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第一部
「当てにしなかったいいものを偶然に発見する才能」
サブテーマ:生活・文化・芸術性に職能として関連性を持ったランドスケープ・建築・空間
●小出総合案内人:では、始めます。
今日は学生さんも大勢見えてるようですが、参加することによって、会話することによってプロの仕事が見られる。資料から出演者の気持ちが分かるのではないかと思います。
●戸田案内人:午前中を担当します戸田と申します。ランドスケープの世界は広くて深くて複雑です。そこで今日は司会というよりは案内人のような気持ちでやるのが適切ではないかと思っています。というわけで案内人です。今日の特色といたしましては、長時間であること、椅子の配置からもわかるように対話形式であること、そして、本音を語る、まあ肩の力を抜いて話そうということであります。4点目として、何かをぶちあげようということは考えておりません。むしろ、今日それぞれのお話の中から、それぞれの方が、新しく課題なり解決策なりを見出してもらえればいいと思っています。
では、まず最初に5分位それぞれの方々にお話をいただき、ひとまわりしましたら付箋紙に1つのキーワードを書いていただき、これは客席にも配りますので、これを聞きたいと言うことを皆さんも書いて回していただきたいと思います。ではまず大橋さんからお願いします。
大橋:みなさん、こんにちは。よくいらっしゃいました。ゴールデンウィークの中日をこのように過ごすのも選択肢のひとつで、最近は選択肢の多様性、インターネットなどの情報の錯綜、一億総評論家ということがあります。本日のテーマである緑の仕事ですけれども、ランドスケープだけでなく農林漁業・観光に携わる方々など多くの方が関わっている。環境は緑と同一に考えられているが、経済成長と環境の破壊は表裏一体で、そんな中で皆さんから問題を出していただく、と、同時に、本音を語る、本質・実態を語っていかなければならないと思っています。マスメディア、インターネット、情報化社会、要は、実体を知らずに言葉だけで全部を知った気になっている、知的生活の弊害をつくづく感じます。私も人生60年、大学から緑の仕事を始めて40年、そのわずかな経験の中で、まだまだ勉強しなければならないこと、未熟な部分もありますが、今日はそれをさらに深めていくということで、皆さんと語り合っていきたいと思います。よろしくどうぞ。活発な意見を出してください。お願いいたします。
金澤:金澤です。私は・・建築家なんですね、バブルの頃は坂倉事務所にいてワシントンホテルなど設計してました。その後独立して、仕事もなく、ま、造園界にも乗り出そうかと・・(笑)建築家なんですけれども西沢文隆というものが所長でおりまして、実測をやっていた。図面がないので、図面を作ろう、と。「建築家なので造園はくわしくないだろう」とそういう話ではなくて、やっぱり外構設計というのではなくて、庭も、古い物というのは(建築とランドスケープの)分け隔てがないわけですから、我々が分かれているということが不自然なんです。で、何を目指しているのかということで、図面にしないとこれからはないだろう。何を目指して物を作っていったらいいのか知りたい、とにかくいろんな古い物に対して知らない、自分の作っている物に対して自信がない、どう作ったらいいか分からない、それじゃあまずい、ですから実測しようということで、実測をしてるわけです。
大林:大林です。施設園芸の生産の3代目です。ちょうど30歳を契機に、たまたま植物工場をめざしていたこともあり、コンピュータで生産するには土を使っていたらできないということで、ヨーロッパからハイドロカルチャーという工法を視察して、日本で17-18年ほど前にハイドロカルチャーによるコンピュータ管理栽培を始めました。で、いろいろあって、使われる分野の成功事例を作ろうと、室内造園ということで独立して3年目に神戸の新しい街が出来るときの9階から12階の空中庭園を手がけました。この経験から室内がらみの緑化を推し進め、今沖縄のリゾートホテルでは1階と3階にハイドロカルチャーでジャングルを作っています。屋上緑化もやっていて、花博では常設展示もしています。
