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文 小出兼久 2005.12.28

(c)AP通信 人口増加は、ここでは、損害を防がなければならない多くの財産があることを意味する。
科学者はより多くのデータを必要としている。それにはただ時間が必要である。
気候変化が世界的に表面化したため、地球の気候と温暖化との接点が証明されるのではないかと、抗いがたい誘惑のようにささやかれている。
例えば、ブッシュ大統領が温室効果ガス排出物の抑制のための行為を支持する政策を屈しさせたのは、英国の新聞であった。それには、ハリケーン・リタの予想進路が驚くほど異常な図形となって示されていた。これは地球温暖化の影響であると言う。しかし、そうなのだろうか?
大気中における二酸化炭素と他の温室効果ガスの濃度の増大が、より強力なハリケーン、より常習的なハリケーンを生じさせるのだろうか、気象システムを変化させる証拠はどこにあるのだろうか、ということである。確かに2005年は、世界的に、多数のハリケーンが発生しているのだが。
米国ハリケーン・センター(トロピカル・プリディクション・センター)の年間サマリーの8月度におけるコメントは、「これまでのところ2005年には、12の豪雨と4つのハリケーンがあった。この数は、例年のこの時期の4.4つの豪雨と2.1つのハリケーンという、平均値を上回る数字である。しかし、1年間の観察では、それが気候の温暖化によるものだとは認められない」とある。しかし、他方、「最近の研究に基づいて一致した見解は、地球温暖化がハリケーンの頻度に違いを生じさせることは、研究機関が予測し得なかったことである」と、英国気象庁のジュリアン・ヘミングはコメントしている。
ハリケーンの活動は当然、頻度、強度と発生地域が非常に可変的である。大西洋において活動することもあるし、ないこともある。ジュリアン・ヘミングは、現在、大西洋のハリケーン活動期は中頃であるとコメントしている。さらに、「アメリカが強いハリケーンを多く経験したからといって、地球温暖化を用いてリタやカトリーナを説明するのは非常に危険である。」とも、強調している。20世紀からの記録によれば、大西洋上でのハリケーンの発生は、数十年間毎に頻度の変更が暗示されており、1940年代と50年代は活発で、70年代と80年代は少ない。したがって、現在のハリケーン活動期は、1995年に始まったようだと述べている。
熱帯低気圧をハリケーンに変換させる主要な要因は、海面水温である。摂氏約27度でなければならない。したがって世界どこででも、海面水温を上昇させるものはすべて、理論上ハリケーンの発生に影響を及ぼすことになる。
今年9月にサイエンス誌に発表された研究では、ハリケーンとトロピカル・ストームの発生率は過去30年にわたってほぼ一定のままであるが、上昇気流が211km/h(131毎時マイル)以上の風速を備えた強烈なハリケーンがその中に含まれていることが分かっている。その研究計画の指導者であるピーター・ウェブスター博士は、気候変化とハリケーン発生の間に接点があるかもしれないと考える。「私が言えるのは、強烈な上昇気流は恐らく海面水温の上昇によって説明されるということである。」さらに「海面水温の上昇は恐らく地球温暖化の明示であると思う」と伝えた。「解明は進行中である」とジュリアン・ヘミングが言う。
「我々は、衛星からのデータで約35年間をふり返って見ることができる。それ以前の記録は多少信頼性が低く、また、35年はそれほど長期間ではないので、ここから引き出される結論は有限のものとなろう。」
「地球規模の人工衛星が有効となる以前は、記録中にかなりのギャップがあると確信している。豪雨はある海上で生じ、ある海上で止むが、我々はそれを正確には捉えられていなかったのだから。」
大西洋のハリケーン活動を生じさせるプロセスは、完全には解明されていない。ただ、メキシコ湾流(北大西洋海流)の変化の接点として発生する、と世界規模の関連を述べている。
熱帯域の大西洋で、たとえ摂氏1度でも海面水温が変化したら、その気象変化は、ある年に発生するハリケーンの数に変化をもたらすことがあると言う。
また、別のエル・ニーニョ・サザンオシレーションなどの自然気候も循環している。これもハリケーン発生に対して同様な役割を演じているかもしれない。カトリーナとリタの重大な要因は、それらが上陸した場所である。他のハリケーンは、人口の希薄な地域を襲い、その結果、最小の被害ですんだ。これはハリケーンが、気象システム、特に高気圧の位置である亜熱帯高圧帯によって決定され発生するためである。
「大西洋の豪雨は東側で形成され、西側に近づく」とジュリアン・ヘミングが語る。
さらに、ある地点では豪雨は北方へと回転する。例えば1995年は、19の豪雨があった非常に活発な季節だった。しかし亜熱帯高圧帯は、大西洋にまっすぐに伸びず非常に軽く立ち去った。また、多くの豪雨が米国に達する前に北へ向きを変えた。
「昨年、大気圧は大西洋を横切って伸びた。したがって、ハリケーンはさらにその上空の西側に発生した。」イヴァン、ジーン、チャーリー、フランシスなど、ハリケーンはすべて米国を直撃する進路を通過した。

