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雨水の貯水利用

 

雨水の利用を始めようという人に、誰もが思いつき実行しやすい、貯水利用について紹介する

 


貯水利用の目的

  • 水の消費量を節約し、上水道の利用を減らす。

  • 雨天時に下水管へのオーバーフローを減らす。

  • 洪水を抑制する。

  • 水源に入る汚染物質の量を減らす。

 

貯水にあたって知っておくべきこと

  1. 庭の灌水に使用する貯水には、建築的承認は不要である。

  2. 庭の灌水だけでなく洗濯やトイレに雨水を供給するシステムには、建築的な承認や安全性への配慮が必要となる。

  3. 公園や洗濯、トイレに雨水を供給する重力方式で本給排水系統との接続には、逆流防止装置を備え建築的な承認が必要である。

  4. 公園や洗濯、トイレに雨水を供給するポンプシステムで本給排水系統との接続には、逆流防止装置を備え建築的な承認が必要である。

 

健康に対する配慮

一般に、都市の上水供給域においては、飲料水、食品準備、台所とバスルームでは、上水道を使用すべきであり、それ以外の水の用途に対して、雨水を使うことにする。また、雨水の飲用については、災害非常時を除き、一般には行わないものとする。

 

普通の家庭ではどのくらいの雨水を使用できるか

屋根からの集水で、家庭で使用する非飲用水のおよそ65%をまかなうことができる。

 

どれだけの雨量を集めることができるか

集水可能な雨の量は、集水する屋根の面積と地域の降水量によって決まる。この量は一般に、集水面積と年間降水量と流出係数を乗じて求められる。

 

 

屋根集水による年間の雨水集水可能量

例:
年間降水量1458mmの地域(2004年東京値)で150m2の屋根表面から集水できる年間雨水集水量は次のように求められる。


年間雨水集水量
    = 集水面積150 [m2]×年間降水量1458[mm/年]x 流出係数*10-3
            ≒180m2/年
            ≒180,000リットル/年
            ≒500リットル/1日平均

*流出係数は集水場所により異なるが、屋根の場合は一般に0.85〜0.95程度を用いる。ここでは0.85を乗じている。

 

これは雨水集水の可能な値であり、この1日平均500リットルという量のみを参考に、雨水貯留槽(タンク)を500リットルの容量にしようと考えてはならない。降雨パターンは一定でない。冬場は0が続くのに、梅雨でいきなり1000リットルということもありえる。雨水貯留槽の大きさは、この年間集水課の雨量を目安にその地域の降雨パターン(どの時期に雨が多く、どの時期に少ないのか)や、降雨強度(最大mmの降雨が降るとか、集中豪雨の平均とか)を交えて、検討する。(詳しくは、次の雨水集水システムの構成4貯留槽を参照)

 


雨水集水システムの構成

雨水集水システムは次の6つの部分から構成される。

  1. 集水部
  2. 配水管
  3. 初期雨水除去装置
  4. 貯留槽(タンク)
  5. 逆流防止装置
  6. 水処理

 

1. 集水部:雨水を集める表面(屋根・屋上)

雨水は、トタン屋根、粘土瓦、スレート屋根などの屋根から集めることができる。
このとき注意することは、屋根材や屋根塗料に鉛が含まれていると、弱酸性の雨の成分が鉛を分解し、雨水を汚染したり、屋根を傷めることである。このため、鉛が含まれる材料や塗料を屋根に用いることは避け、不安があれば集水を止める。また、竣工から長い月日が経っている場合には、長期利用により、コンクリートの中性化やそこに使われている金属類の腐食も生じてくる。このため、いったん雨水の貯水利用を始めたら、屋根や屋上の定期的な点検が必要となる。繰り返すが、鉛については、鉛が含まれる材料を経由する雨水の利用は避ける。細かく言えば、樋のハンダ合金にも鉛が使用されていないかどうか確かめる。また、ある種の合成アスファルト材料、アスベスト、屋根板、コンクリート瓦と鉛の混じった塗料は汚染物質を浸出し水質に悪影響を与えるので、こうしたものを使った屋根も雨水集水には適さない。

 

2. 配水管:樋と縦樋とルーフドレーン

屋根に集まった雨水は、ルーフドレーンや樋(とい)と縦樋(たてとい)を通って、配水管へと運ばれる。この樋と縦樋と配水管には、継ぎ目なく成型されたアルミニウムや鋼、PVC材を利用する。傾斜を合わせ、縦樋から雨水貯留槽まで集水する雨量を最大限にするよう備え付ける。集水配管の入り口となる屋根・屋上にはルーフドレーンが必要である。ルーフドレーンは、茶こしをひっくり返したようなもので、金属かプラスチック枠の中に約6mmのワイヤーメッシュが入っていれば良い。樋の手前にこれが付いていれば、目に見える大きさのごみや汚染物質が、雨水配管(樋・縦樋)に流入するのを防ぐことが出来る。ただ、長の日には、目詰まりも発生するので、定期的に清掃をしなければならない。また、もし近くに樹木がある場合には、落葉が樋に流れ込まないように、落葉に対する遮壁を樋の全長に沿って設置する(ワイヤーメッシュでその部分の樋を被うなど)。

