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John Martin:ジョン・マーチン (1789-1854)

ソドムとゴモラの破壊(1852年)
136.3 x 212.3 cm; oil on canvas
Exhibition curated by the National Gallery, London
まるで大きな開口部を持つ洞窟のように、赤く溶解した溶岩と火災、まぶしい白色光が都市を包み、倒れて砕ける様を照らしている。
旧約聖書(創世記19:1-36)に書かれた、罪悪の町ソドム*とゴモラ**の破壊。ヘブライ人の指導者ロトとその家族は、立ち止まらずにふり返って見ないという条件で、町が滅びる前に逃げることを許される。しかし、妻は振り返ってしまい塩の柱になってしまう。この題材を基にマーチンは、稲妻による刺激の中で、逃げるロト、引き返す妻を照らし出す。
ソドムとゴモラの町は、死海湖底に沈んだとも、南岸に実在した(現在は遺跡がその跡を留めている)とも言われるが、硫黄と火で滅亡したと旧約聖書は伝えている。現代にこれを読み解くと、実際には、地震や地震に伴う地盤の変化(隆起と沈降)、有害物質の噴出、噴火などが活発な地域のため、これらが複合して襲いかかったのではないかと考えられている。気象は一見関係ないように見えるが、死海を死海たらしめるのは、太陽の強い光であり、こうした環境を創り上げたのは気象なのである。
天変地異、気象災害の多発と都市の滅亡が結び付いているこの主題を見るとき、今の世が何となく似ていると考えてしまうのは、気のせいだろうか。
その時あなたや私は、振り返らずに逃げ出すのか、それとも(栄華を)振り返って滅びてしまうのだろうか。いや、その前に何か防ぐ手だてを考えようとするのではないだろうか。
*ソドム=死海南岸にあった古都市; 罪悪のため神に滅ぼされたといわれる。
**ゴモラ =罪悪の町; Sodom とともに神に滅ぼされた〔聖書〕。
ジョン・マーチン
狂気のマーチンと呼ばれた英国の画家。彼は、ちっぽけな人間が自然力によって圧倒される姿を描くのを得意とし、古典と聖書の中に題材を求めたことで有名である。マーチンの燃えるような想像力と物の見方、劇的な効果を持つ画力とカンバスに広がる広大な(奥行きのある)構成には驚きを感じる。彼の絵画を見るのは、舞台をみるようなものだと思う。
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