環境保護や緑空間の増加を目的とした21世紀の取り組みは、ルーフガーデンの利用を、特に都市部において拡大してきた。が、この流れは実のところ目新しい展開ではない。ルーフガーデン(屋上庭園)は、最近流行っている現象のように見えるかもしれないが、実はこの建築装置は4000年以上前から存在している。
ルーフガーデンに関連してよく使われる言葉が、グリーンルーフあるいは緑の屋根、植栽屋根、生きている屋根(リビングルーフ)などである。それぞれしかし、そもそもこのルーフガーデンとはいったい何なのか?
ルーフガーデンとは、既存の人工構造物の上や下、あるいは既存の構造物の勾配の頂上に設けられた緑を含む空間のことである。
ルーフガーデンの流行は最近の現象ではない、と結論付けるのには理由がある。それは、ルーフガーデンが提供する恩恵の多さである。この建物の外に設けられた領域は、雨水の管理を容易にし、その建物のアメニティスペースを広げ、都市のヒートアイランド効果を低減し、屋上の寿命を延長し、必要な建物のメンテナンスを減らしてくれるものである。このような理由で以前から利用されているのだ。
雨水管理の向上
雨水の管理は、米国では多くの地域にとって大きな課題となっている。米国環境保護庁(EPA)によると、全米には、合流式下水道システムを運営している地域が772あるという。この合流式下水道システムというのは、流出した雨水と家庭からの下水、および産業排水を同じ管に集めるものである。
現代ではほとんどの地域で、雨水や汚水の収集あるいは迂回のために、それぞれ別々の配管システムを用いているが(分流式下水道)、歴史ある米国の都市の多くは、古くに合流式下水道システムで建設された。そのため、このような地域で大雨や雪が降ると、下水道に流入する水は、地元の排水処理施設の能力を超えることがある。そうすると、これらのシステムはオーバーフローが発生し、溢れた余分な汚水が、近くの水路や河川などの他の水域に直接未処理のまま排出される。そのため、この雨水管理方法は明らかに理想的なものではなく、周囲の環境や地域社会に悪影響を与える可能性があった。
ルーフガーデンはこのような雨水管理が直面する課題を緩和するのに役立つのである。上述の合流式下水道システムでは、雨水は「管理」されず、単に下水道システムを流れ、場合によってはシステム容量を超えてオーバーフローとなっている。しかしルーフガーデンは、雨水をその場に留めて保持することによって、このオーバーフローを防ぎ、雨水を浸透させて流出を減らすのに役立つのである。その培地(土壌)が深くなればなるほど、より多くの雨水の滞留が可能になる。研究では、4インチの土厚を持った広範なセダムのグリーンルーフが温暖な気候の下で年間降水量の60〜75%を捕獲できることが示されている。
別の例を挙げよう。ペンシルバニア州ガードナーにあるライスフルーツ社にとって、ルーフガーデンは新しい施設の建設のための解決策となった。同社は1913年から、米国全土に新鮮な果物を配給しており、米国の東半分で最大のリンゴ梱包施設をもつ会社としては、その高い基準で定評のある会社である。
同社のオーナーは、ペンシルバニア州ガードナーの創業の地で事業を拡大し、新しい冷蔵施設を建設することに決めたとき、建物は環境に配慮して控えめにしたいと考えた。建物が周辺の田園風景に溶け込むようにしたかったのだが、この意図にルーフガーデンは、完璧な解決策として映った。
新しく建設する施設の美観は重要であったが、その新しい建物にルーフガーデンを設けることは、ライス社にとって美観への貢献以外にもまた別の大きな利点があった。ペンシルバニア州の建築基準では、雨水の表面流出を管理して洪水を防止するためには、ほとんどの商業用建物の建設地に、池を設置しなければならなかったのだが、この新築工事では、池を設置できるほどの空間が敷地内にないという問題に直面していた。ところが、ルーフガーデンシステムを設置することにより、ライス社は、追加的な池を使わずに、雨水管理のためのペンシルバニアの建築基準要件を満たすことができたのである。
ルーフガーデンによる雨水管理は官民問わずに行うことのできるグリーンインフラ実践のひとつである。
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