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ランドスケープアーキテクチュアの考察
第1回:ランドスケープへのLEED導入 

以下 (c)Landscape Arcxhitecture より抜粋 2007.3.08

 

 

 


Leadership in Energy and Environmental Design*
*エネルギー資源と環境設計に対する指針

 

 


LEEDという方法

LEEDという評価制度がランドスケープアーキテクトの注目を集めている。これは、全米グリーンビルディング評議会(USGBC)が容認したプログラムで、新規の商業計画において建物と敷地の環境性能を評価する自発的な格付制度である。

商業バージョンのLEEDは2000年5月から公式に利用できるようになった。そもそもLEEDはこのとき始まっている。そしてそれは、持続可能な建築戦略についての合衆国基準を提供したことで、またたく間に国民の称賛を受けて広く普及した。多くのランドスケープアーキテクトはLEEDを、持続性に関してコミュニケーションを取ろうとするときに、分野を越えた共通地盤を与えてくれる有益な制度と見なしている。しかしながら、LEED制度の中でも敷地に適用される部分について ― 特に、いかにランドスケープを生態的に機能させるか、また、持続可能な敷地設計をどのように奨励するのか ― については、検討の余地があると声をそろえる。

 

LEEDは、環境に責任を負う建物の評価を、維持可能な敷地、水効率、エネルギー資源と大気、材料と資源、屋内環境品質の5つの部門で行うもので、満点は69点である。LEEDに認証されるには最低でも26点が必要である。33点で銀に認証され、39点で金、52点以上ではプラチナという最も高い格付を得ることができる。

LEEDに則った建築計画は、建築計画の潮流となって急速に増えており、連邦、州、地方自治体あるいはグリーン建築を実践する開発業者らによる多数の委託(評価依頼)が増えている。この点は大変興味深い。陸海軍や空軍は、彼らの新規の施設にLEEDを採用し、一般の調達局は、2002年以降に計画されたすべてのプロジェクトで少なくとも銀以上の格付を獲得することを義務づけている。LEEDを採用する都市について言えば、シアトル、ポートランド、オースチンのグリーンプログラムは、公共事業でも制度を使っている。特にシアトルは、米国西海岸でのエネルギー危機と増大する燃料費を踏まえて、すべての商業ビル認可にLEED認証を命ずることに対する実行可能性を研究している。

 

 

ランドスケープアーキテクトがLEED制度を理解すべき必要性は急激に増している。例えばヴァルディス・ツスマニス(Carol R. Johnson Associates)は、過去6ヶ月間に事務所に来た仕事のうち、LEEDへの精通あるいは実績を必要とするRFP(提案依頼書:Requests for Proposals)とRFQ(見積依頼書:Request for Quote)が多数に上ることを知ったと言う。

 


LEEDは建築と敷地の両方を扱っており、プロジェクトは原則的に建築を含めて設計される。敷地だけのプロジェクトでは、公的に通用するLEEDの認証を得ることはできない。ランドスケープアーキテクトは、建築家と共に作業する際に ― その建築家は建築家たちのチーム・リーダーなのであるが ― 単に表面的にLEED制度を使っている。しかしより多くのランドスケープアーキテクトたちは、自身の仕事に対する基準として、もしくは、敷地の持続可能性についてクライアントを啓蒙する際の意思伝達手段としてLEEDを使っている。なぜならば、LEEDはあっという間に全国的に容認された制度になったため、維持可能な建物であるかどうかについてはLEEDが正当性を判断すると感じていると言う。ルシア・アテネ(シアトルのグリーンビルディングプログラムとLEED商業版2.0に対する敷地と水の技術委員会の主任研究者)は、LEEDが、クライアントとデザインチームメンバーとの対話手段として最も有益であると付け加える。「LEEDによってそのプロジェクト実現のために自らがすべき仕事のゴールが明らかになり、また、自分たちがいつゴールを達成したのかがわかる。」と言う。

 


