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気象ジャーナル

 


温室効果ガスの主要排出国と京都議定書

 

気候変動に伴う京都議定書の将来は、世界中の温室効果ガス排出に対して最も大きな割合を占める当事国の手中にある。そうした国々がどれくらい温室効果ガスを排出するのか、また、削減のために何を行っているか、さらに、京都議定書に対するスタンスはどうなのか、我々は注目する。

 

 

米国

当初京都合意がなされたときには、米国は署名してその放出を6%減らすことを約束した。しかし、それ以来、合意から手を引き、そしてその二酸化炭素排出は、1990年のレベルを15%以上も超えるまで増加している。
合意が法律上拘束力のある条約となるためには、1990年に報告されている全排出量の少なくとも55%の責任を共に担う工業化された国々によって批准され、そして、議定書の下で彼らの排出を削減する経済を新興しなければならなかった。米国は全排出の36.1%を占めており、そのため、この55%という数値目標をアメリカの参加なしで成し遂げるのは非常に難しいと考えられていた。しかし、141の国が一致団結し、議定書は2005年2月に発効した。
ジョージWブッシュ大統領は、議定書が、まだ発展途上国自身に排出削減を要求していないことと、米国経済に損害を与えると考えたことから、米国は京都議定書を批准しないと2001年3月に言った。彼は、強要された目標よりむしろ自発的な排出縮小と、より汚染されていないテクノロジーの開発によってエネルギー効率が改良されることを支持すると言っている。

 

欧州連合(EU)

欧州連合EUに加盟する15州全ては、2002年5月に京都協定を批准した。EUは、議定書の最も熱心な支持者であり、それが米国のコミットなしでも発効することができるように、ロシア、日本とカナダのような国々に京都議定書を批准するよう圧力をかけた。EU は一貫して京都議定書の厳しい適用に賛成しているが、それは、国々が他国の利用料金を払うことによって部分的に自国の排出削減目標を達成するのを許す、いわゆる「柔軟性のあるメカニズム」の使用を制限したかったためである。EUは、また、汚染を吸収する森や他の炭素の「シンク」の広範囲にわたる使用に反対したが、2001年のボンでの会談では問題に関する相当な根拠を与えている。
しかし、京都議定書に対するその厳しい姿勢にもかかわらず、EU自身は、若干目標数値から離れた道を歩んでいる。EUは、全温室効果ガス排出を2008〜2012年までの間に、1990年代のレベルから8%削減することを誓約しているがしかし、2002年までに、彼らは2.9%を削減したのみであり、しかも、CO2の排出はわずかに上昇している。EUのうち4つの国だけは、自身の目標を達成する軌道上にある。

 

中国

中国は世界で2番目に大きな温室効果ガスの排出源であるが、開発途上国なのでその排出量を削減することはまだ要求されていない。世界人口の第5位を占める中国では、温室効果ガス排出は増加し、工業化された国によっておこるどのような削減も小さくなるはずである。平均的な中国人は、平均的な米国市民が使用するエネルギーのわずか10-15%しか消費しない、しかし、多くのアナリストは、高速で発展する経済の下で、中国の全排出量が今世紀半ばまでには、アメリカに追いつくと予想している。化石燃料は主な役割を演ずる−中国は世界最大の石炭生産者である、そして、石油の消費高はこの20年で二倍になった。急激な成長が発電を追い越したため、中国は2004年に電力不足に直面した。

しかし、国連の数字は利用できないけれども、アナリストは、主に効率性の向上とより遅い経済成長という理由から、1990年代後半の間、排出における中国の削減の要求をバックアップする証拠があると言う。中国の指導者は、気候変動が彼らの社会を荒廃させるかもしれないと認め、2002年に京都議定書に批准した。2004年に北京は、2010年までに再生可能な資源からその電力の10%を生み出すという計画を公表した。しかし、この国が国際的に課された排出制限に同意するかどうか、まったく明らかではない。

 

