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ドリップ潅漑は、マイクロ灌漑システムのひとつで、収穫量を増加させ、水分要求量と労働の両方を軽減するため、人気がある。そのコンセプトは、植物に連続的にほぼ最適の水を供給することである。これは、洪水灌漑やスプリンクラー散水のように、庭全体に水を供給する代わりに、個々の植物に直接水を与えるものである。
ドリップ灌漑によるウエットプロフィール(水分浸出断面図)は、図1で示されるように植物の根域中で発達し、その形状は土壌特性に依存する。ドリップ潅漑は、植物の根域だけが水分を受け取るので、水を節約し、エミッターの作物の畝と畝の間のエリアは乾燥していて、偶発的な降水からのみ水分を受け取るという理想的な状態を作り出す。そして適正量が灌漑されているならば、根域よりも深い浸透によって失われる水はほとんどない。
根域以下に浸出した水は、最終的に地下水位へと達し、地下水を涵養するが、植物にとっては損失となる。ただ、土壌断面から塩類をろ過浸透または除去するので、多少は植物の健康に役立つと言えなくもない。しかし、浸出は同様に栄養物も除去するため、最小限にすべきであり、ドリップ潅漑ならば、容易にこれを達成することができる。

図1:理想化されたエミッターラインまたはエミッターから
下に広がるウエットプロフィール(水分浸透断面図)
設備と方法論
ドリップ潅漑システムは、芝生へのスプリンクラー散水システムと同じくらい容易に自動にできる。少し考慮すれば、同じコントローラーでドリップ・システムと芝生散水システムの両方をコントロールすることができる。コントローラーとは、あらかじめセットしておいた時刻が来たら、電磁弁を開閉する時計である。 ドリップ灌漑システムに特徴的なヘッド部(主要コントロール部)は、一般に、水ため・(ポンプ)・コントローラー・フィルター・肥料注入器・電磁弁・圧力調整弁(減圧弁)で構成される。このうちの幾つか()で示した部分は、住宅用ではオプションとなり、状況によって加えられる。通常の都市用水(水道)が利用できる場合は、水ため・ポンプを省略でき、理論上はフィルターさえも省略してもかまわない。(通常は、フィルターは備えのためにやはり設置する。)フィルターの水準、つまり、必要とされるろ過の程度は、水質と用いるエミッター(吐水部品)の種類に応じて決まる。 住宅庭園でのドリップ灌漑システムは、供給されているガーデン給水栓またはホースから始める。ガーデン・ホースとドリップチューブ主管とは、ネジ山が付いていてねじ込む式のものや、滑らせてはめ込む式のもの、コネクター(接続部品)やスリップ・コネクターで接続する。
ドリップ潅漑用のエミッターには、2つの種類がある。 1つは主として条植作物のためのホース状のもので、ホースに沿って等しい間隔でエミッターが埋め込まれているもの、もしくはホースの壁に孔があいていて水を排出するもの、いずれもエミッター・ホース(ドリップチューブ)と呼ばれる。また、ホースが多孔質でできたソーカーホース(水がにじみでるホース)というのもある。灌漑効率から言えば、できるだけ、前者のうちの圧力補正がされどのエミッターからも定流量が保証されているものが好ましい。2つめの種類は、主として樹木やつる植物のような、単位当たり比較的大きな面積を緑被し、一定の間隔で配置された植物や作物のためのもので、これは個々の独立したエミッターを株周辺へと配置する。このようなエミッターはピンポイント的に使用するもので、ドリッパーとも呼ばれる。
一般的にはひとつの敷地内で、両方の種類を併用することも多いが、小さな庭ならば、エミッター・ホースを使用するのが、作業効率よくもっとも経済的である。
エミッター・ホースは、1~10年間の耐用年数に応じて、その価格はさまざまである。独立して植えられている植物に用いるドリッパーの価格は1個当たり百数十円程度である。後者は、もし不十分なろ過により詰まりが生じないと仮定すると、その耐久性は高い。
ただ、1つのシステム内に、違う種類のエミッターが併用されていると、1つ以上の圧力調整弁を使用しなければならないことがある。
どのくらい長く潅漑するべきか
すべての灌漑の潅漑時間は、エミッターからの吐水量に依存する。吐水量はシステムの運転圧に依存する。例えば、あるエミッターが、1時間につき約3.8ℓの吐水量を持っているとすると、トマトに1日につき7.6ℓの水を与えるためには、2時間連続して灌漑するか、1時間づつ2回潅漑することになる。
他の潅漑方法もそうであるように、ドリップ潅漑にもその限界がある。しかし、その限界のなかでもガーデナーは、適切に用いることで、今よりもはるかに高い収穫量、よりよい品質の作物を生みだし、水や肥料、労働を節約することができる。