LEED制度を開発し合意に達するまでには、ワシントンD.C.にあるUSGBを基にした約600のメンバー団体をすべて巻き込んだ。USGBCのメンバーは、建築会社、土木会社、施工会社、開発業者、地方自治体などが占めているが、その大部分は建築会社である。現在メンバーにランドスケープ関連の会社はほとんどいない。LEEDの作成は、産業専門家によって構成された委員会が制度を発達させ(骨子を作り)、その後全メンバーがそれを調査し意見を加え、最後に評議会が承認するという手順で行われた。以来このプロセスは3年ごとに繰り返され、その都度制度を改良し、新しいバージョンとして発表している。バージョン1.0では12のパイロットプロジェクトが使われており、現在はバージョン2.0が使われているが、2003年の発表に向けてバージョン3.0も練られている。LEEDの商業バージョンに加えて、商業施設インテリアや住宅バージョン、また、運営と維持管理に対するLEED制度も現在開発中である。

 


キム・ソーヴィグ(Sustainable Landscape Construction『持続可能なランドスケープ施工』の共同執筆者であり、『ランドスケープ・アーキテクチュア』誌を含む多くの環境系雑誌への寄稿家)は、LEEDバージョン2.0作成に貢献した敷地と水の専門家の1人である。このバージョン2.0.を彼は次のように説明している。LEED制度は、主として建築家によって建物のために作られたものである。バージョン1.0の敷地に関する制度は完全に弱く、ランドスケープアーキテクトからの意見はほとんどインプットされずに作っていた。さらに「我々が委員会を開催した時には、バージョン1.0の建築の部分は一片の不明瞭さもなく単位を得た。しかし、湿地には建てられないという類の敷地に対する必要条件はなかった。」と言っている。

 


LEED制度の利用法

LEED制度は建築設計に対してはほぼ対応しているが、ランドスケープアーキテクトは、5つの部門のうちの3つの部門での認証に対して、多くの単位を得るのに役に立てるはずである。また、ピーター・テンプルトン(LEEDプログラム・マネージャ)によれば、持続可能な敷地という部門は、取得可能な全点数のうちの22%を占めているし、ランドスケープアーキテクトはさらに水効率と材料&資源という2つの部門でも18%の点数を獲得するチャンスがあるらしい。ジョン・アモデオ・CRJA(CAROL R JOHNSON ASSOCIATES INC)は、もしあるプロジェクトが敷地の部門で全ての単位を取得できたならば、認証に向けて必要な点数の3/4が獲得できた勘定になると指摘している。

 

テンプルトンは、LEEDはほとんどの単位の獲得を前提としつつも、グリーンビルディング産業の範囲内で技術革新を促進しようとしていると言う。点数の獲得は、その実践がゴールを達成するのに必要な方向へと導くのでなく、結果評価に基づくと言う。多くの単位がEPAやASHRAE(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineersの略語。全米冷暖房空調技術者協会)あるいは他の組織が設けた現行の基準と合致することを求めている。これら各組織の基準は、LEED単位の意図を文書化した総合的なテキスト『LEED参照ガイドReference Guide』の中に、必要な提起、設計戦略、材料や資源、計算方法および事例研究と共に書かれている。プロジェクトチームは、単位を得るために採用する方法を述べた文書を作成し提出しなければならない。そしてUSGBCの専門家がその文書を調査し、単位が達せられたかどうか決定する。HOKのマーク・ヴォグルは、サイエンティフィックエンタープライズの繁殖センター(LEEDバージョン1.0を実験した12の公認のパイロットプロジェクトの1つ)のランドスケープ・アーキテクチュアの責任者だった。彼は、「我々はたとえそれぞれの目的が正確な目的でないとしても、それぞれの単位が意図するものに忠実であった。もし敷地条件や他の要因で各々の単位の詳細に見合わなかったとしても、ゴールを達成しているならば、そして良い文書であるならば、単位で点数を得られる可能性がある。」と言う。

ドナ・マックルンタイア (LEEDプログラム・マネージャ)は、LEEDには、チームが疑問を呈したり、彼らの単位についての解釈をUSGBCが持つ専門家委員会に確認できるような、一連の単位に解釈のプロセスがあると言っている。専門家は、そうした疑問に規定をし、その結果を、同様の疑問を抱く他者のために、ウェブサイトで公開している。LEED申請中のプロジェクトは、2回自由に臨時の面接を申し込むことができ、後に追加費用を支払わなければならない。

