ゼリスケープとはなにか

公開日 2005年8月23日 最終更新日 2016年5月2日

IMG_6745ゼリスケープTMとはラテン語で乾燥を意味するゼロス(Zeros)と景を造ることを意味するスケープ(scape)を組み合わせた造語である。それは、乾燥地に適した景観をつくる方法として定義されたが、現在では、ゼリスケープあるいはゼリスケープデザインとは、地域に関わらず、「適切な水の使い方によって、水を保全(節約)しつつ景観を造りだし、維持する方法」と定義される。

 

ゼリスケープTMは日本では馴染みのない言葉であるが、私たちも水の有効利用を推進したいと思い、この言葉を使用している。

 

 

ゼリスケープの始まりはコロラド州デンバーから

 

ゼリスケープTMはアメリカ中部のステップ気候帯、コロラド州で生まれた。ここは、4月が日本の梅雨の時期に当たり、真夏の7月~9月にはほとんど雨が降らない。そのため、水源が枯渇するほどの渇水にもしばしば見舞われる地域であった。

 

 

給水制限

 

1981年に、コロラド州の州都であるデンバー市で、水道局とランドスケープアーキテクト、大学研究機関、ナーサリー、ガーデンデザイナーらが参画して水資源保護のための共同専門調査団(タスクフォース)が結成された。ランドスケープ産業界と水道局の官民が一体となって、水の使用量の低減に本格的に取り組むことになった。その理由は、真夏の灌水使用量が、年間の水の総使用量の約3割を占めることにあった。

 

飲み水が不足するような事態のもとで庭に水やりをすることはできない。デンバー水道局は、渇水期のランドスケープによる灌水の使用制限を宣告した。

 

waternews
上:デンバーウォーター(水道局)が2003年初夏に新聞にだした節水を呼びかける広告。水やりを毎日でなく隔日に、さらに使用が集中しないように地域によって使う曜日を分けて指定している。

 

しかし、実際にこの給水制限が実施されると、個々の庭以上に深刻な打撃を受けたのは、植物生産者などのランドスケープ関連産業に従事する者であった。その結果、水道局やユーザーに加え、ランドスケープに関わる専門家も真剣に水保全を考えるようになったのである。

 

最低限の水使用で街並みを保持し、ガーデンの素晴らしさを享受するにはどうしたらよいのか、とその方法の確立を誰もが模索しはじめた。生産者は自助努力で乾燥に強い品種を探し始め、デザイナーはデザインにて問題を解決しようとする・・・この流れはやがて、1986年に非営利組織であるナショナル・ゼリスケ一プTM評議会/(The National Xeriscape Council, Inc.)を設立させ、2003年には、コロラド・ウォーターワイズカウンシル(Colorado Water Wise Council)というあらゆる分野での水保全に取り組む組織設立につながった。

 

コロラドなどの西部乾燥地帯に関わらず、現在のアメリカでは、どの地域でも水を大切に使おうという認識がアメリカ全土に広まっている。このことは、灌水が一般的な装置として広く普及していることと無縁ではない。また、コロラド州以外の地域では、ゼリスケープTMという名前を使わずに、ウォーターワイズ(賢い水)、スマートウォータリング(賢い水の使い方)、と呼ばれることが多い。