(c)NOAA ハリケーンの米国本土直撃の回数推移
毎年ハリケーンはやって来る。洪水、干ばつ、凍結、熱波は、現在、地球温暖化に関連して生じているとされる。10年前はそうではなかった。気候変化が現在しっかりと公的に、政界でも認知されていると感じているが、それならば気象学者は今、皆が地球温暖化を真面目に受け止めるため、即時の答えを引き出さなければならない重圧の下にあるとも言える。
気候を分析する科学者の中で、英国の研究者は、北半球においての報告書を12月にまとめた。その中で、2005年は最も温暖だったと語っている。
彼は、信頼できる記録が始まったときから、1860年代以来の2番目に温暖であると言う。北半球大西洋で記録された海洋気温は、記録上最も高かった。英国METオフィスとイーストアングリア大学からの情報によれば、今日、人間によって地球温暖化が引き起こされたという現実を立証できるのはほぼ確実だそうである。
報告書は、北半球において2005年の平均気温は、1961年〜1990年の平均気温を摂氏0.65度上回ることを示した。 1998年の数値は強いエル・ニーニョ状況によって膨張したが、2005年は1998年以来の記録として2番目に温暖な年であり、摂氏0.48度上回っていたと言う。
北半球と南半球では大地の割合が異なるために、北半球は南半球よりも速く暖まると科学者は考えている。それは海洋と同様、大気条件にも、より速く反応すると考えられている。 北半球気温は現在10年以上前より摂氏約0.4度高い。
「実際は、北半球大西洋の海面水温は、1880年以来の最も高い温度であることが示されている」とイーストアングリア(UEA)大学の気候調査機関のデービッド・ヴィナー博士は語った。
「平均気温の測定は完全には正確になりえない。我々のチームの計算の誤差は、大体プラスマイナス0.1度である。」
彼は、平均気温の長期傾向は、人間によって引き起こされた地球温暖化の現実を指摘し、明らかに上向きである(急速に最近の十年間以上)と語る。
「我々は正確である、地球温暖化と気候変化に関係がないとする懐疑論者は間違っている。」と伝えている。

(c)NOAA 北半球の気温推移
簡単な物理学である。大気へのより多くの温室効果ガス、地球規模で増える排出量によって、気温は上昇する。しかし、ワシントンDCでは、この解釈をめぐり議論が紛糾した。
「確かに北半球では、2005年は1860年以来最も温暖な年であるが、それが表しているのは数値どおりただそれだけである」と『科学・環境政策プロジェクト』のフレッド・シンガーは伝えた。
「それは、他のどんなものも証明せず、温暖化の原因が排出された温室効果ガスであることを証明するために利用することは明らかにできない。」
確かに、証明するにはより詳しい試験を必要とするだろう。しかし、1860年以来最も温暖な10年のうちの8年間がここ十年間の中で起こっている、これをどう考えればよいのか。私には自明のことと思える。
北半球における1961年〜1990年の年平均気温
特定地域への地球温暖化の影響を予測する新しいモデルが科学者によって展開されている。ノーフォークのイーストアングリア大学(UEA)主導のSTARDEX計画は、ヨーロッパの6つの地域を観測している。英国にベースのあるチームの報告書は、英国では冬季の雨量が激しいが、2100年の英国南東部と北西部では、降雨量が25%増加するだろうということを明らかにしている。UEA研究者は、洪水などの災害に備えるために統計が地元住民を助けると考えている。研究チームは過去40年間にわたり、ヨーロッパにて6つのステーションで気候傾向変動の観測と分析を行い、ケーススタディに利用している。ドイツのライン川、エミリア・ロマーニャ、ギリシア、イベリア半島とアルプス山脈である。
UEA気候調査機関のクレア・グッデス博士は次のように語った。
「我々のモデルは、地球温暖化を縮小する処置が取られない時にヨーロッパの各都市と地域で予測される気象の頻度と大きさの変動幅を計測する。」
2005年の一年間。観測を論理的あるいは科学的に使うには、難しい問題が多くあることを学んできた。そのことは、我々自身の不安と方向性に対する課題として残る。しかし、今年1年の積み重ねが、次世代のランドスケープに大きな意味を持つことも確かなことではないかと思っている。これは身をもって経験した私の回答である。
我々は、農業や産業の成長減少を最小限にし、かつ、農民や市場向け菜園経営者、花卉園芸栽培者が利益を最大限にするのを助けることを望む。コスト効率の良いサービスを提供する気象観測であってほしいと願う。
気象が農業作物に影響を及ぼすことは言うまでも無い。それは健康な作物と家畜の保証にとって不可欠のはずだ。
我々の目標は、情報伝達による企業支援である。正確で、信頼でき、容易に理解できる気象データを提供することにある。究極のゴールは、多くの人たちが生産性と収益性を維持するのを助け、気象から受ける何らかのマイナスの影響を最小限にすることである。と、思っている。2006年も続くランドスケープの観測である。
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