ロシア

ロシアは、2004年11月に京都議定書を批准した。これは条約を法的に拘束力のあるものとする重大な動きであった。議定書の発効には、少なくとも55%の温室効果ガス排出を占めている国々による批准が必要であったため、ロシアの批准は不可欠であった。ロシアの参加により、この目標はただちに満たされた。
ロシアの経済は、1990年以降、産業の活動が途絶え急激に縮小した。そこで排出は、京都議定書が許可したレベルより下のおよそ35%削減した量で維持と見積もられている。ロシアは、短期間のうちに、その使っていない排出権利を議定書が許すより多くを排出したい先進国に売るという、排出権取引を通して、何億ものドルを獲得しそうである。これでは、お金がエネルギー効率プロジェクトのために使われるといわれるかもしれないが、排出を低く保つことをコミットすることは、長期的にはロシアに経済コストをもたらすはずである。

 

日本

世界に主たる経済大国ゆえに、日本は排出削減を約束する京都会議の先導的メンバーである。1990年には全排出量の8.5%を占めていたため、京都合意への支援は米国参加がない状態では重要であった。もし米国がコミットしないのであれば、と議定書を批准するのに以前は乗り気ではなかったが、日本は2002年6月にそれを批准した。日本は、1990年のレベルから6%の排出削減をすることをコミットした、しかし、2002年の数字は、温室効果ガスの全排出量がベースラインの数字を11%超えていることを示した。国は、日本の会社が新しい、汚染のない(清浄な)テクノロジーの市場を獲得することができれば、日本経済が京都合意から利益を得ることができるかもしれないと認めている。

 

インド

インドのような開発途上国は、京都議定書が定めた温室効果ガス排出においていかなる削減も義務づけられていない。しかし、人々の生活水準が上がるにつれて、その排出量は増加すると考えられている。インドは1994年の1年のみ、国連に対して排出数値を提出しているが、現在のインドの排出量は1990年代の排出量よりも50%以上上昇したと推測されている。インドは、その10億人の人々の多くが気候変動により影響を受けやすいと認め、2002年8月に京都議定書に批准している。しかし、インドの経済と人口が中国のように成長し続けるならば、発展途上国の排出責任という厄介な問題が将来の交渉ラウンドにおいて、まもなく取り組まれなければならなくなることは明白である。

 

 


人間の生活が地表面の温度によって影響されるのは確かに真実であるのに対して、GCMは対流圏の観測よって最も検証されている。 GCMはまた、約250ミリバール:12 kmまでの高度とともに増加する温暖化傾向を予測しているのだと気づくべきである [Tett他、1996年] 。それは地上、気球、人工衛星などにかかわらずすべての観測が明らかに不一致である中、10年につき、0.5°C上昇することを予測している。

 


気候モデル

モデル結果と(衛星観測、地上観測に係わらず)温度傾向の観測との間に生じる大きい矛盾は、説明を必要とする。世界で20かそのくらいの気象モデルが、専門家のグループによって開発されているが、彼れらの間でもその主要な矛盾要因については意見が異なる。それらの「気候感度」(GHG強制力が2倍になるための温度増加と定義される)は、1°Cと同じくらい低温から5°Cと同じくらい高温まで変化するが、IPCCは従来の範囲を1.5°C〜4.5°Cとしている。気候モデルを相互比較することにより、主な不確実性は、雲の処理方法と関連があると証明された[Cess et al., 1990, 1996]。雲は空間的に分解できないので、いくつかの流行で指標化されなければならない。多くのモデルでは、雲は温暖化を促進するが、他のモデルでは、雲は冷却効果を生じる。気象モデルの状況は、大気圏で最も重要な温室効果ガスであり放射性強制力の90%以上に影響を与えている水蒸気(WV)に関してさえ、混乱するものである。現在の気候モデルにおいて、水蒸気はポジティブ反応(フィードバック)を生じるととられており、それゆえCO2増加による温暖化効果を増幅すると考えられている。誰もが、CO2の増加や他の原因によって生じる温暖化はより多くの蒸発を生み、したがって、水蒸気濃度がより高くなることにつながるということに同意する。しかし、それは上の対流圏での水蒸気濃度であり、 反応がポジティブであるかどうかを決定する境界層でではない[Lindzen, 1990; Spencer and Braswell, 1998]。この点に関しての見解は広く異なるが、必要なデータが手に入るまでは、この状況が続くだろう。