緑化の関係で痛切に感じているのが、メンテナンスの重要性です。我々が農場で生産しますと農場というのは最高の環境なんですね、最高の環境の中で植物を育てるけれども、室内緑化・屋上は最悪の環境。最悪の環境の中で、植物をいかに長持ちさせるかというと、植物をケアしてあげなければ、元気に育たない。植物をケアしてあげることは、相当のケア技術を学んでいかないと、元気で長持ちさせられない。屋上緑化・室内緑化でもそっちに力を入れていこうと。但し、そういう職人ができても、職人がケアに行ってたらコストが高くて認めてもらえないので、今、その地域地域の人々がケアすべきだということで、主婦とか高齢者とか障害者の人たちに、植物をケアして幸せになってもらおうということで、去年からスクールを始めました。
佐々木:佐々木でございます。特徴的なのは、お寺をやって庭をやってる、27-8年やってます。「どうしてお寺と庭をやっているんですか」と良く聞かれますが、自分では、お寺に生まれ庭と出会って、なんということもなかった。朝倉史跡の造園会社に入り、そこの先生の指導を受け、自然に庭の分野に入っていった。昨年小出先生に出会って、庭と自分のやっている分野(僧侶)をあらためて考える仁、両方とも生き物相手であって、両方ともやがて滅んでいくもの、そしてまた、瞬間瞬間で出会っていくっていう形なんで、その辺に自分の全体が放り込まれているのかなと思います。戸惑いもあります。自分で今悩んでいるのは、経験で庭をやってきて、その結果が瞬間的に現場に立つと内容が見えてしまう。それは経験則で見えてしまうので、自分の感性でもなければ悩みの中から生まれた庭づくりでもないので、嫌気がさしています。それは、自分がかつて指導を受けた先生の、それが頭の中にこびりついていて、それと現状の、手がけてきた庭づくりがちょっとずれていて、昭和50年代から60年代初め、バブルの手前まで、一般庶民の人が、お金にあかせて庭づくりをしてきたあの間違った形態が、自分のたどってきた形態じゃないかという、自分の中に嫌悪感があって、でも、去年あたりから、もう一度古い庭を見直していこうと、毎月1、2カ所、折りに触れて訪ねています。で、「間違ってなかったのかな。自分は何が足りなかったのかな。」と思っているところです。
地福:今日新宿に降り立って、木陰を選び長く木陰を歩くような形できたんですが、新宿にはこんなに木があったんだ、と思いました。今ちょうど萌えいずる緑の綺麗な中で、そういう中で歩いてきまして、自分が緑の仕事に携わっているのは幸せだなあと、木陰に入り入りしながら思ってきました。
私は、元々は設計をやっていて、非常に大きな街全体の計画から重箱の隅をつつくような細かい設計もやっていました、最近では、住民参加と言われるように、行政と住民の中間的立場に立ちまして、住民参加で物を作る、ある時はジキル、ある時はハイドのように、二重人格のように仕事をさせていただいてます。最近感じていますのは、2つありまして、私は、公共の仕事ばかりなのですが、いわゆる受注体制、仕事の請負方なんですが、協商入札で、安いところに仕事が集まって、そういう中で、安いところに仕事を出すということで良いものがだせるか悩んでいます。質という点で見ましても、もう一つは住民参加、今は住民と行政の協働という言い方をしていますが、こういう、いわゆるプロではない人たちが参加してものを作っていく中で、質が保てるのかどうかと考えています。
野口:地域雑誌「武蔵野から」を作っています。武蔵野、ここから電車に乗って20分くらいのエリアを中心として、地域雑誌を作っています。東京では23区以外は都下と言われるのですが、私が四谷から引っ越していったとき、自分たちの欲しい情報誌が何もなく、市の広報があるのみ。それならば自分たちで作ろうと主婦ばかりで立ち上げまして。20年やっております。中央線高架化の運動で13.1キロが高架になるときに、ランドスケープはどうなるの?と興味がわき、その時は素人で全く分からなかったのですが、小出さんに、ランドスケープ、ゼリスケープと言われ、それを知って、こんなところに来ています。
松崎:松崎です。今日はお忙しいところ皆さんありがとうございます。私は小出の事務所に勤めて8年以上になりますが、正統な血脈といいますか、由緒正しい血統で入って来たわけでもなく、以前はOLをやってまして、小出の主宰するランドスケープデザイン塾に来ましてその後なんとなくというか、今日に至っています。それで今日は学生さんも大勢いらっしゃているようですが、そういう若いうちに仕事を決められるのはとても幸せなことなんだと思います。でもずっと生きてきて、今やっていることに疑問を感じて曲がり角がある、その曲がり方を緑の仕事の方向にしたっていう人も沢山いて、そういう人も多く見ているので、その代表というのはおこがましいですがそういう思いも背負ってここに参加していると思っています。
