快適な暮らしを作るために植物の役割と気候について考える

 

 

今、私たちが考えなければならないことは沢山ある。中でも、「快適な暮らし」と「環境保全」の二つをどうバランスをとっていくのかということは、とても大きな問題ではないだろうか。

 

 

便利で快適な暮らしがしたいとは誰もが望むことだろう。その結果、環境を汚染したり、自然を破壊をしたりしてしまっては、望むものが得られなくなり、逆に、私たちの健康そのものを害する結果につながることもある。

 

 

私たちはかつてないほどの災害を経験し岐路に立たされている。これまでのように、快適性を追求し続けるのか。それとも安全や安心を優先し、さらには自然保全を追求するのか。どちらの道も一長一短であり、どちらにも利益も不具合もあるということを理解しどのあたりに妥協点を見出すのか、それを探り続けることが早急に求められている。

 

 

省エネや節電、果ては浄化作用に至るまで、これから植物の良さが見直されることは多々あるのではないかと思う。しかしながら植物を育てるということには、維持管理も伴うものである。無味乾燥な人工物を立てたり置いたりするのとは違って、私たちも時間を費やしてことに当たらなければならないのだ。私は、今後さらなる緑化がすすみ、これを契機に豊かな大地が蘇ることを切望している。

 

 

省エネを植物で実現する

 

暑さや寒さに対して植物で対策を講じているところが毎年話題になっている。特に夏は、植物のありがたみが分かる気がする。その自覚はひょっとすると、将来へ向けたなんらかの布石につながるのかもしれない。緑のカーテンによる室内の冷却、緑陰樹による街路などの熱の低下、芝生の心地よさなど植物には省エネにおいてさまざまな利点がある。ここで大事なことは、植物の維持をしっかりと行うこと、特に水が不足するようならば、水やりをきちんとすること、灌水システムなどを使うことが求められる。

 

 

緑のカーテンと緑の棚

 

例えば夏の時期、緑のカーテンを朝顔やゴーヤ、ヘチマなどで作り、垂直壁に仕立てて、室内を涼しくするという方法がさかんに取られている。これがお勧めなのは言うまでもないが、実は、垂直壁ではなく藤棚のように仕立てても、その下の部分が木陰になり、植物の蒸散作用で冷やされて涼しくなる。これは、パーマカルチャーの基本的な設計要素としても採用されており、例えば、北向きの出入り口を覆うような形でパーゴラや藤棚を作ると、その涼しい空気がドアを通じて室内へと入り、部屋を冷やす効果があるのだと教えられている。

 

 

緑陰樹

 

夏の暑い時期に木陰に入ってほっとしたという経験は、誰もが持っているのではないかと思う。この現象は、樹木によって太陽が遮られて緑陰が涼しいことも事実だが、実際木の下にはいつも快適な微風が吹いているのである。木の葉が葉裏などにある気孔を通じて水蒸気を蒸発させると気流が生じ、微風が生まれるのだ。私たちはこの微風のおかげで、空気が涼しく感じられるようになる。この蒸発プロセスで消費されるエネルギーは大気中から取得されるため、大気にある熱エネルギーは消費され、木々に隣接する建物の空調使用率を減らすことができる。

 

 

近年、舗装された広場や道路、公園の遠路は多いというのに、立派な大きさの街路樹はどんどん消えている。樹木が20年30年と育つことはとても大変なことなのに、切るのは一瞬ですんでしまう。なんという勿体ないことであろうか。都市の住宅地では日照権の関係で元来、大きな木が嫌われる傾向にあった。そして最近ではそれに加えて、落ち葉の清掃やムクドリなどの鳥害(緑や大きな木が減る一方のため、駅前ロータリーなどの人がいる場所にある大木にもムクドリが集団でやってきて夜通しうるさいのと糞害が問題になっている)のが原因で、ますます、伐採に拍車がかかっている。

 

 

