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ゼリスケープガーデンを創造するための基本的な知識・技術の会得を目的とする技術講座。
中でも専門性が高い灌水システムについて、基礎から学んでいきます。
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第4回 水源についてー2 雑用水
前回は水道水から取水した灌水システムへの利用を述べたが、今回は二次的水源である、雑用水の灌水システムへの利用について述べる。
2. 雑用水 (GRAY WATER)
雑用水は中水とも言われ、飲用水以外の用途で、生活用水において比較的水質が低い条件でも使用が可能な水の総称である。
雑用水の区分は
・再処理した生活排水(RECYCLED WATER)
・雨水(RAIN WATER)
の二通りに分けられている。
再処理した生活排水(RECYCLED WATER)
これは再生処理により、用途を限って再利用可能になった水である。通常は、再生設備から水道水とは別の配水管により配水し、主にトイレの洗浄、洗車、庭への灌水などに利用できる。現在、生活排水の再利用を実施しているところは大型施設や、公共施設などが多く、その代表的なところに、東京ディズニーランドや幕張新都心がある。全国的には大規模なもので約2500件、その使用量は年間1.7億�Gとなり、これは生活用水使用量の約1%にあたる。
国土交通省が行った意識調査では、雑用水利用に対する抵抗感は、「トイレや灌水に使うのであれば気にならない」という回答が8割を越す。
現在では、個人住宅ではまだあまり一般的に普及していないが、将来的には上水を使わずに再生水による灌水が大いに期待され、再生設備の技術開発、普及は急務である。
雨水(RAIN WATER)
現在、水道水以外に灌水に用いることのできる雑用水の中で、最も注目され、また利用が促進されつつあるのが雨水である。
その利用方法は、屋根に降った雨水を樋を使って引き込み、フィルター等でゴミを除去し、その後に貯水槽(雨水タンク)に貯水し、利用時にポンプにより加圧して送水するというものである。
<雨水の集水量とタンク>
一番雨水を集水しやすいところは、屋根面である。ゴミも比較的入りにくい。
雨水利用するにあたってまず考えるのが、どの程度の雨水を利用したいのか、できるのかということである。そこで、集水可能な屋根面とその地域の平均降水量から最大集水量を算出して、そこから設置する貯水タンクの容量・形状を利用用途と合わせて決定する目安とする。
雨水集水量を考える資料として次表を参照していただきたい。
集水量の計算
月間集水量
屋根面積�F × 月間降水量�@ = 月間集水量�P
例)東京 60 × 117 = 7000
有効集水量
月間集水量�P × 集水係数 = 有効集水量�P
7000 × 0.7 = 4900

<樋>
既存のたて樋を切断し、継ぎ手を取り付け、ろ過装置へ雨水を引き込む。この樋の部分にろ過装置をあらかじめ組み込んだものも市販されている。
<ろ過装置>
雨水は、天然の水なので本来きれいなのだが、集水の過程において、屋根や樋にたまったゴミや落ち葉、細かい石等が混入するためにそれらを取り除く必要がある。フィルターによって大きなゴミを除去することで、通常十分使用できる状態になるが、さらに細かなゴミなどは、砂ろ過等を行う。砂ろ過は比較的簡単に作れるので導入したい。(次回のフィルター編で詳しく述べる。)
<雨水タンク>
ろ過され再利用可能な状態になった雨水は、タンクに貯蔵して利用する。雨水タンクは市販されているものが多種あり、様々な機能が付いているものもある。使用水量や設置場所等を考慮して選ぶ必要がある。 (詳しくは、製品考察第1回雨水タンクを参照)
<ポンプ(加圧ポンプ)>
雨水利用は、水道水とは別の独立した配水管になるので、送水する圧力をかけるためにポンプを取り付けなければならない。どのポンプを選んだらよいのかは、流量・貯水タンクや配管の高低などから総合的に判断しなければならず、それとポンプの性能を対照する。
ポンプによる水量・水圧はカタログを参考とする。
家庭用ポンプを販売している代表的な業者のWEBサイトは以下の通り。
パナソニック http://panasonic.co.jp/pcc/environment/gp_004.html
日立 http://kadenfan.hitachi.co.jp/pump/
川本製作所 http://www.kawamoto.co.jp/lineup/index.html
加圧された雨水は、ポンプから灌水制御部である電磁弁、二次フィルターに送られる。
雨水利用は、気候変化に依存し、また、その利用形態である灌水回数、灌水面積によっても差はあるが、夏場など水の必要量が増える場合は、水道水と併用することを念頭に、計画を立てることが望ましい。
その他にも河川や湖沼から直接取水し灌水することが農業や工業の分野では行われているが、家庭の灌水においては現実的ではないため省略する。
次回は、ろ過装置(フィルター)について解説する。
参考
国土交通省 土地・水資源局 水資源部
国土交通省 都市・地域整備局 下水道部
東京都水道局
東京都下水道局
雨水利用緑化協会
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