インターディシプリナリーアプローチ

公開日 2012年1月21日 最終更新日 2016年5月2日

ランドスケープアーキテクチュアに対するインターディシプリナリーアプローチ

 

生態学的インフラストラクチュア
ランドスケープアーキテクチュアで必要とされる生態学という生物科学は、都市研究で用いられる様々なアプローチが集まったもので、ランドスケープアーキテクチュアの比較的最近の拡張分野である。都市のインフラストラクチュア戦略の設計に際しては、生態学の中の景観生態学と保全生物学を適用する。これらの学問は、都市が地域特有の生物多様性に対応するように、ランドスケープアーキテクチュアの中で生物と物資とエネルギーの流出を組み立てて導くものである。元々ランドスケープアーキテクチュアは、20世紀前半より生態学を包含し続けてきた。しかし、今以上に景観生態学と保全生物学が求められている時代はない。このことは、都市のインフラストラクチュアに求められる優先度の変化を象徴するものである。今の時代、人間の健全性、安全性と福祉を増強することが都市の目的とされる。このため、生態学的なインフラストラクチュアは多重目盛で作用し、雨水排水、街路設計、交通輸送網、施設、公園、遊歩道のシステムなどを組込むことになる。

 

文化に基づいた場所の創造
文化とは知覚と場所に対する解釈と表現である。文化もランドスケープアーキテクチュアによる計画の中で重要な役割を果たしている。場所とは、環境へと拡大する様々な社会、文化、政治力、経済力の相互作用の生産物である。文化に基づいた場所形成は、この現実と我々のコミュニティの完全な多様性を擦り合わせ、それを象徴するようなデザイン的解決をしたときに、個人とコミュニティの声の価値を際立たせる。文化に基づいた場所形成とは、多様性のあらゆる形の価値を認める設計(デザイン)の本質と民主主義のアプローチである。我々は、個人の疎外や変化が生じるなどの意味を含めた場所から文化を分離させる強力な同時代の社会と経済、技術的な力などの可能性があることを認めるが、それでも、過去と現在の文化を尊敬しこれらを一致させるデザイン的介在を作成しようと努力している。

 

生態学的知識能力の設計
生態学的知識能力とは環境に関係し、どれが自然で文化的なシステムの知識として率先するのかを判断し、それらのシステムを維持し、明らかにし、かつ再生成する能力と管理価値を含んでいる。我々は強力なプロセスと、生態学的知識能力を発展させる手段としてデザインを考察する。知識能力はすべての住民にとって不可欠なもので、我々は年少期に、直接の体験によって生態学的知識能力を発展させるのである。生態学的知識能力は、設計者の理解を豊かにする。設計者は、生態学的知識能力の伴うデザインによって地域特有の景観を形成するために、住民から現在の知識と関心と活動などを得るべく参加型デザイン・プロセスを組込むことがある。すると例えば、デザインのフォームと構成要素と物資によって公害防止プロセスを明確に増強することができる。

 

人と環境衛生
福祉の視点は、ランドスケープアーキテクチュアにとって重要である。環境設計とデザインが重きを置くのは健全を維持しつつ促進すること、そして、ランドスケープアーキテクチュアの長い伝統の中で(地域から世界まで)すべての規模での人間と生態系に対して適切で効果的な戦略を調査し、実行し、評価することである。例えば、学校と近隣地区の医療サービス提供者と患者へ、多様なコミュニティーと共に治療的デザインの自然の役割へ、コミュニティ計画と回復推進の設計と環境公平の研究を通じてこれらのチャレンジに取り組むように協力する。ランドスケープアーキテクトは、健全なコミュニティの持続可能性を向上させるのに最適な方法や実践を見いだすために、時に、公的機関や住民グループと協力する。我々は、環境心理学を含む関連領域の学識と実践、自然科学、環境衛生、医学、ソーシャル・ワーク、看護を連動する学際的なフレームワークの中でのデザインと研究の総合を重視している。

 

最後になるが、ランドスケープアーキテクトは、世界で明確な変化をどのように計画設計の中に盛り込むことできるかのを意識として持つことが必要である。どう計画できるか。設計(デザイン)は、社会的あるいは環境的に公平な分配を達成しなければならない。それはまさにデザイン行動主義(*)である。デザイン行動主義とは、どのようにランドスケープアーキテクチュアによる社会実践と関連職業を再び活気づけることができるかにある。デザイン行動主義は、デザインと設計の中に、社会上広範にわたって環境的に信頼できるアクション(行為)を包含する。これは都心部のコミュニティー擁護にもつながる。

 

*)用語=「デザイン行動主義」は、2004年の環太平洋コミュニティ・デザイン・ネットワーク第5回会議で最初に使われた言葉である。それは、『Architecture for Humanity』(2006年)などに見られるデザインに関する出版物に示され、それ以来、建築を拡張するようなデザインの社会実践に対して寄せ返す関心に類似するもので、デザインという職能の中で現われる言葉になった。(Bell and Wakeford, eds. 2008年)

 

行動主義としてのデザインは、地域の全住民の活発なかみ合いを強調する。生態学的インフラストラクチュアと生態学的知識能力、文化に基づいた場所形成と人間と環境衛生など、使用者とコミュニティと社会とのかみ合いの良悪が、正当で持続可能な環境を築くためには決定的に必要なのである。