しかし猛暑ならばことさら舗装面からの照り返しが強く、道や広場にいるだけでへとへとになってしまうのではないか。そこに大きな木がところどころにあるだけで、熱中症対策になるのだ。まさに大きな木は自然の与えてくれたクーラーと言える。これを都市の中で使いこなすことができるようになって初めて、日本の都市計画はどこに出しても胸を晴れる超一級のものになるのではないかと長年思ってきた。

 

 

大木でなくとも緑には蒸散による冷却効果がある。影こそ提供しないが、芝生には他のどの舗装面、あるいは道路よりも地面を涼しくしてくれる効果がる。その秘密は、緑陰と同じ理屈、つまり光合成と水蒸気の蒸発作用で消費されるエネルギーにある。水蒸気が蒸発するときには周囲から熱を奪う。そのため、高温になる気候では、植物によって作られる表面は皆、舗装に勝ることになる。しかし、使用目的、管理、デザインなどを総合的に考えると、舗装面や踏石との兼合いが一般的に生じるため、その場にあった選択が必要となる。

 

 

真夏に植物を移植する必要性が生じたと仮定すると、それを枯らしたり萎らせたりすることなく無事に定着させる方法は、常に水を絶やさないことである。つまり、朝晩の水やりが必要である。同じように、涼しさを期待して植えた植物についても、自身が育つための水を十分に得ることができなければ、生じる蒸散の量は少ないものになる。しかし、だからといってむやみに水をあげすぎては、植物が水に対して脆弱になり、少しの水不足にも萎れるような結果を招くことになり、また、水の過剰な消費にもつながるのでお勧めでできない。一方で、植えたらば植え放しで後はなんの管理もいらないと思うのも、誤りなのである。

 

 

私たちは植物と、この過剰と不足の間のバランスをとりながら、上手く付き合っていかねばならないのだ。人間が植えたものには、人間が面倒を見る義務がある。

 

 

冬の落葉樹

 

夏には緑陰を提供する樹木の多くが、冬には落葉する落葉樹なので、冬には太陽を遮ることなく室内や地面へ光を届けてくれる。落葉樹を上手に活用するのは、昔から行ってきたことである。気候変動などによって、様々な社会の既存ルールが影響を受け、それまでの考え方が一新されるようなこの時期に、改めて大きな木、緑陰樹の意味を考えて見ることも意味があることではないかと思う。

 

 

植物による浄化作用とはなにか

 

ついで、また別の植物の効用を述べるが、植物には浄化作用がある。主に大気を浄化したり、水を浄化したりしてくれる。大気の浄化は、植物が二酸化炭素を吸って酸素を出す光合成の副産物として生じるもので、その意味ではどの植物もこれを行うのだが、植物の種類によって吸収したり吸着したりする汚染物資の種類や量に変化があるようである。一例をあげると、シックハウス症候群などが懸念される室内に観葉植物があると、ない場合よりも室内大気を綺麗にしてくれることが知られている。

 

 

汚染物質の浄化

 

ここへきて、もうひとつ注目されていることがある。それは、植物による水の浄化である。と言っても難しいことではなく、植物は生きるために根から水を吸い上げて、それを体内の隅々までいきわたらせ、水を循環させるとともに根から吸収した養分を同じく体内の隅々まで届け、生長の糧としている。しかし、植物にはポンプが内蔵されているわけでもなく、根という地下の部分から吸収した水を、どうやって地上のしかも植物のてっぺんにまで押し上げるのかといえば、実は蒸散の力を借りて、水を回しているのである。余分な水が体内から放出されるときの力を利用して、植物は新たに根元から吸い上げた水を体の隅々まで送る。その時に体内に十分に水が足りていなければ、当然、水蒸気として外に出される水の量も少なくなる。だから、水不足の植物から発散される蒸散の量は少ないということになるのだ。

 

 

そして、植物の汚染物質浄化作用というのは、根が水を吸収する際に汚染物質の含まれる水を吸収するために起こるわけで、蒸散として出て行く水は水蒸気のため一切の不純物質を含まず、水が出て行くことで水の循環に貢献をしつつも、植物の体内には汚染物質が蓄積するというメカニズムになる。このような仕組みで浄化される汚染物質は、リンなどの栄養素と重金属がメインである。植物体を想像しても分かるように、ひとつひとつの植物は小さく、必ずしもかなりの効果が出るものではない。そこで、一般には、土壌の緩衝作用も共に用いて、土壌と植物で水を浄化することがなされている。これをバイオレテンションと言う。

