JXDA

低影響開発のキー戦略

 

リッドの実施にあたり、開発の中で実現するべき事柄を書くと次の4点があげられる。

 

 1)植生と土壌を保全・再生

 2)不浸透地表を最小にする敷地設計

 3)降雨地付近で雨水管理

 4)維持管理及び教育プログラム

 

リッドの最大の目的は雨水管理にあるが、それは1)や2)と密接に結びついており、また、4)については、少なくとも維持管理プログラムを念頭におきながら、計画を進めることが必要である。そして、設計者はあらゆる機会がいつでも教育のために提供できることを忘れずに、設計に望む必要がある。

 


1)植生と土壌を保全・再生する

 

・未開発地の在来林や植生のエリアはできるだけ残す。開発地では在来の植生を回復させるよう植物を選ぶ。植物は降水を捕らえ、浸透させ、蒸散することで周囲を冷却する。

 

・排水の良い在来の土壤ならば保存する。工事によって圧密した土壤の健康を回復させるには、堆肥を利用する。健全な土壤は、降水を浸透し、蓄え、潅水をあまり必要としない健全な草木を育てるため、土壌の重要性を認識する。

 

・敷地の既存地形を利用して、降雨の表面流出を遅らせ、降雨が浸透し地下水として蓄えられるように考えて、敷地を整備する。


・自然排水機能と地勢を残し、敷地設計の中へ組込む。

 

2)不浸透地表を最小にする敷地設計する

 

次のような設計をするために、敷地設計者、プランナー、エンジニア、ランドスケープアーキテクト、建築家は、共に働き、共通の価値あるいはコンセンサスを持っていること。


・屋根、道路、駐車場などの不浸透地表の面積を最小にする。降雨が表面流出して河川へと直接流れ込んだり、他の表流水と一緒にならないよう、不浸透地表をできるだけ少なくする。建物は従来のアスファルト屋根に代えて、緑化屋根を作る。舗装をする場合でも、可能ならば不浸透性舗装に代えて、浸透性舗装にする。

 

・家、その他の構造物、道路、駐車場は、雨水管理上重要な場所やよく浸透する土壌からは遠ざけて設置する。

 

3)降雨地付近で降水を管理する

・大きな貯水池を一つ作るというのではなく、ミニスケールで、低湿地、透水性舗装、緑化屋根などを組み合わせた統合的雨水管理を行う。ここでいうミニスケールという意味は、降雨処理装置をひとつにまとめてそれに大面積を割くのではなく、小規模でいいから、降雨の近くで(送水管で遠方に運ぶということをせずに本当に降ったままの場所で)降雨処理をするということである。
・降雨流出を遅らせるように、敷地内に滞留する雨水の単位時間量を増加させるように、ランドスケープをする。リッドは、森林地に特有な水のゆっくりした動きを模倣しようとするものである。
・ 低湿地、透水性舗装、緑化屋根・・など複合的に装置を作ることが、降水管理システムの信頼度を増やし、失敗の可能性を減らす。
・雨水管理機能は、魅力的で環境を保全するランドスケープを作るために、ひとつの敷地設計の中に統合する。それは近隣を美化する庭であり、降水管理の装置である、というように。
・従来の雨水管理に使用していた、雨水管と下水管、池などへの依存度を減らす。

 

4)維持管理と教育を提供する

・明確で実施可能なガイドラインを持った長期的な保守計画を開発する。
・リッド装置の適切な維持管理ができるように、住宅またはビル所有者、造園家を育成する。
・設計者は、啓発的設計、教育の解答となるような設計を心がける。

 

資料) (c)Puget Sound Action Team, office of the govemor , State of wathingoton.