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掲載日2006.11.6
ハリケーンの内部
新しい分析によれば、ハリケーン強度の上昇は人間の温室効果ガス排出量に比べて下がっている。 ある科学者たちは、ハリケーンの威力のもととなる海温の最近の上昇の3分の2は人類の温室効果ガス排出に比べて下がっていると計算している。 昨年公表された研究によると、最近の数10年間に、もっとも強いカテゴリー4と5の豪雨の発生率が急激に上昇していることが分かった。 しかし、別の科学者たちは、歴史上の暴風雨記録における誤差が起こっているのかもしれないと注意を促している。
暖かい水域が豪雨を形成するのであろうということと共に、ハリケーンの形成は海温と強く関連づけらている。 しかし、こうしたハリケーン発生地における温度の上昇は、自然作用というだけで説明することはできない。 海面水温とハリケーンの強さは自然に変化し、そこに人間の温室効果ガス排出量の明確な影響があると判読するのは、難しいことである。 しかしながら、この2年間でそれを決定的に解決はしないが、少なくとも問題への理解度を増させるほどのマスターピースの幾つかが研究によって分かった。
強度のピーク
昨年の7月、マサチューセッツ工科大学出身のケリー・イマニュエルは、熱帯性低気圧の最大風速と放出されたエネルギーの持続時間は、1970年代中頃以来、北大西洋と北太平洋の両方で著しく増加していることを示す研究を発表した。 数か月後に、ジョージア工科大学のピーター・ウェブスターは、カテゴリー4と5の豪雨の発生が増加していることを立証した、すなわち、 1975年から1989年までの15年の間、強いハリケーンは171あったが、次の15年間では、269に上昇している。 彼は当時それをBBC報道ウェブサイトを知らせた: 「私たちが言ってもいいはずだと私が思うのは、強度の増加は、恐らく海面水温の上昇によって説明されるということである。そして私は、海面水温の上昇は、恐らく地球温暖化の明示であると思う。」
今年の6月、米国国立大気研究センターのケヴィン・トレンバースは、2005年の北大西洋のハリケーン・シーズンを例外的に活発と分析した。
彼は、海面水温(SST)が長期的な平均よりも0.9度高いことを発見した。 また、北大西洋と他の大洋とを比較して、人間の温室効果ガス排出がこの上昇の半分についてを説明すると推論した。
最新の調査はもう一歩進んで、SSTと人間によって誘発された地球温暖化との関連の可能性を調べるために、気候の22のコンピューター・モデルを使っている。これらのモデルは概して予測と確率を扱うが、それは世界的な気候のような巨大で混沌としたシステムでは必然なものである。ベンジャミン・サンテール、トム・ウィグレイと彼らの同僚は、次のように結論づけた。
ハリケーンが発生する太平洋と大西洋の地域で「観測されたSST上昇のうち少なくとも67%は、 [人間の活動]が外因的な強制力となっていることを84%の確率で説明する。」
ウィグレイ博士は、「重大なことは、これらのハリケーン発生地で観測されたSSTの上昇は、自然作用(ナチュラルプロセス)という理由のみでは説明がつかないということである」と語った。
「こうした変化に対する最も良い説明は、大規模な人間の影響が含まれるということである」
嵐のできる時
政治的なレベル上で、ハリケーンの強度以上の討論は、気候懐疑論者のポスターチャイルド(優等生・広告塔)になっている。
気候懐疑論者は、一部の解説者によってハリケーン・カトリーナの惨害と特に、上昇する温室効果ガス濃度との間に大げさでご都合主義的なリンクが作られたと見なし、これに反対している。その主張は、研究者の中に、豪雨の歴史的記録を明らかにした者がいたということで、科学的な基礎を与えられている。歴史から見れば、嵐はある強さを持っていて、そして、それは再分析され、ずっと強いものとなったら、発生する。
人工衛星観測は、約35年の歴史しかなく、それにさえ、キャリブレーションという問題がある。 初期のものを測る計器は、後継者のそれと同じ位正確であったろうか?また、衛星以前については、研究者は、陸上と海上での観測を手書きの記録に頼らなければならない。

「私は、歴史的に、嵐が特定の強さを与えられ、そしてそれから、再分析され、非常に強くなってから発生するという例を幾つか見た」と、英国気象庁の熱帯予言科学者である、ジュリアン・ヘミングはコメントしている。
「そして、たとえ我々が海面温度のベースラインの上昇があると読みとったとしても、それに反応してサイクロンが形成されるには、複雑な方法を経てである」、と彼はBBCニュース・ウェブサイトで発言している。「バミューダ[フローレンス]に現在接近しているハリケーンは、年毎の違いと、ハリケーン毎の違いがあるにせよ、あがきにあがいてハリケーン強度を増したのだから。」
懐疑的な評論家も、コンピューター・モデルは決して完全でないと主張する。
しかし、ベンジャミン・サンテールとトム・ウィグレイが指摘するように、将来の予測をするのに、他にどんな手段があるのだろうか?
「現実の世界で、我々は先例がなく制御できない地球物理学的な試験を実行している」と彼らは述べる。 「なんの疑う余地もなく、我々は、[人間の]活動が大気の化学構成物を変えたということを知っている。
ポストーカトリーナの世界では、我々はハリケーン強度には複合的な影響が働いていることを了解するために、我々ができる限りのベストを尽くす必要がある。」