 

 

 

 

バイオレテンションとは、上の写真のようなモデルである。舗装面を流れる雨水は、車から出た排気ガスの成分やガソリンの成分を含んでいる可能性がある。その水が植物の植えられた場所に入り、浸透する。水は土壌を通じてろ過されると同時に、その幾分かは、植物によって吸い上げられる。吸い上げられた水は植物の体内を運ばれ、やがて余剰分が体外へと水蒸気の形で出され、体内には汚染物質が残るのである。また、土壌を下へと浸出する水は綺麗になり、地下水へは汚染を運ばない。しかしながら、これには綿密な土壌の設計が必要である。適切な設計がなされなければ、あるいは予想に反して汚染水の量が多ければ、地下水へとその水が浸出してしまうからである。

 

 

気候

 

エネルギー経費を節約するために、ランドスケーピングを行うことができる。冷房、暖房、灌水のコスト削減のために、建物周辺の気候を変えるのである。気候は多くの要因から形づくられるもので、その中には太陽、風、温度、湿度、蒸発、降雨量、温度格差などが含まれるが、これらの要因は土地と水、海の温度、風向き、山、都市、雲の様子、空気中のゴミ、雪、嵐の頻度、重力、気圧、さらには地球規模の温度傾向から影響を受けているのである。

 

 

微気候

 

小規模な気候は微気候といわれるもので、これは非常に制限がある。一本の通りや湖の半分、または建物の一辺だけといった場所に限られたものさえある。しかし、小規模と侮ることなかれ。この小規模の場所の気候を調節することで、エネルギーにかかるコストを大幅に減らすことが出来るのである。ある場所に都市建築が多ければ多いほど、地域的な気候は変化を余儀なくされる。また、建物が多いほど、微気候の違いも大きくなる。そして、微気候がいくつか集まったグループを微環境と呼ぶ。 冬の温かさや夏の涼しさのような快適さという感覚は、気候要因と相互に作用し依存するものである。微気候の入念な分析によって、利用できる要素、減じたい要素を識別しよう。それには、例えばこのような自問から始めてみるとよい。

 

 

  • 微気候で最も不快感を与えている場所はどこか。
  • 非常に厄介に感じているものはなにか。
  • どの微気候の構成要素が最も快適か。

 

 

微気候調節の究極の目的は人の感じる快適度を向上させることにある。 例えば、木立の根元の微気候と街頭の舗装された道路沿いが持つ微気候とが大きく異なるのは、想像がつくだろう。木の根元からアスファルトの道路へ移動してくると、暑く感じることと思う。が、実際には9度温度が高いだけであっても、肌では12度も高く感じられることがある。これが体感温度である。アスファルト道路に住宅が面しているのならば、夏の時期は熱のせいで空調がいっそう要求されることになる。しかしながら、逆に冬の時期には、温かい舗装道路が日光を吸収して温度を高める働きがあるので、暖房費を節約することができる。このように微気候はさまざまで、風の強い山の渓谷にはその微気候が、臨海地の住宅にはまた別の微気候があるのだ。

 

 

微気候をつくる要素

 

   
温度 冬と夏、高温と低温の天気の存続期間、冬と夏の方向、夏と冬の太陽の高さ、冬と夏における日の出と日の入りの角度
冬と夏に優勢な風向き、頻繁に起こる嵐の風向き、台風の風向き
嵐の頻度 冬と夏の頻度
降雨量 冬と夏の降雨量、排水の方向、湿っている場所と乾燥している場所の位置
降雪量 冬の降雪量、雪が吹き積もる方向
湿度 冬と夏の頻度
地面から空中に放出される熱 夜に放出される建物、水面、地面からの熱
空中から地面に吸収される熱 日中に建物、水面、地面から吸収される熱
地形学的構成要素 山、湖、谷、平原、森
敷地の形状 起伏、斜面、水平、乾燥、湿地
地表面 コンクリート、アスファルト、芝生、その他
建物の表面 石、レンガ、コンクリート、木製、アルミニウム、その他
屋根 色、傾斜

