小出兼久が選ぶランドスケープアーキテクトが読むべき本 (3)

公開日 2009年12月22日 最終更新日 2016年5月2日

Design Charrettes for Sustainable Communities
持続可能な地域社会のための設計討議
by Patrick M. Condon
Island Press, 192 pages

 

設計討議は近年、公衆の設計参加にとっての強力なツールとして、多くのコミュニティの好評と悪評を獲得している。本書は、この効果を利用するための段階的なマニュアルである。著者Condonの長年の経験による図面が討議のプロセスを効果的に形づくっているが、この本は、生産的な設計討議を行うための基本的なステップと最高の実行の両方を兼ね備えた率直なガイドである。公衆の声に対して透明度と聞く耳を持つことで計画を前進させようとする、いくぶん複雑なプロセスにインサイダーの見方を提供しているが、彼のアドバイスは、等しく公務員、ディベロッパーと一般大衆にあてはまる。

 

 

Immigrants and Boomers: Forging a New Social Contract for the Future of America
移民とベビーブーマー:アメリカの将来のために新しい社会契約を創り出すこと
by Dowell Myers
Russell Sage Foundation Publications, 356 pages

 

マイヤーズは、広範囲にわたる人口統計学的データを使って、年をとりまもなく退職を迎えるベビーブーム世代が経済と全国の労働力に与える影響響を説明し、その来たるべき欠如は、国内で急速に増大する移民者の人口によって満たされることができると論ずる。本書は、この移民人口に労働力から離脱するベビーブーム世代の埋め合わせをさせる準備の枠組み―拡張された教育に頼る戦略と移民のアメリカのホームオーナー階級への算入と求人市場と税制へのより良い統合―を提供するものである。

 

 

Last Harvest: From Cornfield to New Town
最新の収穫:いかにしてトウモロコシ畑は新しいDalevilleになったか
by Witold Rybczynski
Scribner, 320 pages

 

起草段階から最初の住民までそのプロジェクトを追跡したペンシルバニア準郊外での新伝統主義的な住宅分譲地に関する徹底的な報告書である。本書は全開発プロセスと全ての衝突と進行に伴って経験する傷を詳細に記録する。そして、どのようにプロジェクトを作り、現状を打破し、冷え切った市場に漂流してとどまろうとしているのか、率直で詳細なプロフィールを提供するものである。

 

 

Smart Growth in a Changing World
世界変動におけるスマートな生長
by Jonathan Barnett, F. Kaid Benfield, Paul Farmer, Shelley Poticha, Robert Yaro and Armando Carbonell
University of Chicago Press, 148 pages

 

本書は、有名なスマートな成長(スマートグロース)の専門家の作品のコレクションを特徴として、標準的なアメリカの消費と浪費的な土地使用が、どのように着実に我々の環境、健康と生活様式に対する脅威を倍加させているかについて調べたものである。そして、国中からの事例研究を元に、国家の政策は、スマートな成長の開発パターンを促進するのかあるいは制限するのかという観察を提供している。米国の人口は、今後30年以内に4億人以上になることが予想されることから、著者は、米国の土地使用習慣を改訂することが国の成長を下から支え、国際競争力を維持するために重大であると論じている。

 

 

Sustainable Design: Ecology, Architecture, and Planning
持続可能なデザイン: 生態学、建築とプランニング
by Daniel E. Williams, David W. Orr and Donald Watson
Wiley, 304 pages

 

本書は、環境にやさしい開発の中で増加する傾向について、建築的展望を提供するものである。ウィリアムズは著名な建築家かつ都市計画者であり― 地域からコミュニティの建物まで―全てのスケールで持続可能なデザインについて解説している。

 

 

Sustainable Urbanism: Urban Design With Nature
持続可能な都市化:自然による都市のデザイン
by Douglas Farr
Wiley, 256 pages

 

持続可能な都市のデザインに広く焦点を当てた解決に基づく観察書である。この大量の写真入りのガイドは、プランナーや建築家とデザイナーに対し、環境への人間による影響を減らしながら良い場所をつくるという二つの機能を持つように彼らの仕事を再構成することを求めている。事例研究と小論は、新しいタイプの都市デザインと自然とを相互に関係づける開発を代表して繰り広げられる。この野心的な議論で採り上げた考えと方法に対して、現実のコンテキストを与えるのが持続可能なデザインであるが、その適応性にも目を向けている。 そして、単に緑化したデザインと持続可能なデザインとの違いを調べ、生態学に基づくシステム-アプローチの重要性を強調するものである。

 

 

The Best-Laid Plans: How Government Planning Harms Your Quality of Life, Your Pocketbook, and Your Future
最良の敷設計画:政府の計画がいかにあなたの生活の質や財布、あなたの将来を害するか
by Randal O’Toole
Cato Institute, 416 pages

 

実例に継ぐ実例で、オトゥールは政府計画の最悪さを示す。彼の詳細な議論によって、このひどい実績では政府計画が我々のコミュニティの将来を管理することを、我々は安心してまかせられないという証明をする。本書は、同じ心の自由擁護論者と他の不介入のタイプの展望を持つ人の支持を受けるだろうが、職業人としての計画プランナーが読むのにも適している。なぜならば多くのプランナーが仕事の中で遭遇するであろう他人と反対のことをする人の物の見方を提示するからである。そして、はっきりと「向こう側」の境界を図示する。本書には、多くの例と悲惨な失敗が掲載されているが、選択肢や解決策はほとんど提供されないのは残念なことである。

 

 

The Great Neighborhood Book: A Do-it-Yourself Guide to Placemaking
すばらしい居住区の本:場所制作の素人でもできるガイド
by Jay Walljasper
New Society Publishers, 173 pages

 

本書によれば、良い場所をつくる力は2、3のデザイナーやプランナーの手中にしか属さない物ではない。著者は、市民が如何に必要とされ、如何にどんな場所でも「そこ」の要因をもたらすことができる特性を市民が促進できるかについて示す。本書は、ポジティブな変化を引き起こすために官僚政治を越えた個人を紹介するという現実の例を使うことで、本当に場所を制作することは人々の力となるのだということを示している。

 

 

The Option of Urbanism: Investing in a New American Dream
都市化のオプション:新しいアメリカの夢に投資すること
by Christopher B. Leinberger
Island Press, 224 pages

 

本書は、短時間で容易に読める読み物であり、新しいアメリカン・ドリームを提示している。それは、過去のアメリカン・ドリームに似ている。つまり、より遅いペースでの近隣中心の生活様式の実現を目指している。著者であるレインバーガーはこれを歩いて行ける都市化と呼び、過去の分析と経済の分析を用いて、現在の市場偏向は、過去60年あまり独占されていた運転できる住居区から離れて、こちらの開発パターンへ変換してきているということを明らかにする。

 

 

Visualizing Density
密度の視覚化
by Julie Campoli and Alex S. MacLean
Lincoln Institute of Land Policy, 152 pages

 

この鮮明なビジュアル本は、密度の概念を理解するための基本的なガイドブックの1つである。ここでは、 ニューヨーク市での1エーカー当たりほぼ300単位からビバリーヒルズでの1エーカー当たり0.2単位まで、米国の住宅密集の状況全てに、航空写真と街路パターン図を提供している。本書は、米国での密度と土地使用パターンの正確な記述を提示して、より大規模菜密度社会に対して、計画と設計の足がかりを提供する。マクレーンの美して多種多様の航空写真術は、合衆国の何百という地域の感動的な景色を伝えてくれるとともに、無駄な開発パターンという心を乱す観察が、何十年もにわたって忍耐強く続けられていたことを意味している。