 


ほとんどのLEED利用者は、グリーンビルディングが広く普及した今でさえ、プロジェクトにLEEDを適用すると時間も費用も余計にかかることを認めている。テンプルトンが得たコメントのひとつに、単位申請書をつくるのに膨大な時間がかかるというものがある。彼は、持続性が認められLEED認証されるというゴールは、最初から委員会コンサルタントチーム全員が出席することで、出来るだけ早く処理されるべきという。もし必要な文書が施工図面と統合されるならば、申請書を作るという問題は、新しい文書を作るよりもむしろLEEDに提出するために、そこから適した設計図書や記述を引用して作ればいいことになる。
LEED制度の利用者によれば、余分に時間がかかるのは、そのほとんどが初めてそれを使うのでそれに慣れるための時間だという。何が期待されているのかが分かれば、次はずっと時間が節約できると言う。

 

USGBCは通常、コンサルタントとクライアントがLEED制度とグリーンビルディングの原則を学べるよう、全米各都市でトレーニングワークショップを行っている。ちなみに、最近シアトルで開催されたワークショップには、100人を超える参加者があったが、それ以上の人々が満席であったために入口で引き返したと言う。ワークショップの参加者は、2時間の試験(彼らがやっているプロジェクトで1点を稼ぐこと)に合格すれば「LEED認定者」になるチャンスがある。
WRTのデビット・ガール(カリフォルニア大学サンタバーバラ校ブレンスクールのLEEDパイロットプロジェクトのランドスケープアーキテクト)は、自分の会社は、2001年の夏までに6つの営業所それぞれにLEED 認定者がいることを予定しているという。USGBCは、潜在的なクライアントの要求に答えるために、ウェブサイト上に、認定された専門家と会社をリスト化して公表しようとしている。さらに、多くのクライアントがRFPとRFQの中で、LEED制度について詳しいランドスケープアーキテクトを求めている。認定者となることは、ランドスケープアーキテクトがLEEDの経験を誇示できるひとつの方法である。

 

LEEDに関する時間と費用の問題の他に発生しがちな問題は、持続可能な敷地と建物の設備に関連する初期費用が高い(多くは時間の経過と共に金額に見合うものになるのだが)ということである。カーティン・ショルツバース (HOKプランニンググループの設計ディレクターでありLEEDバージョン2.0の専門家)は、開発事業者が、緑化屋根や降雨管理はコストが高く投資還元がゆっくりであるため、この部門でのLEED単位の取得を断念し、代わりに、室内の空気品質などの職場環境を向上させる単位を稼ぐようになるのではないかと恐れる。どちらが労働力生産性を直接増加させて利益をもたらすかは、言うまでもない。「鍵となるのは、開発事業者に訴えかけるコスト効率の良い方法と持続可能な戦術を組み合わせることである」と彼女は説明する。「例えばレインガーデン(雨の庭)という小さな滞留域を建物の近くに作って降雨流出を処理すれば、大規模な貯水池の必要はなくなり、より小さく、より安価に降雨処理を行うことができる。」と。

 

