小出兼久が選ぶランドスケープアーキテクトが読むべき本 (4)

公開日 2012年5月23日 最終更新日 2016年5月2日

Sustainable Landscape Construction A Guide to Green Building Outdoors, Second Edition
持続可能なランドスケープ施工 グリーンビルディングアウトドアガイド(第2版)
J. William Thompson, Kim Sorvig

 

21世紀の始まりと共に出版された本書は、新しい主題に新しいアプローチを採用している。すなわち、持続可能性という原理に則ったアウトドア環境を作り出すという最近の新しい主題に取り組んでいるのだ。この本は、その非常に高い影響力を及ぼすことで、アメリカのみならず世界各国で生じている動きに拍車をかけることになるだろう。第2版は、現場での最新の科学分析にそって、このランドスケープ的革命に重要な開発を含むように徹頭徹尾更新されている。

 

また、設計、建築、環境的に脆弱なランドスケープに対する多くのアイデアを提案している。「グリーン」なランドスケープに関心のある誰にとっても参考となる良い本である。

 

本書では新しい編集がされており、実践へ環境論理を取り入れるという著者の望みを反映する原則について組まれている。各章はまたがって構成されている。持続可能性という原則は、明確に表現され特別な事例によって発展されている。 世界各地から100以上に及ぶプロジェクト事例が、時には図も用いて掲載されている。新章には、火事、洪水、乾燥、嵐、気候変動などによって引き起こされる危機に対するランドスケープアーキテクチャーの対処方法についての詳細が記されている。持続可能なランドスケープ施工は、ランドスケープ施工のテキストを元にさらなる補完をした本であり、プロにも学生にもかかわりのある市民にも、手にとって満足してもらえる一冊である。

 

 

The Green Building Revolution
グリーンビルディング革命
Jerry Yudelson

 

「グリーンビルディング革命」が現在進行中である。本書は、その業界の渦中にいる著者によって書かれたクロニクルでありマニフェストである。ここでは読者にグリーンビルディングの基本とこの運動を進めるプロジェクトや人物について紹介している。インタビューと事例研究では、従来の予算の中で設計すること、ビルを建てること、高性能な運用をすること、環境的に承認されたビルにすることなどが簡潔に報告されており、読者に対して示されている。何十年もの間、グリービルディング運動は注目されるまで静かに展開されていた。人間を中心とした環境的に脆弱な開発の原則は、行政や消費における建築家、エンジニア、ビルダー、開発業者などの専門家の非常に大きな集団が注目するまでになった。

 

グリーンビルディングは私たちに、従来の建物と比べて水とエネルギーの消費は少ないながらも、健全な室内の環境をどうしたらもてるのかその可能性を示している。合衆国政府と18の州、ほぼ50の都市がすでに「グリーン」な標準に合致する新しい公共の建物を求めている。ユーデルソンによればこれは始まったばかりである。本書『グリーンビルディング革命』は、今日の商業ビル、学校、公共ビル、健康関連施設、住宅、敷地管理、近隣設計などで行われている多くの「革命」を描写している。ユーデルソンの文章は簡潔で読みやすいスタイルで書かれており、持続可能性について幅広く概略し、グリーンビルディング革命とこの流行に対してビジネス事例を提供した。50以上の写真、図表があり、時節的な情報もあり、主要な動きが掲載されている。

 

 

New and Continuing Applications: Proceedings of the Second National Low Impact Development Conference, March 12-14, 2007, Wilmington, North Carolina
低影響開発の新規及び継続した適用:第2回全国低影響開発会議
2007年3月12日から14日

 

低影響開発(Low Impact development : LID)は自然の水源を保全し、降雨の流出を管理し水質を保護する環境に優しい方法として始まった。今日LIDは、生態系全体を護る施工と工学の方法を包含している。本書は特に、新しいあるいは継続している低影響開発の実践にスポットをあてているが、研究や近年の開発、コミュニティへの適用とコミュニティの受容などの主題も含んでいる。LIDの海岸部での適用もまた強調されている。本書は、現在の技術問題の良い概要も与えており、同時に、研究が必要な分野にもスポットを当てている。取り上げた話題には次のようなものがある:地域法令、規則、政策、LIDの設計と評価、手法、バイオレテンション、湿地、緑化屋根、透水性舗装などにおけるLIDの最適管理実践および事例。

 

