なんのために雨水タンクを設置するのか


雨水タンク  ©アメリカ河川協会

 

雨が降ると、ガソリンや粉じんその他の物質で汚れた道路や駐車場の表面を流れ出る雨水が、河川や下水道処理システム、飲料水処理システムなどへ直接注がれる。これは、人間だけでなく魚や野生生物に対しても健康被害をもたらす可能性がある。

 

米国にアメリカンリバー(米国河川協会)という団体があるが、この団体は、雨水による環境への悪影響を減らすために、地域や州を発端として国全体規模で、さまざまな雨水管理施策を実践している。それらは、雨の庭TMやグリーンルーフ、雨水タンクのようなローカライズされた実践から、包括的な低影響開発という大規模な取り組みまで、幅広い。

 

雨水樽あるいは雨水タンクと称されるものは、米国に限らず日本でも以前から活用がなされてきた。これは、建物の縦樋に付属して設置されるもので、そのようにして雨水を集めていかに再利用すべきか(草花への水やりに使おう)というのが、日本において「なぜ雨水タンクを設置するのか」という実践の主眼であった。しかし、実は雨水タンクの効用は、その「利用」という目的の手前にある。すなわち、雨水タンクを設置することの最大の長所は、「雨水がきたない街の上(地表面)を流れ出て、下水道へと流入する前に集めてしまう」という集水の点にある。集めることが最大の利点なのだ。

 

ちょうど雨の庭TMというのが、このような流出水を集めて、地下水の涵養を促進する魅力的な方法のひとつであるが、雨水タンクも雨の庭TMも、そのアプローチは自然と協調して作用するものであり、流出水をひとつの場所や容器に集めて、(ろ過し)、浸透させることで、洪水の危険性を減らし、河川や小川の水汚染を最小限にする。そしてもちろん雨水の再利用もできる。こうした効用により、多額の費用やエネルギー消費を節約してくれるものである。

 

 

オン・ザ・グラウンド(地面)雨水プログラムの開発

 
雨水タンクに関連した米国における雨水管理プログラムについて簡単に紹介しよう。

 

ここ数年米国河川協会は、五大湖の周辺と中部大西洋地域における局所的な雨水管理実践を促進するために、いくつかのプロジェクトやプログラムに携わってきた。

 

ウィスコンシン州では、家庭からの雨水の表面流出を減らすために、ミルウォーキーのジョンソンズパークネイバーフッドと、また、私設車道からの雨水の表面流出を減らすためにミルウォーキー河川保護協会と、どちらも協力関係を築き、作業をしている。両者とも米国河川協会の良きパートナーとなっている。協会は彼らとともに、雨の庭TMの設計や施工を行い、それまで下水道へ直結していた建物の縦樋の雨水の流れを切断し、そうした雨水を貯めるための雨水タンクの設置に向けて取り組んだ。

 

ミシガン州では、ウエストミシガンレインガーデンズと提携し、この団体のクリエイターであるパトリシア・ペネルと共に、雨の庭TMに関するより良い教育とアウトリーチの教材を開発している。さらに、パトリシアとウエスミシガンレインガーデンがあちこちの地域コミュニティの地上に実現するプロジェクトの作業を支持している。

 

オハイオ州では現在、ルーカス郡に位置するトレド市の雨の庭TMと雨水タンクの普及を図ることを目的とした団体レインガーデンイニシアチブに協力している。米国河川協会はオハイオ州での様々なイベントやプレゼンテーション、ワークショップなどを通じて、雨の庭TMと雨水タンクがもたらす恩恵についてこれまでに50,000人以上の人々を教育してきた。また、住宅所有者用の雨の庭TM設置マニュアルを開発し、協会のウェブサイト上で利用できるようになっている。

 

モーミー川流域では2年の歳月をかけて、500個の雨水タンクを配布するという目標を掲げたが、2008年から2009年にかけて開催された4つの雨水タンク配布イベントで、ほぼこの目標を完了した。 そのハイライトには、トレド市の市長、カールトン・フィンクバイナーが自家用に雨水タンクを購入したことも含まれており、米国河川協会は、彼のオフィスのロビーにある雨水タンクを彼が披露するよう促した。こうしたイベントによって、米国河川協会は雨水タンクの需要を新たに生み出したが、これらの雨水タンクを維持しようとするその後の所有者の努力は、地元の多くのナーサリーに影響を与えている。

 

ペンシルベニア州では、雨水タンクのイベントが、フィラデルフィア近郊のデラウェア郡ダービークリーク地区で催された。そのプロジェクトは、雨水管理ソリューションによって、コミュニティのメンバーと指導者を結び付けるために民間資金を活用するという革新的なアプローチを取るものであった。米国河川協会が、1年間、コミュニティ・アクション団体の企画部や保全地区、および市民ベースで結成された流域グループのような現地パートナーと緊密に協力して働いた。具体的には、そのプロジェクトによって、3都市の自治体の指導に雨水管理の原則を導入し、地域住民に対して雨水タンクの設置を指導した。その結果、多くの誇り高き雨水タンクの所有者たちや多数の設置へ拡大することができる熟練したボランティア指導力を生み出し、地方自治体の要件とダービークリークの利益に仕える現場での解決策を備えた雨水管理プログラムが創始され、清潔な水需要に利するためのフルスケールの雨水管理実践を採用する態勢を整えたコミュニティの出現へと結びついた。

 

 

雨水タンク豆知識

 

  •  雨水タンクがどのくらい有用なものか、簡単にまとめる。
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  •  雨水タンクの使用は、乾燥した夏季の数ヶ月間、自治体の水道水システムへのストレスを軽減する。
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  •  例えば、わずか25mm降雨でも、100平方メートルの屋根から流出する雨水は、2600リットル以上になる。雨水タンクの使用は、本来流出するはずであったこうした水の一部を保全する優れた方法だと言える。
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  •  平均的な屋根から流出する5~6mmの雨水は、容易に雨水タンクを一杯にする。例えばワンシーズンに5回嵐が来れば、1000リットル以上の水を無料で手に入れられることになる。