スミス・グループのグレッグ・メラ (アナポリス近郊のフィリップ・メリル環境センター<プラチナ格付けされた唯一のプロジェクト>のプロジェクト・アーキテクト)は、ちょっと違う経験をしていた。「LEED制度を利用すればするほど、プロジェクトは緑になった。我々のチームとクライアントは、目標を達成するためにそして設計のために制度を利用した。そしてプロジェクトが予算内で収まったとき、最終的に技術プロジェクトを評価した。我々は、緑の要素を保持し、何を保全すべきか決定する価値工学のプロセスの間、LEEDを使った。」
ショルツバースと、自分同様にLEED制度の持続可能な敷地部門を利用する他の利用者との間に共通する問題は、生態的に機能するランドスケープを企画・構築するには、ランドスケープアーキテクトに依頼するだけでは十分とは言えないということである。「それは、敷地状況、敷地内での建物立地、堆積物制御のための降水管理など多くを取り扱う。そしてそれは、機能的ランドスケープという全体的な視点から見ると、ランドスケープだけの問題とは言えない。」例えば彼女は、敷地汚染を減らし、水を保持し、斜面を安定させ、用地が生態的に機能することを助けるような根系を持った一定の自生種を利用することに、LEEDの単位を与えることを提案している。現在の制度では、単に耐乾性のある植物を求めているにすぎないからだ。(彼女は、LEED制度はアメリカのグリーンビルディング制度を定義する優れた試みのひとつであると即座に指摘する。しかし同時に、次のバージョンでは敷地部門の改良が行われることを望んでいる。)
キャロル・フランクリン(ASLA)も彼女に同意するひとりである。彼女は、「ただ規則どおりに行って何点かは稼ぎ、何点かは稼げずというだけで、大地が如何に個々の敷地に作用しているかについて全体論的に考えていない危険性がある」と指摘し、また「持続可能なデザインは全体の資源の管理を考えるものだ。だから、ある場合には、敷地境界線を越えた全分水界の流域を意味するときもある。」と話す。
フランクリンもショルツバースも、ランドスケープの生態的機能面に十分に取り組むためには、全分水界と生態系を扱うべきで、時に敷地境界線を越えた研究と干渉が必要だという意見に賛同している。この種の問題はまた、地域行政や地方行政のレベルで取り組まれるべきものであり、ショルツバースは、ASLA、APAおよびULIが地域に適合する戦略を開発し、地域条例への編纂を見越して地方自治体にその戦略の情報を提供すべきだとも提案している。

 

敷地と水技術委員会は、バージョン2.0を開発中に、これらの機能的ランドスケープ問題を提起したが、定量化するのは難しいようだ。「与えられた自然のシステムを個々の敷地で扱っているが、私たちはLEEDの単位について、ある者が物理的に建設したあるいは自分たちの敷地内でのみそうしているとして、申し込まざるを得なかった。」とソーヴィグは言う。「我々はこの問題を処理した具体的な方法に対して敷地の点数を与えた。正味の表面流出を増加させないという要求こそが敷地で取られるべき行動であり、何にせよ分水界全体にとって良いことをするという点に広く同意が得られるのだ。」
ある点で委員会は、敷地の生態環境を分析する環境的評価声明を作るべくチーム召集について検討したが、それを必要条件とするには、真実の分析が行われたと証明することがあまりに難しいため、やめた。アテネは付け加える「それは、十分に具体的か固有の問題だけを扱う制度を発展させる中での挑戦であり、またそうすることで、合理的に文書化することができる。」

 

LEED制度が持つ不可避の欠点は、地域間で状況に差がでることであり、建築よりもランドスケープにおける問題がより明らかになっている。「それは国家の制度に地域問題を考慮するという挑戦である。」と、アシネは説明する。「水保全対策を取ったとして、フェニックスにいる誰かが南東部にいる誰かと同じ点数を与えられるとしたら全然公平でない。観念的に考えたら、より多くの問題を抱えた地域ほど多くの点数を得ることになってしまう。」
カリフォルニア州バークレーのウォルフ・メイソンアソシエイツのゲーリーメイソン, ASLA,とLEEDの住宅制度を計画する開発委員会のメンバーのひとりは、LEEDの制度がこの問題を2つの方法で処理すると言う。ひとつは、単位の中には選択肢が2つあるものがあり、利用者がプロジェクトや地域に合った形で方法を遂行することが可能になっていることで、もうひとつは、新しい単位では、制度によって言及されない項目や個々の単位が設定した基準をしのぐことも、考慮に入れられていることである。さらに、ポートランドやシアトルのグリーンビルディングプログラムは、彼らの地域問題にLEEDを適用しているが、ある単位では、国家基準であるLEEDを越えて進めているプロジェクトもある。

 