 

3. 初期雨水の除去装置

降り始めの雨(初期降雨)には、大気中の粉塵や汚染物質が多く含まれていたり、屋根を伝い流れる時に、屋根に付着したゴミや汚染物質を一緒に取り込んでいたり、清潔な状態と言えないことが多い。この初期降雨については、屋根・屋上・樋の置かれたの環境によって、取り除かずにそのまま貯留槽に溜まるにまかせて良い場合と、貯水を汚染から守るために排除する場合がある。例えば、交通量の激しい地域の屋根・屋上や、屋根材質に問題があるときには、ルーフドレーンを通過した雨水は、物理的な汚染物は除去できても、まだ化学的汚染物質に汚染されている可能性がある。そのため、この場合は初期降雨は除去して、中盤からの雨水を貯めたほうがよいことになる。初期降雨を捨てることにより、ルーフドレーンが不完備でも、雨に先立って屋根にすでに溜まっていた鳥の糞や落葉も除去することができる。

初期雨水の除去装置は、タンクの底を引き出しのようにして、最初に溜まった雨水を捨てられるようにしたり、配水管を分岐させて、ひとつに小さな初期雨水用の溜まりを作っておき、一旦このスペースが満タンになったら、それ以上の水は、貯留槽へと接続された縦樋を流れるように接続するような、雨水センサーとそれによって流入経路を切り換えられる電磁弁がついているシステムにするとよい。このスペースには、次の降雨までに空にすることができるよう、底に栓や小さな管を付けておく。

初期降雨を捨ててしまうと、集水できる量はそれだけ少なくなる。例えば、降水量4mm/日以上から集水するとすると、このうち0.5mm/日を初期雨水として排除する。これは言い換えると、屋根面積100 m2ごとに40リットル取り除く計算になり、降雨量のおよそ6〜10%を削除すると考えればよい。

4. 貯留槽(タンク):地下・地上、建物の壁上に設置

雨水を貯留するのが、貯留槽(タンク)である。今は、プラスチック、鋼、コンクリート、ファイバーグラスなどさまざまな素材で出来たものが手に入る。もちろん、既製品でなく、清潔な浄化槽タンクや、樽などの何か廃材的なものを二次利用してもよいのだが、耐久性と耐水性があり、不透明で内部が滑らかで清潔であることが、良いタンクの条件となる。蒸発と蚊の繁殖を防ぐためにふたが必要で、このふたは、昆虫、げっ歯類、鳥が侵入したり、容易に開閉出来て子どもが遊ばないような工夫が必要である。そしてタンクは、内部に藻が繁殖しないように、日陰の涼しい場所に置くようにする。必ずオーバーフロー管を接続し、定期的清掃もやりやすいように、いざというときには開口部が広いものが望ましい。尚、タンクをどのくらいの高さに置くのかは、水をどう使うのか、ポンプにより揚水をするか重力方式かによって異なる。地下埋設のタンクには、地上型の第一次タンクとポンプがセットで付くのが一般的である。また、大きさは次のものに依存する。

 

  • 雨水利用量

  • 年間降水量、日別降水量、降雨パターン、降雨強度

  • 集水面積

  • 必要とする供給面での安全性

  • 上水代替率

 

<貯留タンクの例>

下表のように、150m2の屋根から雨水を集めるために4,500リットルのタンクを設置したとすると、最大雨水流量を20〜35%縮小することができる。

 

雨タンク容量(リットル)
 
利水(リットル)
200
200
3,000
4,500
9,000
 
125
50%
80%
95%
100%
100%
 
225
40%
65%
85%
90%
100%
 
325
35%
50%
70%
80%
90%
 

 

 

<タンクの容量と形>

30m2程度の屋根面積ならば、用水桶あるいは樽で十分に対応できる。これらは一般に240リットル程度であるが、「サイロ」形の大きなものもある。
小さなタンクでも、家庭での水利用として必要な量の相当量を提供することができる。典型的な家の屋根に対して200リットルの貯蔵タンクがあれば、平均的なトイレ使用水の半分までを提供することができる。

 