 


どの気象モデルも可変する太陽の影響を取り入れてはいない。従来、それは太陽の可変性が単に小さすぎるからだと仮定されていたが、現在この見方は変わっている。たとえ放射照度の変化による放射強制力がGHGsからのそれより少ないとしても、紫外線中の太陽の可変性はずっと大きい。現在、紫外線が引き起こすオゾン層の変化や太陽の微粒子放出(「太陽風」)の変化が、重大な気候変化をかわるがわる引き起こすであろう大気循環や雲の生成に、間接的に影響することを示す証拠が出現している[ SvensmarkとFriis-Christensen(1997)]。気候モデルは一般に、農業用の開墾や、ごく最近では世界諸地域で行われる森林再生による大規模表面でのアルベド変化は組み込んでいない。

 

温度傾向に関連する限りモデルにまだ有効性がないとしても、気候上での某かの人間の影響はすでに顕著である。観測は、北半球では毎日の温度幅は減少していることを示すが、おそらく南半球でも同様だろう。[Karl et al., 1991]. これらは、エアゾールや曇の増加に由来するかもしれない。冬季温暖化についてもまた、証拠がある。しかし、気候モデルが高緯度で予測される温暖化を立証する証拠はない。他方、成層圏の冷却が観測されているが、成層圏の冷却は、進みつつあるオゾン枯渇同様に、CO2の増加からも予測されるものとして現れる[Ramaswamy et al., 1996]  さらに、GCMs気候感度の有効性が実証されるまで、人は将来大幅に気温が上昇するという予測を受け入れることはできない。

 

気候変化の影響

気候が気候モデルの予測どおりに変わるならば、熱帯(低緯度)地方と高緯度地方との気温差が減ることになるから、それを考えれば、ひどい嵐に会うのは少なくなると期待するだろう。気候モデルの計算は、ハリケーン、エルニーニョ現象などの気候振動の増加は指摘していないからである。
IPCCの報告書に述べられている観察に基づく証拠によれば、過去50年にわたってハリケーンの回数も強さも低下を示しており[ IPCC、1996、170ページ]; 今後の温暖化が、目に見えて回数や強度に影響を及ぼすとは予想しない[ヘンダーソン・セラーズほか1998 ]。 エルニーニョ現象についての観察は、まだ決定的でない。

海面についてはこれまでどおり、温暖化は海水の熱膨張と氷河の溶解をもたらし、海面の上昇率を上げると仮定されている。確かに千年単位で見れば、海面は着実に上がっている。しかし、人間の影響を測るのにより相応しい10年単位の尺度で調べると、海面上昇は、気温が上昇する間、例えば1900年〜1940年の気温上昇期間でも、ゆっくりとしたものであることがわかる [Singer, 1997] 。明らかに、温暖化と関連して増加した水蒸気は、結果として極地で氷の堆積を増加させ、それゆえに海面を下げる。この結論は、いくつかのモデリング研究でも、また、氷の堆積の直接観測によっても、裏づけられるようである。したがって、将来の温暖化がゆっくりと進めば、進行する海面上昇も速度を落とし、加速しないはずである。

 

潜在的気候温暖化への経済的な影響

経済学者たちは最近、1996年のIPCC(第三作業部会)の経済的影響 (反対を示したものもあるが、これらの研究のいくつかは、海面上昇についてではなく農業について大規模な損失があることを示した。)に関する評価を再調査した。 再試験はアメリカでは、農業でのかなりの増収を示しつつ、他の経済活動にほとんど影響がないことを示した。
彼らは最終的に、いかなる原因からであれ温暖化は、経済損失よりも経済利益を生み出すと結論づけた[Mendelsohn and Neumann, 1999]。上述の海面上昇に関する新しい調査結果は、まだ広くは公表も議論もされていないが、この結論を強化することになるはずである。

 