本書は元々、2007年3月12日から14日にノースカロライナ州ウィルミントンで開催された第2回全国低影響開発会議で紹介された数枚の資料からなっている。このとき配布された資料には、環境工学や低影響開発、ランドスケープアーキテクト、土壌科学者、設計家、水プログラム管理者などを対象にしたものが含まれており、この資料は生徒ならびに研究者にとって有益なものであった。

 

 

Green Building Trends
グリーンビルディングの趨勢

Jerry Yudelson

 

アメリカでグリーンビルディングの専門家として知られているジェリー・ユーデルソンは、この本を書くために、ヨーロッパにおけるけん引役を勤める建築家やエンジニアに沢山のインタビューを行い、多くの典型的なプロジェクトを視察した。ユーデルソンは豊富なイラストと写真によって、ヨーロッパにある幾つかの先駆的な現代のグリーンビルディングの一例として、以下のビルをとりあげている。

 

フランクフルトの新しいルフトハンザ航空の本社、ハノーバー州にあるNorddeutsche銀行、ロンドン大学の新しい学校、ビューフォートコートというゼロエミッションビル、ジュネーブにあるメルクセローノの本社およびゼロネットエネルギーであるシュトゥットガルトの全ガラスの家。

 

ユーデルソンは、持続可能性を求める過程を分かりやすく伝えている。現在の規定やビジネス気象、そして未来には何がもたらされるのかを描写している。彼はまた、西欧の新しい技術、システム、既定的アプローチなどのうち、北アメリカでも利用できるもの(例えば建物に太陽発電、日射熱、冷却効果などの技術を統合すること)を紹介することにかけても、第一人者である。自然通風のよいダイナミックな外見、二酸化炭素排出ゼロビルディングを造るための政府の厳格なタイムテーブルや魔法瓶のような純エネルギーゼロ住宅、より大きな建物における気候制御と水機能の組み合わせなどの革新的な方法を提供する。

 

本書は、この急速に成長する分野に関心を抱く者すべてにとって、ヨーロッパは重要な情報源だと述べている。グリーンビルディングによる革命とは、エネルギー効率、建築と設計の環境的な認識という世界的な動きである。ヨーロッパはグリーンビルディング技術の最前線であり、本書はすなわち、ヨーロッパはこの先駆的な技術のアイデアと適用に対するかけがえのない概観を提供しているという。

 

 

A Safe and Sustainable World
安全で持続可能な世界
Nancy Jack Todd

 

最近60年の間に、世界はアースディの必要に目覚めた。小さな先駆的なグループは、New Alchemy Instituteと呼ばれる非営利研究教育機関を設立した。彼らの目的は、より安全で持続可能な世界ができることを示すことであった。その数年後、科学者や農業従事者、熱心なアマチュアや賛同者とともに、彼らは食べ物や避難所、エネルギーなどの形において、基本的に人間が必要とするものを造る新しい方法を発見し始めた。本書はその軌跡を綴った話である。

 

生きた世界の変遷と回復力は、この研究所のモデルとなるほど彼らの研究のインスピレーションの素であった。彼らの労力を結集し、今や、科学ともに我々の地球におけるより調和した人間の役割のための、スピリチュアルなゲストも見いだした。こうした作業の結果、生態的なデザイン原則の出現を通して、科学のメインストリームに分け入った。ナンシー・ジャックテッドは、非常に高尚な理想から精一杯の現実をとおして、実際にはどのように食物を育て、日光や風のエネルギーの装置を育て、グリーンビルディングを設計するかを学ぶことに直面している。彼女はまた我々に、Buckminster Fuller からMargaret Mead.まで、専門家を紹介する。研究所の初期の仕事は、2つのバイオシェルター(それは大きな温室のようなものでアークと呼ばれる独立した構造体であり次のような多くの研究をする人に居場所を提供している)設計と施工を完了させることであった。

 

研究所の設計と投資を通して成功裏に供給されるものには、基本的に土地持続可能性が達成されている。ここでは、新しい方法の自然システムが、Ecomachines and Pond and Lake Restorersと呼ばれる生きた技術に基づく、汚染水の再貯蔵などに適用されている。本書は、安全で持続可能な世界とは何かを身をもって示した。それはまた、人間の発明の才と4000万人の失敗、ナチュラルな世界ではより健康的なものを買い求め地元の希望に応えようとすることなどが記されている。