5. 処理:単独利用か本線接続か

雨水利用を日常の水使用に盛り込もうとすると、では「雨が降らないときにはどうするのか?」という問題に直面する。これはつまり、雨水が無いときには利用をあきらめる=雨水の利用配管は単独で設置すればよいーのか、雨水が無くとも利用するのは変わらない=無降雨時の代替水源として水道を利用できるよう雨水利用設備を本給排水設備と接続しておくーのか、の二者選択である。

さて、雨水単独ならばよいのだが、本給排水設備と接続したシステムにするときには、雨水設備により本給排水設備が汚染されることのないように、本線との間に、異物の除去できるフィルターと逆流防止装置(弁)の設置が必要である。

 

<逆流防止装置>

逆流防止装置は汚染から本給水系統を保護するために必要である。

 

<給排水設備>

給排水設備はすべて公認の配管工によって施工されなければならない。水道工事は水道工事の免許を持つ業者のみが行うことができる。

 

 

6. 水処理:非飲用使用の場合

飲用非飲用にかかわらず、ここまでの利用前の大前提として、

 

  • ルーフドレーン

  • 鳥やネズミなどの糞が入り込まない措置

  • 初期雨水を除去する措置

 

が取られていなければならないが、それをしてもなお、配管に生じる、汚れ、さび、湯垢と、大気から何かの菌がタンクに入る可能性は常に存在している。そこで、雨水タンク中の水の品質は、不十分かもしれないのだ、ということを常に心に留めておくようにしたい。
では、タンク内の水質を「さらに少しでも改善するにはどうしたらよいのか」、という問題であるが、解決策として、貯留槽の前に沈殿槽を設けること、貯留槽の後に精密濾過用フィルターを設けることで、前者は浮遊固形物を沈殿させて除去すること、後者は精密ろ過で微細固形物を除去することで、水質改善にかなり有効な手段である。精密濾過用フィルターとしては、プールや浴槽で使用される簡単なカートリッジ・フィルタ(例えば80ミクロンで洗浄できるフィルター)を用いても良い。このとき、フィルターの効果を維持するために、設置とメンテナンスは説明書の指示に従って行うようにするが、もっとも確実な方法は、あらかじめ雨水の水質を検査し、用途にあわせてどの水処理方法を適用するべきか、専門家のアドバイスをもらうことである。

 

 

<安全管理>

雨水システムを設置したら、水源が上水道ではないことから、その特性について明確に示すサインが必要となる。次に示すのは、その一例である。

雨水システムの水栓脇に貼る飲用禁止のサイン。(ニュージランド)

逆流防止器具の設置済を表すサイン。(ニュージランド)

 

<建築側の承認の必要性>

  • 一般に、庭への潅水をするための雨水タンクには、建築的な申請は必要としないが、開発の場合に下水システムへの汚雨水流入には確認申請の類の許可が必要である。給排水設備に雨水集水システムを接続したいならば、後からの付け足しであっても建築側の承認が必要だろう。

  • バックアップとして本給水系統に接続する場合には、逆流防止装置が必要である。

  • 25,000リットル以上の処理能力のタンクは、地面に直接設置する。

  • 2,000リットル以上の処理能力のタンクは、地面から2m以上上に設置する。

  • 500リットル以上の処理能力のタンクは、地面から4m以上上に設置する。

 

 


雨水の貯水利用についてのチェックリスト(まとめ)

屋根
□ 無害な無鉛の屋根塗料を使用した屋根かどうか確認する。

□ 屋根に雨による傷みと思われるものは生じていないか。

□ ルーフドレーンの詰まりと材の劣化を定期的に清掃、チェックする。

集水管

□ 無鉛材料であるか。劣化はないか。

タンク
□  定期的に貯槽をチェックする。昆虫やげっ歯類が入らないように、また子どもの安  全のために、常にふたが安全に閉まった状態であることを確認する。
□ 異物や落ち葉、汚れが入らないよう、定期的にタンクと樋を洗浄する。
□ 藻の繁殖を防ぐために、光を通さない材質を用いたタンクにする。 
□ 雨水の検査と水質改善のために、雨水センサーと切り替え電磁弁による初期雨水
  除去システムを設置することも検討する。

□ 水質汚染を防ぐには、タンクの水を毎年1回塩素殺菌する方法もある。
□ 給排水設備に逆流防止の措置がとられているか確認する。
  (必要な場合には建築側の承諾を得る)

□ 定期的な清掃を意図した、清掃しやすい構造であることを確認する。

フィルター器具

□ 劣化や目詰まりはないか確認、洗浄する。劣化部材は交換する。

安全性への配慮
水に色がついていたり、香りがするなど、水質が以前と比べて少しでもおかしいと感じたら、専門の機関と連絡をとり、菜園への灌水にはその水を使用しないようにする。

 

 


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