LEED利用者たちの多くは、LEED制度は、不適切な敷地に建築するプロジェクトについては厳しさが十分でないと感じている。「私が制度に対して持っている懸念のひとつは、郊外に準ずる地域で増加する自動車利用によって広がるスプロール現象に、拍車をかけるような未開発敷地を開発することができるということで、さらには、グリーンプロジェクト(安心・安全、まっとうなプロジェクト)であるかのように、LEEDの認証が未だに名誉を持ってされてしまうということである。」とヴォルグは述べる。ヴォルグは、未開発敷地にグリーンビルディングを作るのと、土壌汚染地域に通常のビルを作るのと、どちらがより環境的に好ましいのか?と疑問を呈する。
LEED利用者の中には、未開発地域と土壌汚染地域、あるいは充填開発とに、異なる基準を採用すべきだと提案する人もいる。現在は、あるプロジェクトが充填開発もしくは土壌汚染地域開発であることで受け取れる報酬は、それぞれにひとつの単位である。これでは、簡単に安く開発できる準郊外の土地の開発をやめて、こうした土地を買おうとする開発事業者を誘発するような十分な刺激材料とならない。
元々、敷地と水技術委員会は、LEED制度の必要条件として適切な敷地選択を提案しており、それゆえ、生態的に脆弱な土地や火災が発生しやすい土地、最良農地などは除外していた。この必要条件は評議会の反対にあったため、不適切な敷地を回避するために、1単位に格下げして組み込まれている。

 

LEED敷地制度は発展させるべきだろうか?アテネ、ソ-ヴィッグ、スコルツバースの誰もが、敷地プランニング、ランドスケープやインフラストラクチャープロジェクト、関連する項目、などに言及する新しいLEED制度を構想している。シアトル市の現在のプロジェクトのいくつかは、ほとんどがランドスケープかインフラストラクシャーのプログラムで、建物はほぼ含まれていない。アテネは言う。「一度、敷地、水、材料の部門の基準をとり、それらをランドスケープのみのプロジェクトに適用することの重要性を計る協議があった。」この意見は、こうした項目が直接影響するバージョン3.0中のLEED商業部門をオーバーホールするチャンスとなるが、敷地のみのプロジェクトにおいては、既存の基準では問題のすべてを十分にカバーしないことから、追求されなかった。
ソ-ヴィッグは、ビルディング基準で現在のLEED商業バージョンを用いて、2段の証明書で認定される複合ビルディング開発を許可するLEEDの開発制度を望んでいる。それは、敷地選択(不適切な敷地で開発されたならば認定が得られない)、インターモダル、輸送、建物外壁とともに、標準的な生態的敷地計画の問題に言及するもので、ソーヴィッグは、グランドキャニオンで計画されているキャニオンフォレストプロジェクトは彼の提案する制度を使うと良い種類の開発ではないかと指摘する。USGBCは、現在の商業制度を使って、複合ビルディング開発の助けとなるような適切なガイドを開発中である。しかし商業バージョン2.0は、ソーヴィッグが挙げた問題のすべてをカバーするわけではない。
スコルツバースは、徹底してランドスケープの生態機能について言及した敷地だけの制度 ― 分野間の協力を破壊し敷地問題を建物問題と切り離すおそれがあるが ― の構想をしている。ただ、通常、プロジェクトの種類と敷地は千差万別のため、LEED敷地制度を開発することはかなり難題であると誰もが認めている。

 

USGBCの重役としてアテネは、評議会はLEEDが非常に表層的に広がることに注意する必要があると警告する。多くの制度は現在開発中であり、独立したツールをLEEDが持てば持つほどそれを管理するのが複雑になる。LEED制度は、12のパイロットプロジェクトから60の登録されたものとなり、非常に短い時間により多くが作業中となる。評議会は明らかに急速な成長に直面しており、アテネは、彼らが責任をもって成長することを確実にするよう願っている。

 

