グリーンインフラストラクチャー Gi:green infrastructure

公開日 2013年7月29日 最終更新日 2016年10月18日

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雨水とは、硬質舗装面、路面や芝生他の敷地から流れる雨あるいは雪どけ水である。

 

開発の先進地域において舗装と屋根のような不浸透性地表面は、雨が地面に自然浸透することを妨げ、その代りに、排水溝、雨水管、下水システムへと流出させる。これは次のような負の影響を及ぼす可能性がある。

 

  • 下流での浸水の発生
  • 側岸の浸食
  • 浸食に伴う河川の混濁度の上昇により、沈殿物が上へと撹拌されて生じたぬかるみがそれまでの生物生息地を破壊
  • 流出ハイドログラフ(時間にわたって小川の流量を表示するグラフ)の雨天時越流水の変化
  • インフラストラクチャーの破損
  • 汚染された小川そして河川と沿岸水

 

 

従来の雨水管理計画は、合流式あるいは分流式下水道のそれぞれのネットワーク内に雨水を集め、敷地からできるだけ速く輸送することに特化している。それらの雨水は大規模な雨水管理施設(くぼ地)または下水処理場へと送られて処理されるか、そのまま放出されるのが常であった。

 

しかし、低影響開発(LID)ならば、雨天時の敷地による雨水管理計画を含んでいる。種々様々な専門技術を雨水流出の発生源へ向け、雨天時のランドスケープ計画を注意深く制御するよう精力を傾ける。低影響開発は、雨水が流出したその発生源で、小規模処理を通じて自然に存在する流域を修復することを目標としている。 それは、水文学的に開発前条件の真似をする機能設備を作ることである。都市の基盤を低影響開発の手法で造った際に、それらはグリーンインフラストラクチャーと呼ばれるが、雨天時のグリーンインフラストラクチャーは、雨水を捕らえて浸透や蒸発散させ、かつ再使用をすることで、自然界に水文機能を維持あるいは修復する技術を内包している。

 

 

グリーンインフラストラクチャーの利益

 
グリーンインフラストラクチャーは、環境利益、経済利益、人間に及ぼす健康利益などをもたらすが、その多くは互いに密接な関連性を持っている。 これらは、緑地が限定的で環境被害がより広範囲で深刻な都心と郊外地区いずれの地域であっても重要なものである。
具体的には、次のようなものがある。

 

雨水流出の遅延と流出量の削減:グリーンインフラストラクチャーは、植物の吸収能力と土壌の自然保定能力の利用によって、雨水の流出量と最大流量を縮小する。また、敷地内に地被植物を増やすことで雨水浸透率が上昇し、流出量の削減に貢献する。

 

地下水の涵養の増強:グリーンインフラストラクチャーの能力ひとつである自然浸透能力は、地下水の帯水層が「涵養」される率を改善することがある。地下水は河川の正常な基底流量率を維持するのに必要な水量の約40%を提供している。地下水の涵養の増強は、また、民間と公共による飲料水供給量を押し上げることがある。

 

雨水中の汚染物質を削減:グリーンインフラストラクチャーの手法は、その発生源に近い場所で雨水流出を地中へ浸透させることで、汚染物質が地域の地表水へ運ばれて流入するのを防ぐ。土壌に雨水が浸透すれば、植物と微生物は、場所を問わずに雨中の汚染物質を自然にろ過し、分解することができる。

 

下水道からのオーバーフローの削減:グリーンインフラストラクチャーは、植物と土壌の自然保定と浸透能力を利用して、雨水流出量を減らす。また、その流出速度を遅らせることによって下水管でオーバーフロー事象が頻発しないように制限する。

 

炭素隔離(固定)の増加:グリーンインフラストラクチャー・アプローチの一部である植物と土壌は大気中の二酸化炭素を捕らえ、光合成と他のナチュラルプロセスによって大気から取り除くため、炭素源隔離装置としての役割を果たす。

 

ヒートアイランド現象緩和と縮小されたエネルギー需要:都市に自然に存在する樹木などの植物に被覆された地面が、暑さを吸収して保有する舗装や建築物によって大きな割合で代替されると、ヒートアイランド現象が生じる。緑による冷却効果が効かなくなるからである。高層建築と路面は、自動車、工場、空調装置などと同様に廃熱を生じさせたり、太陽熱を吸収して保有したりすることで内部に熱を集中させてしまう。

 

都市緑地と植物が増えることで、グリーンインフラストラクチャーは、ヒートアイランド現象による影響を緩和し、冷却などにかかるエネルギー需要を縮小するのに役立つ。樹木やグリーンルーフおよび他のグリーンインフラストラクチャーはまた、冷暖房にかかるエネルギー需要を低下させることができ、それによって大元となる発電量と二酸化炭素排出量を減少させる。

 

大気質の改善:グリーンインフラストラクチャーは、都市のランドスケープ空間にある樹木や低木および他の植物によって大気の取り込みを容易にする。そうすることで大気質を改善することができる。樹木は、葉の吸着と吸収によって大気を取り込み、汚染物質を吸収し、大気を浄化する。もし樹木などの植物が、コミュニティを通じて広く植えられれば、大気を冷却し、地表面にオゾン汚染(スモッグ)を作る気温依存反応を遅くすることができる。

 

付加的な野生生物生息地(ハビタ)とレクリエーションの場所の提供:遊歩道、自然公園、都市林、湿地および植物で覆われたくぼ地は、すべてレクリエーションの場所と野生生物生息地を提供する。いずれもグリーンインフラストラクチャーのひとつの形である。

 

人間の健康の増強:多くのケーススタディは、緑の繁茂と生長(グリーンインフラストラクチャーの2つの限界成分)が、人間の健康に明確な影響を及ぼすことがあることを示す。最近の研究は、樹木と作物と緑地の存在は、都市の注意欠損と過剰混乱に関連した兆候である都心部の犯罪率を低下させ、より強い連帯感を与え、学業成績を向上させると関連づけている。また同じ研究が、近隣の緑と(アレルギーや喘息などの子供の体質)との関連性についても指摘している。

 

資産価値の上昇:多くのケーススタディは、グリーン・インフラストラクチャーが近隣の資産価値を上昇させることができると示す。例えばフィラデルフィアにおいて、放棄されて見苦しい用地を「清潔な」かつ緑のある景観に変えるという緑空間近代化プログラムは、大きな期待を込められた中で起こり、地域に経済的好影響を及ぼした。空地の改善は、近隣住宅の資産価値を最高で30%まで上昇させることに結びついた。

 

記事協力:EPA