|
都市におけるヒートアイランドは年々激しくなっている。この現象は、農村の近隣地帯よりも都市とその郊外を暑く高温にする。高温は、ピーク時の冷房用エネルギー需要を増大させ、そのコストを押し上げ、大気汚染や熱に関連する病気を増加させるなど、地域社会に対してさまざまな影響を与えている。
ヒートアイランドとは何か
都市と郊外や近隣の農村地帯を含むある一定の地域について気温の等値線を記入すると、都市部の気温が高いために、都市部の等値線が他の地域から独立して海洋に浮かぶ島のような形になった。このため、都市の高温部をヒートアイランドと呼ぶようになった。
ヒートアイランドは、都市の気温と地表温度が、近隣の農村地帯よりも高くなる現象である。東京では、都市と郊外は、その周囲の自然植被に覆われた土地よりも、気温が最大で10℃高くなっている。また、湿度や風など他の気象要素も都市部とそうでない地域では、差異が見られる。
ヒートアイランドはどのように発生するのか
ヒートアイランドは主に、都市の土地の被覆が、植生から舗装や建築物、他のインフラストラクチャーに取って代わられたことにより発生する。さらに次のような幾つかの影響が重なり合って発生すると考えられている。
- 樹木と植生がなくなることにより、日陰と蒸発散による自然の冷却効果が最小限となった。
- 建築物、舗装道路などの蓄熱により、地表面熱収支が変化した。
- 高層建築と狭い街路が気流を妨げ、その間に大気を留めて熱めるようになった。
- 自動車や工場の燃料消費による人工熱と空調の余熱が、周囲の環境を暖め、ヒートアイランド現象を悪化させる。
- 燃料消費による大量の汚染物質の放出とそれによって都市の温室効果が促進した。
こうした要因に加えて、ヒートアイランドの激しさは、その地域の天候や気候、近接する海や湖などの水体の有無と地形によって決まる。このヒートアイランドを測定することは、それぞれの要因がこの現象にいかなる影響を及ぼしているのかを判断するのに役に立つことになる。
ヒートアイランドはいつ発生するか
ヒートアイランドは一年中発生する。都市と郊外と農村の温度差は、一日のうちでは夜に大きく、一年では冬に大きくなる。多くの場合、風のない晴れた夜に最大になり、曇りの日には小さくなる。これは、郊外や農村では日没後の気温が都市より速く低下するのに対して、都市には、道路や建築物、他の構造物などによって蓄積された熱の多くが残存するからである。その結果、都市と近郊の最大の温度差は、一般に日没後3〜5時間のうちに生じている。
ヒートアイランドの緩和対策
ヒートアイランドは、エネルギー資源を切迫させたり、我々の不快指数を増加させるばかりか、都市の生態系を変化させてしまう可能性をはらんでいる。そこでヒートアイランドを緩和する戦略が必要となってくるが、地域社会ができることに、例えば次のようなものがある。
- 樹木や植物を植える
- 冷たい屋根や植栽による緑の屋根の設置
- 冷たい舗装材料への切り替え
ヒートアイランドを緩和する戦略が効をなすかどうかは、いくつかの要因により決定されるが、中でも、土地利用の様式、道路や建築物で使用される素材、都市の緑化率などの要因は、意思決定者によって直接左右されることがらである。つまり、ヒートアイランドの緩和政策やプログラムが最大の効力を発揮するには、官民が一体となって取り組むことがかかせない。しかし、まずは我々ランドスケープの専門家が自覚を持ち、地域社会に働きかけることが肝要である。
ヒートアイランドの緩和は、環境保全と省エネルギーの達成と密接に関連がある。ヒートアイランド対策とは環境保全や省エネルギーを達成することにほかならない。
植栽によるヒートアイランド緩和
都市の中で樹木や植物に覆われた大地を増やすことは、ヒートアイランド緩和のための、シンプルだが有効な解決策である。
樹木には、この他にも豪雨(ストームウォーター)流出を減らすなどの多くの利点がある。緑陰樹はまた、家と建築物の効率的なエネルギー使用に著しく貢献する。科学者は、戦略的に樹木と植物を植えることにより、冷房のためのエネルギー消費量を最大で25%減らすことができると推測している。
もしかしたら多くの人々はこの結果を聞いても、何の驚きも感じないかもしれない。なぜなら木々は何百年もの間、家を冷やすために用いられてきたものだからである。
|