とはいえ、何故USGBCにも、そしてLEED制度の開発にも、ランドスケープアーキテクトがほとんど含まれていないのだろうか?多くのランドスケープアーキテクトたちは、自分は一般的な仕事の中で当然のこととして持続可能なランドスケープを設計しているので、自分たちを導いてもらうためのLEEDはいらないと思っているようだ。またそこには、造った景観はすべて緑であるという、僭越な心得違いもある。不幸なことだが、LEEDにおけるランドスケープアーキテクトという存在の欠如は、存在するはずのランドスケープ問題全般について徹底してかみあわない制度を創り出してしまうことになってしまっている。

 

ランドスケープアーキテクトは、LEED3.0の開発の中で、環境保護のための措置を政治団体にロビー活動することや、グリーンビルディング活動において全般に活発な役割を演じることなど、ますます先頭に立って役目を担う機会がでてきている。結局、とジョーンズアンドジョーンズのポール・オルセンは指摘する。「ひとりの建築家が環境に譲歩するためにすべきことを見つけるのは難しい。それは、建物の影響を少なくする以上のことである。ランドスケープアーキテクトならば自らの仕事によって、生態系を癒し、水系を修復し、植物群落を復元するという独自の機会を持っているのである。」

 


フィリップ・メリル環境センターに設けられた駐車スペース間の生物滞留システムは、
降水流出を減らし面源汚染を処理することで、LEEDの点数を獲得する。
図出典:『ランドスケープアーキテクチャー』

出典:U.S. グリーンビルディング評議会

 

以上は米国ランドスケープ界でのLEED活用についての一例である。これは2001年の話なので現在ではまた変化している。別の機会に紹介したいと思う。今でもLEEDにおいて賛否両論が存在する中である。しかしこの後、ランドスケープ業界はLEEDの敷地部門を補うものとして『低影響開発』のコンセプトを明確にすることで、LEEDの普及や制度の充実に確実に寄与している。LEEDは今やアメリカの開発になくてはならないものであり、低影響開発もそうである。私は昨年の2月にシアトルのUSGB会議に参加したが、そこではこの2つについて誰もが当然の要素として語っていたことが、印象深い。さらに興味深いのは、金、銀、プラチナの格付である。私は、日本では3つの格付をしたところで皆がプラチナを目指してしまい、結局プラチナ認証された事例しか存在しない(もちろん悪いことではないが)とか、あるいは、本末転倒で皆がプラチナを取れるような簡単な単位基準の認証制度を作ってしまいそうな懸念を持つが、アメリカでそうした意図の質問をして見たところ、「銀がとれて良かった」とか「これは金」とかその辺は実に現実的で、その基本にあったのは「何もないより、こうした格付が取れたこと自体が、プロジェクトの環境貢献を示し、他のプロジェクトからの差別化あるいは優越性を示している」と胸をはる姿勢であった。

認証される物件が増えるにつれて、こうした意識がどう変わるのか、これは大変興味深いことである。この辺を我々も大いに参考にして制度を導入したいものである。

 

日本においては、LEEDのような制度はまだまだ確立されていないが、将来に向けて様々な議論や方向性が見出されることを期待している。しかしそのためには、多くの機関や団体で、より多くの調査と研究を重ね、ランドスケープの市場性を確かめつつ、仕組みをいかに上手く取り入れるか真剣に議論検討すべきである。        (小出 兼久)

 




LEED単位の要約

以下は、ランドスケープアーキテクトがLEED認証に直接関わる単位である。


持続可能な敷地

必要条件(前提条件):
工事進捗状況報告書あるいは地域基準のどちらかより厳格なほうがEPAの降水管理に適合するような、堆積物と浸食防止プランの実行が必須。


単位1:敷地選択 
最良農地、100年氾濫原、絶滅危惧種生息地、湿地域、旧原野などの不適切な敷地を開発しなければ1点を得ることができる。


単位2:都市再開発
田園地域(未開発地域)の開発をせずに、既存のインフラストラクチャーを使って都市あるいは高密度地域の敷地の開発をするならば1点を得ることができる。


単位3:ブラウンフィールド再開発
開発敷地がブラウンフィールド(*)に位置し、EPAのガイドラインに一致するレメデーション(浄化)を行うならば1点を得ることができる。
(*)ブラウンフィールド(Brownfield)とは、汚染された土地を示す造語。


