えば、高速道路の騒音を遮るのに効果的な植栽は、厚さ7〜10mである。しかし、一般の道路ならばもっと薄くても良く、厚い植栽が無理な場合には、さらさら音がする葉を持つような植物を植えて、いやな騒音を隠す。生垣の効果やソヨゴがこれにあたる。
3)植栽による閃光緩和
車のヘッドライトからの閃光も時に迷惑である。この閃光の制御は、光源と室内との間にバッファー植栽を設けることで達成することができる。植裁を家の近くに設ければ、より効果的である。また、舗装から反射する太陽光のような二次的閃光も、同様に、迷惑になる可能性があり、これも植物によって減らすことができる。この場合の植物は、桶やコンテナ容器に植えたものでもよく、例えば、テラスがまぶしいときに、視覚的に「遮断するか」または反射面を和らげることでまぶしさを軽減する。反射面を和らげるというのは、植物の方向へ反射した光は、見る人の眼に達する前に回折することで和らげられるということである。
4)植栽による浸食防止
浸食防止も植物の重要な役割である。
樹木、低木、つる性植物、地被植物および草は、雨滴が地面を穿つという影響を阻止あるいは散らし、その根が適所に土を保持することによって、浸食を防止してくれる。
植物の多くの役割が、我々の生活に関わっている。
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