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■第11回 法面緑化
法面とは、山林・道路・ダムや造成地などにおいて掘削したり盛土をすることにより出来た土の傾斜面であり、法面緑化は、この土の傾斜面を植物により被覆し安定させることである。
人間活動は地域の生態系に対してさまざまな影響を与えており、それを修復する手段である緑化の役割は大きい。今や土木的開発行為は、自然環境・景観を復元する技術なしには成し得ない時代、法面緑化の実際とこれからのあるべき姿について検証する。
[日本の環境と法面緑化]
法面緑化は、斜面を植物によって保護し、災害防止や環境保護・景観の向上などの目的で行われる。
国土の68%が森林である山国の日本では、各種の開発行為に伴って多くの法面が造成されているが、法面の緑化に際しては量とともにその質が重要な課題となっている。
道路や住宅団地などの建設事業にともなう造成工事、工場や発電所などの産業開発にともなう環境保全、崩壊地や荒廃した森林の復元、都市緑化など、多くの場面で緑化が求められており、そこにおいては自然保護や生態系の修復などが要請されることが多くなってきている。
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国土交通省河川局砂防部
日本の山地は急峻かつもろい地質で形成されているうえ、梅雨時などに集中して大量の降水に見舞われる。このような条件下では、大量の土砂が短時間のうちに山地から海洋へ流下してしまう。大量の土砂は、時に土砂災害として人間活動に影響を与えてきた。
土砂災害の実態
毎年、豪雨、地震、火山活動等に伴い土砂災害が多発しており、自然災害による死者・行方不明者のうち約半数が土砂災害によるものとなっている。
土砂災害をふせぐには
土砂災害は土石流、地すべり、がけ崩れによる土砂災害、水源部での崩壊などからの土砂流出による下流河川における河床上昇による洪水氾濫災害など、いたる所で多様な形態で発生する。
国土の保全を図り、国民が豊かな暮らしを営めるよう、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策等の推進に関する法律によりソフト対策のほか、砂防法、地すべり等防止法及び急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律により構造物の設置や法面緑化の推進などのハード対策を講じている。

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[ 地球環境改善と法面緑化]
地球規模での緑資源の減少に伴い、砂漠化、CO2の増加に伴う地球温暖化、野生生物種の減少等、地球の環境が悪化しつつある。世界各地で進行しつつある砂漠化による飛砂や土砂流出、土地生産力の低下等を防止し、生態系を回復させることは、人類の共通課題であるとともに、緑化施工方法の開発を試みられている。
中国の乾燥地や荒廃地における、激しい土壌侵食、土地の生産性低下を改善するため、確実・低コスト・自然環境改善能力をもつ「播種」(苗木ではなく、種子を播くこと)による手法を研究し緑化実験を行われている。
関連リンク 信州大学砂防緑化工学研究室 中国での緑化実験プロジェクト
法面緑化の目的
● 法面保護
● 生態系の保全・回復
● 景観の保全・質的向上
● 樹林化によるCO2の固定(地球温暖化防止)
[法面緑化の工法]
土の性状、含水率、傾斜角等の土壌条件、また、防災、景観保全等主たる目的等により様々な工法があり、使用される植物種もいろいろと工夫されてきた。近年は、生態系への配慮等から表土をブロック状に保存し再使用する工法等、郷土産の植物種を使用する工法が多く採用されている。
〇法枠工法
コンクリートなどの枠を固定し土壌基盤を確保し、高木、中木、低木、地被植物などを植栽する。強度は比較的大きい。既に大きくなった樹木を植栽できることにより、法面への植林が早期に完成できる点のメリットが大きい。
四角や円形、あるいは変幻自在な型枠のフレームを法面にあわせて固定ししたりコンクリートの基礎や擁壁に支柱をアンカー等で固定し、編柵をつくり土砂を確保し、樹木を植えたり吹付工と併用したりする。強度が大きいため、道路や開発などの大規模土木工事に用いられることが多い。
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〇吹付工法
緑化基盤材に粘着材、肥料などと共に植物の種子を法面に直接吹き付けるもの。人為的に種子を混ぜるだけでなく、現場にて発生した表土にてその中に含まれる休眠中の天然種子を発芽・生育させるという方法もある。均一な植栽にはなりづらいが、多様な自生種を生育させ生態系に配慮した法面緑化とされている。
厚層吹付工
モルタル吹付け機によりを空気圧送する工法。
バーク堆肥を主原料にピートモスなどを混合したものが主流だが、家畜ふん堆肥を使用したものなどもある。
客土吹付工
泥状の基盤材をポンプ式吹付け機で吹付ける工法。厚層吹付工より比較的安価で、狭い面積でも扱いやすい。厚層吹付よりも口径の小さいホースでの吹付けるため、ふるい分けにより粒形の小さなものが使用される 。 |


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○植生土のう工
網目状の袋に土壌・種・肥料を詰めたもの。
