![]()
日本において、住宅開発や個人邸あるいは公共や商業施設にとって、水に対する全体の意識は、全体の20%にも満たないようだ。しかし「水」は、今後、環境や生態系、我々の生活に様々な影響をあたえ、あるいは影響を受けるという意味で、世界共通の社会問題として議論され始めている。その中でも低影響開発(LID)における「水」は、最重要課題である。一方で、「灌水」は、庭や農業において、もっとも身近な問題でもある。この「灌水の論考」は、米国で議論され検証されてきたことを再考察しながら、これからの「灌水」に対する興味と実効性を啓発することを目的としている。特に、イリゲーション協会(Irrigation Association IA:本部アメリカ)の資料協力をもとに、灌水システムの現状と評価、あるいは活用と技術、また、技術者の育成について探るものである。

Photo: Rain Bird Corp.
今年2月、カリフォルニア委員会は、大旱魃に立ち向かうために、スマートコントローラを要求する水技術の現状を実施した。
住宅ブームが去った今、我々に残されたものといえば、新規開発あるいは既存の改装に関わらず、灌水システムの失敗の跡だけである。そして同時にそれは、灌水に関する不足のたんなる序章に過ぎなかった。20年の間、何百万というシングルファミリーやクラスター(集団)、タウンホームなどが米国で建設されてきたが、それらはどれも維持管理が必要な素敵な芝生や草花を備えていた。そしてその方向に沿って、灌水システムはなくてはならないオプションになったいった。電動で扉の開く車庫のように、皆が新しい家の標準として、自動のスプリンクラーを持たなければならなくなった。
この需要に応えるために、新しくてスマートでデータをエンコード化してくれる灌水制御製品が、屋外に設置される型として生み出され、見る見るうちに進化し、ディベロッパーの計画に加えられるようになった。しかし、この間、何の条令も基準も取締り団体によって作られてこなかったために、ランドスケープ灌水設計、設置、操作そして技術の実践が急速に展開する中で、灌水システムの質を保証したり、標準化したりすることは、ほとんどなされていない。
その結果どうなったのだろうか?
ティモシー・マローリーは、自分がほぼ毎日ランドスケープに接しているという現場における事例から、ここ10年間に設置された何千という灌水システムの性能は、…とても貧弱なものであると観察している。彼は、ミネソタ州プリモウスのイリゲーションコンサルタンツ&コントロール,Incの会長であり、EPAのウォーターセンスパートナー(WaterSense Partner)でもある人物である。
一方、灌水技術はどんどん増殖し急速に変化している。このため、その進化のペースに追いついて自らの技術標準を維持することの難しい灌水実践者もいる。
灌水の設置に免許がいるのはごくわずかな地域のみで、それ以外は不要である。適切な灌水スケジュールやメンテナンス実践を行う上で必要な知識などに対する、既存の業者やエンドユーザー向けの訓練もない。というのは、マローリーの観察である。マローリーは、イリゲーション協会(IA)の委員会とミネソタナーセリー&ランドスケープ協会につとめており、IAの全米アンバサダープログラムという最良の実践を推進するプログラムの議長もつとめているのだが、彼は、灌水の実践に関して、期待はずれな結果が出るのは、ほぼ必然的であると付け加えていた。
問題は恐らく、新しい住宅計画の中ではより多く明らかになっているはずだと、マローリーは思っている。こうした住宅のディベロッパーは、「当たり前と言えばそうなのだが、適切な設計と設置技術を実践するべき人として灌水器具の売り手側の設置者をあてにしている」と、彼は言う。残念なことに、灌水ビジネスは、いつもこの種の期待にみまわれているのだ。
灌水システムの不足は、一方で、適切な方法では顕著にならずに、水分の過剰や、時には不可解だが乾燥地域とともに、曖昧に現れてくる。たぶん後になって、ディベロッパーが開発した家々を売り払った後、オーナーズアソシエーション(町内会のような組織)がその地を引き継いだ後に、灌水の諸問題の重大さがあらわになってくるはずである。今分かっている材料を比較して言えることは、住宅オーナーの知識の欠如、あるいは、適切な指示がなかったことが誤用につながるということが、いかにもありそうだということである。このような、水の過剰使用を改めたり、根に発生した問題を処理することに対する、住宅売主たちの準備のなさや無関心を改めさせるところからはじめるべきだとマローリーは言っている。
灌水システムでは元来、あと知恵、正式な教育、免許下付その他…といった懸命な処置が、正しい設計や設置、操作を保証するのに役立つとして必要とされてきた。しかし、マローリーは、灌水の普及増について、このような活動を後押ししているコミュニティと今更話すようなことは何もない。と言う。
灌水の普及は、技術それ自身が、基本的に、要求された結果を達成することを得意にしているという事実によるものである。「適切に設計されて、設置されて、操作された灌水システムは、大変に価値のあるツールなのである。」と、マローリーは言う。スマートタイマーは、ここ10年の間に導入されたが、一般に、これは適切な水やりについての憶測を排除し、システムを操作しさえすれば、誰に対しても効率的な利用が保証されている」のだそうだ。
1 2





