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低影響開発による雨水管理は、高度に発達し成熟したコミュニティで、降雨流出をろ過する管理実践として最も優れた方法である。自然の浸透・貯留プロセスの模倣は、水を媒介として土壤や草木と微生物を利用した降水処理ーバイオレテンションーをランドスケープに組み入れることを意味する。さらに、2つのレメディエーション効果、土壌浄化、水質浄化も期待できる。我々は先人達の時代から、知らないうちに多かれ少なかれ、こうした微生物や生物を使った浄化処理を行ってきた。これはもともと自然は浄化作用があると言われることにもつながっている。リッドは大地や生物の力を上手く利用して、環境を浄化する。それがリッドのバイオ処理機能と呼ばれるものである。ランドスケープにおけるリッド実践の前に、まずは、こうしたバイオ処理について学ぼう。

関連記事:2006.10/11刊環境新聞『LIDと2つのレメディエーション』小出兼久(PDF)

 

次のように、まず2つに分けられる。

 

 

 

 

 

 

バイオレメディエーション BioRemediation

バイオレメディエーションは、「微生物の力によって汚染環境を浄化する方法」と定義される。微生物がもつ有害物質を分解する力を利用した環境修復技術である。この技術には2つの方法がある。1つは地場に生息する微生物に窒素やリンなどの栄養塩を与えて活性化させ、有害物を浄化するものである。もう1つは分解能力の高い微生物製剤を散布する方法である。
バイオレメディエーションは、1989年にアラスカ沖で発生した石油タンカー座礁事故の時に、海岸へ漂着した油の処理に利用されて効果を上げてから注目されるようになり、日本でも、97年のナホトカ号重油流出事故で効果を発揮した。特に、トリクロロエチレンに対しては最も有効といわれる。しかし、生態系への悪影響を懸念する声もあり、安全性の確認と社会のコンセンサスを得ることが、重要な課題といえる。

 

 

バイオレンテンション BIOREtention

バイオレテンションとは、生物滞留池とも呼ばれる。リッドの主役とも言える装置である。それは、蒸発散や土壤によって表面流出した雨水を吸収しろ過するために植栽された地域のことである。

 

このデザインは、自然の水循環プロセスを模倣し利用している。

 

 

 

ファイトレメディエーション PhytoRemediation

ファイトレメディエーションとは、植物の環境汚染物質蓄積・分解能力を利用したレメディエーション法である。ファイト=Phytoとは、植物を意味する。
環境浄化の作業手順としては、まず調査の上、汚染規模・物質の特定をし、その結果に基づいて植物の品種の選定と栽培面積、使用数量の決定を行う。簡単に言えば、汚染規模に合わせて植物を植え込み、汚染除去完了まで継続して栽培することである。
植物は、根から水分や養分を吸収する際に、土壌や地下水に含まれる有害物質を一緒に吸い上げ取り除くが、植物体だけでなく、その根圏を形成する根粒菌や微生物(分解微生物:フェノール資化性菌などの土壌菌)との共同作業により、浄化を行っている。浄化の仕組みは、植物や微生物の働きによって汚染物質が分解される場合と、汚染物質を植物の体内に吸収・濃縮する場合があり、吸収・濃縮される物質については、その植物を刈り取ることで汚染物質の除去ができる。重金属の場合は、汚染を取り除くだけでなく、濃縮した重金属を抽出・回収することが可能であり、再生利用が可能である。