気候条約が最終的にめざすもの

多くの人々が、気候条約の目的は温室効果ガスの排出縮小であるととらえているが、条約の第2条は、条約の最終目標は大気中の温室効果ガス濃度を、気候システムから人類に由来する危険な干渉を防ぐレベルで安定させることであると述べている。
「これが何を意味するのか、あるいは、温室効果ガスのより高い濃度か低い濃度か、どちらがずっと危険と立証されるのかわからない。」[Singer,1998年]
しかしながら、以前気がついたように、気候は暖かくなるほど安定するようである。

 

結論

政府高官は、気候科学は「確立し」「説得力がある」と繰り返し宣言している。 その明白な関連性は、我々が行うことを十分知り、いかなる更なる調査結果も「政策と無関係」で、気候条約の関係者の国際協議にとって重要でなくなるだろうことである。
私の評論は、別な結論で終わる。すなわち、観測で得られた証拠は、上述した問題である温室効果ガスの増加から生じる温暖化はすべて小さく、気候の自然変化上で見つけるのは難しい、それゆえ取るに足らないものである、ということを示している。加えて、温暖化の影響も高くなったCO2濃度の影響も、人間の活動に有益そうで、特に農業にとって有益なようである。さらに、気候条約の最終目標は未だにはっきりしない、つまり、現在の濃度に比べて、GHGの濃度を高くすべきなのか、低くすべきなのかはっきりしない。そして最後に、(先進工業国のGHG排出を平均5.2%カットすることを要求する)京都議定書は、進行する大気中のGHGの増加を大幅に縮小するには十分でなく、したがって気温への効果も微細である。しかし、IPCC報告の冒頭で指摘されるように、現在のGHG濃度を安定させるには、世界規模でその排出を60-80%カットしなければならない。概して国連による討議は、排出の抑制を強調し、大気から海洋ーそれは地球物理学的調査にとって肥沃な地域であるーへと接収される二酸化炭素のことを無視している[Singer, 1997 pp. 84-87]。

 

IPCCは「数々の証拠の調和は、地球規模の気候に対して顕著な人間の影響があることを示唆する」というあいまいな結論に達した。それは、気候の観測記録に付けられた「指紋」ーすなわち、地球規模の温度パターンについて、観測結果と気候モデルによる計算結果は、時間が経過するにつれ関連性が増しているというーに基づいている。しかし、相互関係のこのポジティブな傾向は、完全にわざわざ1940-1990という時代範囲を選択したことによるもので、気温はほとんどの時期で実際には低下していた。違う範囲を選べば、ゼロまたは否定の傾向を生み出すことができた。IPCC報告が引用する人間の影響を裏づけるもう一つの証拠は、南半球の中層対流圏における上昇する温度傾向を示すことに依存している[IPCC, 1996, Figure 8.7.c., p.428]。 もう一度繰り返すが、これは完全に特定の期間選択と関連がある。[Michaels and Knappenberger, 1996]より完全なデータセットならば、反対の結果(北半球のほうがより大きい温暖化傾向がある)が出る。
1996年のIPCCの報告書が出てからは、ますます多くの研究者が、1940年以前の温暖化の多くあるいはほとんどは、自然な要因によるもので、小氷河時代からの回復期にあたるとの見解を採用している。かなりの部分を温室効果ガスのせいにする研究者もいる [Wigley, Jones, and Raper, 1997]。温度上昇のほとんどは、太陽の可変性に起因すると主張する研究者もいる [Soon et al., 1996]。
もし人がIPCCの使う「指紋」を基準として採用する場合、それはIPCCの表8.10[IPCC1996年、p.433]に見て取ることができる。パターンを対比すれば、1900年〜1940年の重大な温暖化の間ネガティブな傾向が見られるので、人間の影響の存在を否定していることがわかる。

おそらく、人間の影響が顕著であるとすることに対する最も強い論争は、1940年から1975年に観測された寒冷化と、(気象観測気球と衛星データでみられた)1979年以降の温暖傾向の不足に起因する。

INDEX
人間が豪雨をより激しいものにしている
気候変化への人間活動の影響は依然疑わしい
気候変化に関するよくある質問と回答
地球温暖化に対する大気科学者からの声明文
2005年:地球の気候と温暖化の接点
●温室効果ガスの主要排出国と京都議定書
ヒートアイランド
ヒートアイランド測定
地球温暖化
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