なぜならばリッド（低影響開発）は、水源を降水流出の悪影響から保護し、環境も浄化する。水源や環境が汚染されると、都市の水域を脅かし、水面下の沈殿物は、我々の健康を脅かし、悪いこときわまりない。

 

水循環の模式図

右の図は、開発が敷地内の水の道をどのように変化させるかを表している。自然の状況つまり開発前の降雨は、地面に浸透するか蒸発するか植物によって利用されている。そして、非常にわずかしか表面流出はしていない。（＜1％）

　

しかし、開発後は、植物の減少と不浸透地表の増加が、表面流出を劇的に増加させる。（開発後の表面流出は未開発地の20〜30倍にもあたる。）そして、地中への浸透も少ないため、河川や湿地の水量も結果として減少させる。これには2つの悪影響がある。雨季には降雨流出が増加し、魚や野生生物の生息環境に損害を与えたり、洪水をもたらすことがある。そして、乾季には時に渇水し、魚に被害を与えたり、定期潅水用の水が不足することになる。

　

例えば、シアトル市の条例は、河川が高水位にならないように、開発者に大きな池*（large pond）を設置するよう求めている。しかし池は、河川や湿地、地下帯水層への水の貯留を促すわけではない。汚染物質をバイオレテンションや在来の土壤ほど効率よく除去してくれない。また、せっかくの価値ある土地の場所を占拠し、メンテナンスも難しく、美観にもかける。加えて、池から放出される雨水は、鮭（などの北方の魚）にとって暖かすぎる。

*池ならば何でもよいと考えるのは誤りである。三方をコンクリートで固めた貯水池は、流出の時間を遅らせたり抑制はするが、レテンション・浄化効果は期待できない。仮に、貯留された雨水が汚染されているならば、そのまま雨水管へと合流してしまう。それを防止したいならさらに専門設備を備える必要があある。浄化処理機能も併せ持つ池で、拘留池と呼ばれるものは大抵はバイオ技術（言い換えればローテク）によって設計されている。

 

革新的な雨水管理リッド

リッドは、私たちの水源を降雨流出による悪影響から守ってくれる。経済成長を維持しつつ、次世代のための水源を確保してくれる。人口増加や経済成長をしながら、水源の確保、水質の維持、生活の質を向上させるという目的のために、リッドの需要は今後ますます増えるであろう。

　

端的に言って、リッドは、従来の開発手法を改良する新しい手法である。それは、我々はどうやって土地を開発するか。そして、流出をどう管理するかということである。開発と降雨管理に対する新しいアプローチである。

　

しかし実はそれは、自然が長い間実践していることの模倣にすぎない。成熟した森林では、雨が降ってもわずかしか流出しない。多くは大地の中にしみ込み、汚染物質は土壌の自浄作用で取り除かれる。ここでは、降水は樹木など植物の成長を助ける恵みとなり、さらには、河川や湿地、地下水となる。あるいは、幾分かは蒸発し、再び雨になるという大きな水循環を育んでいる。

　

リッドの代表的な機能には次のようなものがある

　

• 既存植生の移植または保護

• 道路、駐車場、屋根のような不浸透地表の縮小

• バイオレメディエーション

• 透水性舗装のようなミニスケール降水制御装置の利用

• 降水が自然の排水パターンを描けるように、住宅などの敷地内の建物を密集させる
  

　

リッドは降水を管理するだけではなく、地域社会により多くの緑をもたらし、美観を提供してくれる。そして、その計画の施工と維持には、それほどの費用はかからない。

 

 

　

　

資料） (c)Puget Sound Action Team, office of the govemor , State of wathingoton.