 

 

Apollo’s Fire Igniting America’s Clean Energy Economy
アポロの火―アメリカのエネルギー経済浄化に火がついた
Jay Inslee, Bracken Hendricks

 

1961年にケネディ大統領は、アメリカのアポロ計画に点火したが、それは、空間の調査における革命を誘発した。今日、新しいアポロエネルギー計画は エネルギー製品の革新とそれゆえに我々の地球を救うことを平行して可能とさせる。世界で最もパワフルなロケットを飛ばした国家がアメリカであり、そのもっとも先見的なコンピューター、そしてそのもっとも洗練された生活サポートシステムはすでに、世界で最もパワフルな太陽エネルギーシステムを生み出し、そのもっとも先見的な風エネルギータービン、そのもっとも洗練されたハイブリットカーなどを生み出している。これは、第二のアメリカの革命といって間違いないだろう。カリフォルニアには、鏡と液体金属を使って他の誰かが地球上でできるよりも、太陽光からより効率的に電気を集められると信じているドリーマーたちもいる。また、誰がオレゴンの海岸が、アイダホで焼けたトーストへ変わるようなエネルギーを提供してくれていると知っているだろうか。そこは、新工夫を打ち立てた革新者なのである。

 

本書は、思慮深く楽天的で事実に基づく本である。そして、この本よりも前に、経済成長と温室効果ガスの削減をこうした具体的な事例を持って結びつけたものはいなかった。だれも過去には、エネルギー革命の前線に自分たちがいることを本当に認めようとしなかった。副著者は、連邦議会の議員のひとりで、新アポロエネルギーアクションの第一次的なスポンサーである。そして、他のアポロ同盟の設立者でもあり、地球温暖化を止め、増加するエネルギー依存を抑止するための道を作るために、クリーンなエネルギー未来のために、彼らの経験や専門知識、情熱も加えられた。

 

 

Resilient Cities
立ち直りの早い都市
Peter Newman

 

世界の半分の住民が都市に住んでいる。次の20年では、都市の居住者数は約50億人にも膨らむと予測されている。彼らの非効率な輸送システムと設計に失敗した建物を持って、多くの都市は、特にアメリカの場合、莫大な量の石油を消費し温室効果ガスを高濃度で排出している。しかし、我々の星では、数世紀にわたって都市の成長を牽引してきた石油燃料が急速に枯渇し始め、また、我々は温室効果ガスの排出を抑制することもできないようである。世界の都市は、必然的な崩壊に向かって進んでいるのだろうか?

 

本書の著者は、都市エリアの運命としての忘却が必然であるとは信じていない。代わりに彼らは、懸命な計画と預言者的なリーダーシップが都市に迫る危機から都市を救うと信じて、世界中の都市の既存のイニシアティブを見つめている。

 

彼らは、恐れを伴う反応よりもむしろ希望を選んだ。最初に彼らは本書で、問題に直面する我々が今日自分たちの石油使用と気候変動に与えている影響によって置かれている現状を描写している。彼らは、都市について4つの可能な結果を表している。すなわち、「崩壊」「田園化」「分断」「立ち直り」である。彼らのシナリオに対する反応の中で、彼らはいかに新しい「持続可能な都市生活」が今日の「炭素消費都市生活」にとってかわったかを明瞭にした。

 

彼らは、新しい輸送システムと建物が、私たちの現在の低効率システムに取って代わるべく上手く開発されうるだろうと述べた。結論として10の戦略的段階を提供し、どのような都市でもより大きく持続可能性と再生へ向けて歩みを始められると述べている。これは、「青空」理論でいっぱいの本ではなく(青空はその推薦としての結果には歓迎なものの)、むしろ、実践的なアイデアを見つめたり、既に今日の都市でためされていたりする、率直な物言いや今現在都市と協同で作業している何かについて述べている。都市は今議論しなければ悪化の一途をたどる問題を抱えていると言う。しかし、この問題は解決することができると示唆している。そして、解決のときは始まったばかりなのだと。

 

 

Cities as Sustainable Ecosystems
持続可能な生態システムとしての都市
Peter Newman

 

現代の都市の居住者は、彼らの日々の生活が環境に与える影響から引き離されている。彼らの飲み水、食べ物、消費するエネルギーなどはすべて目に見えない。時には他の大陸からもたらされたり、廃棄物が市の境界を越えて廃棄されたりする。

