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堆肥づくりの5つの要因
堆肥づくり

 

堆肥づくりの5つの要因

 

堆肥づくりとは科学の力である。効率的かつ快適に行うとするなら、基礎的な科学への理解が必要である。

 


堆肥づくりを失敗する人と成功する人がいる。成功と失敗の違いはなんだろうか。
一般に、「堆肥が臭い」とか「腐った臭いがする」「虫が出る」というネガティブな反応が出てしまった場合、人はそれを失敗したと言う。もともと堆肥というのは「腐った後にできたもの」とも言えるので、本来ならばどのようなものができても、それが臭くても見た目が悪くても、結果的には間違ってはいないし、効果がないかと言えばそうではない。とはいえ、我々の大多数は、快適な堆肥づくりを目指すことが多い。つまり、腐った臭いも何も不快な現象を伴わない作り方でできた堆肥を好むのである。

 

好気性堆肥

作業快適性のためには、堆肥材料が主に有酸素(好気性)微生物により分解されるような、堆肥づくりをすることが求められる、すなわち好気性堆肥を作ることである。ちなみに、皆が苦手とする臭い堆肥は嫌気性堆肥なのであるが、好気性には好気性の、嫌気性には嫌気性の良さがあり、片方が他方より優れているとは一概に言うことができない。ただしここでは、上述の理由から堆肥づくりを身近なものに感じられる、好気性堆肥づくりについてとりあげる。(以下堆肥づくりと言う)嫌気性堆肥の効能や作り方については、別機会に説明する。

好気性微生物による分解が進むと、材料は発熱し、熱の中で分解が進む。熱が出るので分解は発酵とも言う。堆肥の山の内部が熱くなるのはこのためである。熱は60度にも達するが、我々は空気を媒体にそれを感じるので、触感的には思ったほど熱くない。この熱で雑草の種子や病原菌は焼き殺され、悪臭は発生しない。また、できあがるのも早い。では、好気性分解を上手く進めるために、制御しなければならない5つの変数(要因)について述べる。以下の5つのことは、科学的な事柄で、そうすべき理由がきちんとある。今まで何となく作っていたであろう堆肥には科学の力が働いている。ならばそれを効率的に使おうではないか・・・堆肥をこの機会に科学的な目で見つめ直したいものである。

 


1.窒素)と炭素)のバランス

堆肥づくりは、有機物の分解を人為的に制御しながら行うことである。その作業はまず、材料の適切な配合から始めよう。材料は本来、有機物であれば何でもよいのであるが、臭いや管理の難しさを避けるために、庭や台所のゴミで植物性のものを中心に集める。材料には大きく2つの種類がある。新鮮な材料と乾燥した材料である。前者はその色から、緑の材料と呼ばれ、芝の刈草や野菜くず、新鮮な葉・・などがこれにあたる。後者はその色から茶の材料と呼ばれ、乾燥した落葉やウッドチップ、枝・・などがこれにあたる。そして「緑」の材料は窒素を多く含み、「茶」の材料は炭素を多く含み、窒素はほとんど含まない。この2種類の材料を好ましい比率で混合すると、堆肥化のプロセスが早く進行し、(例えば窒素肥料を加えるなどの)余分な作業をせずに理想的な堆肥ができあがる。もっとも、これには経験と忍耐が必要であり、それが堆肥づくりが芸術科学たる所以ともなっている。また、「緑」と「茶」という考え方以外にも、多くの材料を混ぜる、すなわち、材料の多様化というのも、確かな理由は分からないが、よい堆肥になりやすい。

( 注意点)窒素と炭素のバランスにこだわらなくとも堆肥はできる。今までどおり落ち葉を重ねておいても、堆肥はできる。ここで炭素窒素比にこだわるのは、作業効率(早くできる)と品質(良い物ができる)ためである。

 

2. 粒径

材料は、大きめの粒やチップあるいは細片状に細かく切り刻む。これで、微生物が食べることのできる表面積が増える。材料が小片になるほど、堆肥は均質となり、品質も安定する。微生物が食べやすく、また、増えやすいので、堆肥化(分解)が早く進み、材料の山の内部は高温適温で維持されるようになる。しかし、材料をあまりに小さくしすぎない。小さくしすぎると材料と材料の間の空気が材料自体の重さで押しつぶされて抜けてしまい、通気性が悪くなる。そうすると好気性微生物が減ってしまう。ただ、5センチ以上のものは切りそろえ、5ミリ以上の太さの枝は入れないように、また、新聞紙は裁断していれるようにすればよい。

 

3.水分含有率

堆肥材料の山に住む微生物は、生存のために適度な水分を必要とする。水は、堆肥の山の中で物質の移動を助ける重要な要素である。つまり、堆肥材料中の養分に微生物がアクセスできるように水が助けている。有機材料はそれぞれが元々ある程度の水分を含んでいるので、新鮮なものならば、材料を積み上げればその水分だけでも十分であるが、材料が乾燥しきっているとき、乾燥材料が多いとき、少し水が足りないと思えるときには、わざわざ水をかけることも必要となる。ただし、水が多すぎると嫌気状態となり、嫌な臭いとともに遅い分解が進む。こうならずに、分解は有用微生物が活性化する好気性のものとするため、与える水分は少なめ、間違ってもホースでジャージャーかけずに、じょうろなどでほんのお湿り程度、少ないかなと思える位、くれぐれも過度にならないように注意する。

 

4.酸素の流量

材料をつみあげた山は、切り返して積み上げなおす。容器の中に入っている場合でも、かき混ぜる。周辺にあった材料を中心に、中心を外に、上を下に、下を上に、切り返し、ウッドチップや裁断した新聞紙のようなかさばる材料が混じっていれば、山の通気を良くしてくれる。通気性が確保されている(好気)状態では、嫌気状態よりも分解がより速く進む。しかし、酸素を与えすぎると、山が乾燥しすぎ堆肥化を妨げることになるので、注意する。

 

5.温度

微生物が最適の活動をする温度範囲がある。堆肥材料の山の中心がこの範囲の温度に保たれているのならば、堆肥化は促進され、熱が病原体や雑草種子を焼き殺す。堆肥化に最適な温度範囲は、約54〜70度であり、通常であれば微生物の活動は、堆肥の山の中心部の温度を少なくとも60度まで上昇させる。もし温度が上昇しなければ、嫌気状態となり、つまり腐敗が発生する。しかも分解速度も遅く、その状態に悩まされることがずっと続く。そうならない秘訣は、しかし、温度管理については、前の4つの要因をコントロールできていれば、適温が保たれるはずである。

注)冬の時期は温度はやや低めとなる。ただし、密閉容器ではこのかぎりではない。


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