樹木の選択

公開日 2005年8月23日 最終更新日 2016年5月2日

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植物の選択は樹木から始まる。なぜなら、一番大きくて他に与える影響が一番大きくなる可能性を秘めているからである。敷地にどのくらいの大きさの木を植えることができるのか、何本植えられるのか、大きい物から先に決めていかなければ、後悔することになる。樹木を植えればその下が陰地となり、下草に植えられる植物も変わってくる。また、太陽が動くにつれて移動する木の陰や、木陰を吹き抜ける涼風など、樹木を1本植えるだけで、敷地の環境はがらりと変わてしまう。さらに言えば、敷地や家の印象までも、たった1本で変えてしまうほどである。そのため家や地域の顔として、樹木はデザイン的にも大変重要である。

 

 

選択の基準

 

低木も含めた樹木類は、ランドスケープを構成する主要な要素であり、言ってみれば長期投資である。投資には慎重になるべきで、ましてすぐに結果が出ないため、よけいに注意を払わなければならない。樹木を選ぶ際には、植えようとする場所の日当たりや風という露出環境灌水の有無美的価値と樹木を植えることによって変わる周辺環境について考える必要がある。

 

 

樹木を植えようとする場所は・・・・

 

□ 日当たり      良い・悪い

□ 風通し       良い・悪い

□ 灌水が       必要・不要

□ 土壌の水はけ    良い・悪い

□ 見た目はどうか

□ 樹木の役割は何か(緑陰・遮蔽・風を招くなど)
-周辺環境に何か影響を与えるか--

 

 

重粘土の土壌

 

地表から水がなかなか中に浸透しないときは重粘土の土壌が疑われるが、こうした土壌では、表面に少しでも傾斜があれば、地表の水はそちらに流れていってしまう。また、南や西向きの場所の表土が重粘土の場合は乾燥するのが早く、地表に縮みやひび割れが見られ、常習的な水やりが必要となる。極端な粘土質土壌では酸素濃度が低く、植物の生育に向いていない。乾燥にかなり耐える植物は、水の少ない環境には耐えるが、酸素の少ない土壌に耐える植物はない。従って、重粘土の土壌は改良が必要で、粘土質の土壌も程度によっては、改良が必要である。植栽に先だって、堆肥などの有機土壌改良材を加えながら土壌をよく整えるほど、植物がよく育つ。

 

 

もし下層土の排水の改良が実現不可能な重粘土の場合、排水のよいローム質の客土でバーム(マウンド)を作り、そこに樹木や低木を植えるのが最も良い植え方である。このとき、バームは少なくとも60センチの高さが必要である。また、この手法は、排水のよい土壌を好む樹木にも有効である。

 

 

北側の土地では、陰に耐える植物を選ぶ。北側では、日向に向く種類よりも選択肢が少なくなる。植物の多くは、日当たりのよい露出面で最も生長するからである。日陰に耐える植物は、日向の植物よりも多くの水を必要とするが、ウッドチップのような有機マルチを使うことで、多少相殺できる。

 

 

ゼリスケープ的樹木選択のポイント

 

ゼリスケープTMデザインにおける樹木の選択を考えてみよう。ゼリスケープTMは、地域にあった植物を選択できる絶好の機会である。しかしながら、ゼリスケープTMでなくとも、ガーデニングに関するどのような書籍も、また、古今東西の多くの専門家たちも、口をそろえて「地域や環境にあった植物を選択すべき」だと言っている。これらの他の方法とゼリスケープと、なにがちがうのか。一言で言うならば、「地域や環境にあった植物を選択」すると、その植物はゼリスケープTMデザインの中におさまることによって、省資源、水保全を実現してくれるのだ。

 

  • 周囲の緑陰となる樹木を選ぶ
  • 水をあまり必要としない種類を選ぶ
  • 根のしっかりはるものを選ぶ
  • 比較的小さな苗木を植える

 

 

樹木への水やりは必要

 

樹木にも水やりが必要な時期がある。ひとつは移植して活着するまでの間、もうひとつは、活着後でも干ばつや降雨不足のときである。この原則は樹木に限らずすべての植物に当てはまるものである。

たとえ、ゼリスケープTMに適した樹木、つまり、補完的な水やりをあまり必要としない樹木であっても、水やりが全く要らないわけではない。活着するまでのおよそ2年くらい他の植物と同じように水やりが必要である。しかし、活着したら徐々に灌漑の頻度を減らす。水やりの基本は、どのような植物でも根域じゅうに水が行き渡るようにたっぷりと与えることである。少量で回数の多い「浅い」灌水をすると、植物は浅い根を促進してしまう。これはゼリスケープTMの「水の有効活用」という目的にそわない。浅い根をもつ植物は、乾燥に弱く倒れやすいなどの欠点を持つからである。