 

本書は、どのように市とその居住者が局所的生物環境を再統合し始め、いかに都市自身が精神として自然の組成する原則を持って計画されうるのかを示している。

 

持続可能な戦略を採用する際に生存システムからのきっかけをとる。つまり、ニューマンとジェニングスは、人間と人間以外の生態系の間にある相互作用とともに、エネルギー、材料、情報などのフローを探求することによって、都市のデザインを再評価する。

 

著者は、世界の総ての場所からの事例を説明することで、自然のパターンと都市が持続可能型に移行をするために真似ることのできるプロセスを探求する。都市の中には、雨水の集水や緑化屋根、再生燃料の生産などのシンプルな戦略をとっているところもある。他には、絶滅の危惧にある種のための生物多様性のある公園を作ったり、自分たちの食物庫に役立てようとコミュニティガーデンを作ったり、徒歩と自転車を奨励するために歩行者にやさしい空間を作ったところもある。

 

本書に描かれている都市の開発に対するパワフルなモデルのひとつは、場所の感覚を促進することに対する経済的なセキュリティを成し遂げるために、プロセスの視覚化から都市の生態系の様相を描写するものである。

 

 

Urban Sprawl and Public Health
都市のスプロール現象と公共衛生
Howard Frumkin

 

ハワード・フルムキン、ローレンス・フランク、リチャード・ジャクソンは 全米の公衆衛生と都市計画の専門家であり、先駆者である彼らは、本書において興味深い質問を投げかける。「我々の生きている物理的な環境は我々の健康にどのような影響を与えるのか?」

 

何十年もの間、我々のコミュニティにおいて生長と開発は、自動車依存型のスプロール的な低密度であった。著者は、スプロール現象の人間の健康や福利に与える直接あるいは間接的な影響を調査し、設計、土地利用、輸送に対する代替的な手法を通して、公共衛生、人間の健康を改善するための保護について論じている。本書は、都市計画や建築、輸送、コミュニティ、設計、公衆衛生などのインターフェースに対する包括的な見方を提供する。そして、スプロール型の開発では、健康とは逆の結果を招くという証拠を概括している。さらに、公衆衛生や健康を促進し保護する複雑な開発政策の概略をも示している。公衆衛生、都市計画、輸送交通機関、建築、環境などのテーマを扱う総ての人に読んでもらいたい。

 

 

Saving the Ranch
牧場を救え
Anthony Anella

 

土地の価値がスカイロケットのように急降下で下落するにつれて、アメリカの西部に生きる牧場主は、生活の管理をしてくれる投資先を探すようになった。その解決策は、本書において、未来の開発を制限することによって敷地の保全価値を永久的に護る自発的な法的な同意のある地役権の保全という形で実現されている。

 

 

Measuring Landscapes
ランドスケープを計測する
Andre Botequilha Leitao

 

この実践的なハンドブックは、ランドスケープを研究する科学者たちとどの保全方法が最も適しているのかを決定する決定者と、生物生息地を生み出すことを決定するプランナーや保全推進を行う人々との間に存在するギャップに対して、橋渡しをする役目を担っている。今までは、我々の将来のランドスケープがどうなり、どう決定されるのかについて、意思決定の舞台に科学が及ぼす影響は微々たるものであった。

 

しかしながら現在では科学のランドスケープへの影響は著しい。著者は、ランドスケープの構造や形状、時代による移り変わりを図るために、特別なツールとコンセプトを用意している。こうした計測は、プランナーや保全推奨者が未来のためによりよく土地利用をしようとするのに役立つものである。

 

 

worldwaterThe World’s Water The Biennial Report on Freshwater Resources
世界の水 淡水資源に関する二年に一度の報告書
Peter Gleick

 

2年に1度出される本書は、淡水資源とその利用に関連する重大な問題に関するタイムリーな調査報告書である。各章では、もっとも重要な世界規模のトレンドについて認識して説明し、水に関連するさまざまなトピックについて最良の利用可能なデータを提供している。

本書は、水問題で世界を牽引する先駆者の著書であり、最も包括的で最新の情報源である。内容は、淡水資源の分析とそれに関連する政治、経済、科学、技術的な問題を取り扱っている。このため、政府民間問わず水資源の専門家や研究者、学生その他の水問題に関心のある人にとって重要な参考資料となるだろう。