種・肥料付きの袋で、現場で残土を詰めるようにしたものや工場で土を詰め、完成袋としたものがある。ロール状のマットでそのまま法面を覆うものは施工性がよく、比較的狭い面積でも法面緑化がしやすい。
積雪地帯の法面保護にも向き、融雪時の法面崩壊を防ぎ、春先から種子が発芽するものもある。これは、吹付工と違い種子がマット中で保護されることによりより品質が安定するといわれる。
また、植物の種類については牧草やグラウンドカバーが多いが、開発しだいでは花や水生植物などにも応用ができ、災害防止的な法面緑化のみならず、ランドスケープやガーデンに利用されやすく、屋上緑化や特殊な緑化にも応用が期待される。
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今までの製品には、化成肥料や保水材の開発などによるものが、それが科学物質の流出や土壌の水分を必要以上に吸収してしまったりといったことの原因にもなっている。その点を考慮した製品、工法を選択する必要がある。
[法面緑化の植物]
植物の選択は、どういった目的、コスト、斜面条件、最終形態、完成までの年月を求めるかによって変わってくる。一般的な庭園やランドスケープにおいては、下記のような植物が用いられている。
一般的な盛土法面植栽一覧
| 緑化タイプ |
成長形態 |
候補植物 |
短期間の緑化 |
| 1.被覆型緑化 |
葉が上下左右に広がって成長する
根系が表面近くに広く発達し乾燥に強い
広がった根系・ランナー・胞子等からも新しく芽が出るので、 緑の被覆率が高くなる更新していくので半永久的に緑化が可能 |
タマリュウ、 ベニシダ コグマザサ、オカメザサ
フイリヤブラン
ドクダミカメレオン
フイリアマドコロ
ドイツスズラン
クサソテツ、キボウシ |
◎
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| 2.巻つる登はん型緑化 |
植物は上に伸びる
根系が表面近くに広く発達し乾燥に強い
ツルの先端が成長していく |
カロライナジャスミン
ノウゼンカズラ |
○
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| 3.吸着登はん型緑化 |
植物は上(または下)に伸びる
根系が表面近くに広く発達し乾燥に強い
植物の先端が成長していく |
アメリカツルマサキ
ツルアジサイ
ヘデラ・ヘリックス
ヘデラ・カナリエンシス
オオイタビ
キヅタ |
○
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| 4.下垂型緑化 |
植物は下垂する
根系が表面近くに広く発達し乾燥に強い
植物の先端が成長していく |
ツルニチニチソウ
ヒメツルニチニチソウ
ハイビャクシン |
◎
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| 5.低木緑化 |
幹は上部へ伸びる
太い根系が深く入っていくので乾燥に強い
植物上部が大きく成長し重くなる
剪定管理が必要となる場合がある |
ツツジ
サツキ
ヒペリカム・ヒデコート |
△
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| 6.牧草型緑化 |
葉は下垂する
根系が表面近くに広く発達し乾燥に強い
種が落下するので長期間の維持が難しい |
牧草 |
◎
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今まで多く取り入れられてきたのは牧草や芝などの草本類による修景緑化が多かったが、法面緑化の大規模化に伴い、環境保全機能の高い樹林化が推進されつつある。これまで道路の裏面などでよく行われてきた草本類の吹付け工では、普通に見られた芝などが大型の雑草にとってかわり,木本植物の侵入も困難なケースがしばしばある。法面緑化は保護の意味では成功といえるかもしれないが,植生の復元,環境保全の意味では外来種を導入した事も含め成功とは言い難いといえる。
法面緑化においては単に法面に緑を入れるのではなく,どのような緑にするか長期的な観点により最終緑化目標群落を設定する事が重要である。
植物種の不適切な利用による遺伝子攪乱も起こりうる可能性もあると指摘されている。
生物多様性保全の観点から、
(1)移入種の増殖による自生種の生育地消失の問題
(2)移入種と自生種の間の浸透性交雑の問題
(3)外来の系統の導入による在来の地域性系統の遺伝子攪乱
の3つの問題が、緑化の関係者に対して投げかけられている。
本来、自然を切り崩してを行う開発行為によって発生する法面を、人工的に緑化するには将来的な展望を考慮にいれなければならない。防災、景観保全等何を主目的にするかで工法、植物とも大きく選択が変わってくる。仮に地球環境によいからといって、雑多な雑草ばかりは歓迎されないこともあるし、また均一な美しい法面緑化であるからといって強度不足であったり、環境に弊害を与えるといった問題が発生することもある。地域の特性も充分に考慮して、製品・植物の時間経過を計算にいれた配慮が必要となる。
資料提供:
国土交通省河川局砂防部
(株)飛鳥
(株) ネオジャグラス
内外緑化(株)
(株)テザック
エスペックミック
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