公開日 2008年11月22日 最終更新日 2018年1月24日
低影響開発とはLow Impact Developmentと綴り、その頭文字をとってLID(リッド)と略される。それは、雨水を降った場所のできるだけ近くで管理しようとする革新的な降雨管理の方法である。つまり、雨水を一極集中的な処理場へ運んで処理するのではなく、小規模な敷地単位で管理するものである。
低影響開発がめざすもの
低影響開発がめざすのは、その敷地が開発される前にあった水文機能を、開発後の敷地の水文システムでも再現することである。このために、浸透やろ過、貯留、蒸散などの技術を使って敷地には「装置」や「設備」「セル(細胞という意味だが小単位の設備という意味)」とよばれる装置を設置する。この装置の設計には、降雨を不要物として捉える雨水管理ではなく、資源として見直す雨水管理をしようとする立場に基づく技術が使用されている。従来、舗装面や屋根に降った雨は、調整池などの集水域へ集められてその底部から伸びる配管によって離れた地の大きな汚水処理場へと運ばれ、処理されてきた。しかし、低影響開発というのはこの手法とは異なるもので、敷地単位に小規模で費用効率の良い装置を設置し、それを通じて降雨を処理する。この「装置」は土壌と緑を軸に設計されるために、ランドスケープ的な機能を併せ持っている。ここで言うランドスケープ機能とは、殺風景なコンクリートの人工的風景ではなく、地域を緑化し美観に貢献するものを指している。それは通常、オープンスペースやルーフトップ、ストリートスケープ、駐車場、歩道などに付属する場所となっており、集約的には「雨の庭TM」と呼ばれる庭の形をとることもある。この雨の庭TMは、「雨水を一時期溜めてそこに浸透させて処理する」という特性から「バイオレテンション(生物滞留)」または「バイオスウェイル(生物低湿地)」と呼ばれることもある。
いろいろな語句を書いたが、要するに低影響開発とは、雨水を資源として活用し、新規開発にも都市の改装にも、また、都市の再開発や再生にも等しく適用できる多目的な手法である。そして、住宅の庭から公有地、道路、商業地、工業地などすべての規模で適用できる手法である。誤解すべきでないことは、雨水を貯めるという一元的な方法ではないという点である。低影響開発なんのために行うのか。それは、雨水流出管理とあらゆる水域の水質向上のために行われるものである。しかしながら、そのために大規模な設備投資はできるだけやめよう、箱モノ投資はやめようとしている。では、次のページでは低影響開発の目的について見てみよう。
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