 

 

住宅周辺の微気候は、住宅や庭を快適にするために一定量のエネルギーを必要とする。しかし、あなたの家の周りの微気候は、必要以上に過剰なエネルギーとコストを浪費していないだろうか。ここに植物を植える前に、まずはあなたの敷地の微気候が持つエネルギーの可能性を割り出し、その場所を管理するには何が必要か、次に美観や園芸学上要求されることに関連させても分析していく。

 

 

例えば、敷地の中に、寒い気候の場所があるとする。そこに舗装した床を造ってみる。するとそれが隣接する建物の側面を暖めて、快適なアウトドアシーズンの時間を引き延ばしてくれる。他方高温の気候では、その特殊な微気候でも成長して丈夫に育つ特定の植物が必要となろう。例えば、ある場所にはサボテンを植えたり、ある場所には露出した面にツツジを植える。このようなことには園芸学的な鍛錬が必要である。植栽と微気候を合わせることには少し努力を要するわけだが、最良の費用と利益関係の比率、成長率、最低の管理を達成したいのならば、その微気候に適合した植物を使うことが要求される。

 

 

熱を失えば涼しくなり、熱を与えられれば暑くなる エネルギー節約のために植物や地形を有効利用する方法は、まず、熱がどの場所に運ばれてくるのか。そして、熱が運ばれてきたことによって私たちはどのような影響を受けるかについて理解し、把握しなければならない。例えば庭の温度はおよそ下記のようになる。

 

 

庭の温度 アスファルトの道路/最高温37.8度
そよ風のある芝生/それよりも涼しい26度
木陰/一番涼しく22度
舗装面/熱い32度
高温の空中にあるポケット/35度
一方で、
反射熱などから断熱された家の中/24度

 

 

このようにさまざまな場所の温度をはかりつつ、温度を変えられるところはあるのか、もし変えられるとすればどのように変えるのか、と順番に考えるようにする。

 

 

夜の温度-放射冷却の影響-

 

夜になると、日中に地面や石造りの建築物、建物などに吸収された熱エネルギーは、そこから暗い夜空に向かって放出される。これは、日中に太陽光エネルギーがそれらの物体へ吸収される動きとは、まったく逆の方向への矢印である。特に、雲が少なく乾燥する地域では、夜の放射冷却は非常に大きくなり、その結果、昼夜の寒暖の差が激しくなる。建物や石造りの建築物など太陽光から熱を吸収するものは、自身の周辺を暖かく保ち続けるが、夜はゆっくりと自身とその周辺の温度を下げていく。この作用を利用して、夜が冷え込む地域の場合には、石造りの建築物や岩、コンクリートなどを住宅建物の近くに配置して利用するとよいのである。

 

 

地球温暖化 予知しにくいものの、これからの地球は確実な変化が予想されている。温度は、高温・低温共に、もっと極端になるらしい。50年後の都市部の平均気温は10度上昇する可能性もあると言う。これに対して、木陰を提供してくれる樹木が1本成熟するのにかかる時間は、30年から50年かかるということは、ぜひ頭に入れておきたいところである。

 

 

都会のヒートアイランドは、地球温暖化のプロセスに大きく関与している。樹木特に高木やそれが集まってできた森林などは、気温を下げることのできる数少ない自然システムのひとつである。都会に樹木を植えることによって、その厳しい気候状況を和らげることは可能であり、その結果、温度を下げるために消費されるエネルギーの量も軽減できるという好結果も望むことができる

 

 

電力消費量の低下は省エネにつながり、また、逼迫する電力事情に対応することもできる。こうした植樹などによる植物の利用は一朝一夕にはいきませんが、それでも、考えない・実行しないよりはよほどに良いことである。何より、地球温暖化の曲線を下降に向かわせる助けにもなる。こうした植物の利用法を再考すべきときに来ているのではないだろうか。

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