単位4:代替輸送
公共輸送に近接する建物に対して、駐輪場の提供、代替燃料供給ステーションの設置、最小限にした駐車場、カープール優先の駐車場の提供があれば、4点まで得ることができる。


単位5:敷地障害物を減らす 以下にあてはまれば2点まで得ることができる
A)未開発地域で建物と道路以外の攪乱物となるものの設置を制限するか、既開発地域で少なくとも50%の自生種か適応種を植えたオープンスペースを残す。
B)敷地で地元のゾーニングのやり方でのオープンスペース需要をしのぐほどの開発を減らす。


単位6:降水管理 以下にあてはまれば2点まで得ることができる
A)現存の降水流出を増やさないか、既存の不透性舗装が50%以上である時に25%まで減らす。
B)EPAガイドライン合った処理設備を設置して面源汚染を減らす

 

単位7:ヒートアイランドを抑制するランドスケープとエクステリア・デザイン
以下にあてはまれば2点まで得ることができる

A)現場で、屋根でない不浸透面の30%に高アルベドの材料を用いるか、陰を作る。あるいは駐車場の半分を地下に配置するかオープングリッド舗装システムにする。
B)エネジースター*材(高反射に順応する低放射の屋根材)を用いたり、屋根面積の少なくとも50%を緑化屋根にする。
*Energy Starエナジースターとは、日本の経済産業省とアメリカの環境保護庁(EPA)によって進められている仕様あるいは制度で、一定の省エネルギー基準に適合した商品に付けられる。

 

単位8:光害(過剰照明公害)の縮小

低い野外照明の基準を設け、すべての直接照明は敷地のみを照らすようしている場合に1点を得ることができる。

 


水効率

単位1:水効率のよいランドスケープ 2点まで得ることができる

A)効率の良い灌水システムを使うか、雨を溜めて使うか、現地で水を再利用し、水道水の使用を50%以上減らす。
B)さらに、潅水に使う水道粋の使用を、ひとたび植物が活着したら潅水しないことでもう50%引き下げる。

 

単位2:革新的な廃水技術

下水輸送を構築するのに使う水道水の使用を最低でも50%減らすか、第三の基準で敷地の廃水を100%処理する。

 

ランドスケープアーキテクトは、次の単位の達成に貢献する。

 

材料と資源

単位1:{ランドスケープアーキテクトには適用できない}

単位2:建設廃棄物管理 下記にあてはまれば2点まで得ることができる

A)解体で発生する廃棄物のうち少なくとも50%を再利用もしくは廃物利用する。
B)さらにA)に追加して25%を再利用もしくは廃物利用する。

 

単位3:資源の再生利用 

建築材料の5%を廃物利用指定しているのなら1点、10%指定しているのならもう1点得ることができる。

単位4:再生材含有量
A)建設材料の少なくとも25%がポストコンシューマー材*かプレコンシューマー材**の場合1点を得る。
B)建設材料の少なくとも50%が再生材***である場合、さらに1点追加される。

*ポストコンシューマー材:製品として使用された後に廃棄された材料または製品。
             
都市ゴミ溶融スラグ
**プレコンシューマー材:製造工程の廃棄ルートから発生する端材や不良品をバージン材と混合し
             再生したもの
***再生材:ポストコンシューマー材またはプレコンシューマー材またはその2つの混合物

           
単位5:地方/地域材料 
少なくとも材料の20%が敷地から500マイル以内のところで製造されていれば1点を得ることができる。
そのうちの少なくとも50%が500マイル以内で収穫や蒸留、再生されているならば、さらに1点追加される。

単位6:短期再生可能材料
少なくとも材料の5%が短期に再生可能な材料を指定している場合、1点を得ることができる。

単位7:認証木材
木質が使われているところでそのうちの少なくとも50%以上が認証木材*であれば1点を得ることができる。
*認証木材:環境に配慮した適正な森林管理によって生産された木材であると認証されている木材のこと.

 

注: LEEDバージョン2.0ドキュメントから引用。

 

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第1回:
ランドスケープへのLEED導入
 
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