また、仕事柄アメリカにも良く行きまして、いろいろ視察もして、その中でゼリスケープ、水保全を考えたランドスケープに5年くらい前から真剣に取り組んでいます。私の技術的にまだまだのところもありますが、植物の多様性とか敷地内の水が何処から来て何処へゆくのかなどをあらためてじっくり考えて、どういうくうに計画に入れていくかをやっています。
丸茂:マルモ出版、丸茂です。もともと編集者なもので編集者は黒子ですから、こういうところに出てしゃべると言うことはあまりないんですけれども、1日あるということですし、これはまずいなということでレジュメを作ってきたんです。私は、ランドスケープをやって20年、その中で問題提起もあるし、悩んでいることもある。私はもともと20代前半まで小出さんのようにアーティストをやっていたのだけれども、アーティストがお山の大将的で嫌になり、編集という立場から都市を見てみたいと『A&A』という雑誌の創刊からやってきて、建築も見てきて、『プロセスアーキテクチャー』を『ジャパンランドスケープ』を立ち上げる仕事にかかわってやってきた。いろいろあって1995年の阪神淡路大震災の年に『ランドスケープデザイン』を創刊し、今年2月にリニューアル創刊している。これは、世代交代をどういうふうにしていこうかとう実験でもあるんです。若い人がランドスケープをどのように受け止めているのかなという興味があります。若い人の意見も聞きたいです。
村越:村越でございます。私は樹木の生産者でして、ちょうど40年間、植木を作って販売してきました。○○造園、○○緑化あるいは○○ガーデンというところに植木を納めてきました。
植木が、公共造園の中では工業製品として、生き物製品じゃなくてね、そういう扱いを受けて、いろいろと思うんですが、よく検査を受けているときにね、これは芯が曲がっているとか幹が曲がっているとか、片枝だとか下枝がないとか、いろいろなことを言われ、そういう要望に沿ってですね、検査では、例えば100本ある中で、大体最近は30本しか通らないですよね。その30本のものを大事に大事に納める。そうやっていろんな難しいことを言われて納めた木が、枯れているとね、「なんだ」ということになるんですね。
私は新宿南口からここまで歩いてずっとイチョウを見ながらここまで来たんだけれども、もう木なんか植えないでくれ、と言いたいですね。何故剪定するんだ。やめてくれよ、と。折角大事なお金を使って剪定してね、木なんか枝切るな、都市緑化、ヒートアイランドというんだったらね、屋上やめて剪定やめれば、ヒートアイランドなんかなくなりますよ。日本民族は森林の中から育って来たんだと思うんです。それを捨ててしまってね、ヨーロッパ見たいな草原と砂漠と同じようにするのはまずいんじゃないか。
もうちょっと思想的に方向を変えていかないと、日本の緑・都市の景観はちっともよくならない。
良いデザインというのは、ここにデザイナーさんも沢山いて、ちゃんとそういうことを考えていると思うんだけれども、造園のデザインというのは、4次元のデザイン。常に時間の経過の中でもって、10年後、20年後、30年後をどうしていかということを、図面の中でアピールしていくなり、きちっと納得させる。折角良いデザインでやったのに、管理がめちゃくちゃで、管理してないもんだから、たぶん設計屋さんたちも嘆いているんじゃないかな、要するに、木をね大事に作って納めた私のほうはもっと嘆いている。こんなんだったら、木を使ってくれるなと言いたいくらいの気持ちがある。
そういうことですから、木は常に経年変化の中で変わっていく生き物ですから、生存競争がある。遷移が出てくる。そういうものを見越してどのように計画するか、やっぱり作る段階できちっと計画して欲しい。今日は緑の仕事に携わる方々が沢山見えてますが、その沢山の方々に、私たちの世界がなくなっちゃうんじゃないかなということを警鐘したいですね。
※まず、会場の皆さんに第一部で話してもらいたいことをアンケートしました。その結果は下記のとおり。これらを参考に、時には案内人の先導で、時にはフリートーキングで多くの意見が交わされました。以下はその一部です。(敬称略)
<希望する話題集計結果のグルーピング>
○都市における緑のあり方・技術・その背景にある思想は何か
○都市の風、水保全、微気象などとランドスケープ
○剪定について
○日本庭園
○何をめざすのか、または一般の人々にランドスケープとは何であると伝えられるか
○4次元(時間)の問題
○次世代に残したいもの
○都市の風、水保全、微気象などとランドスケープ
●戸田案内人:ではまず水保全・風について松崎さんからお話いただきます。
松崎:(パワーポイントファイルを見せながら)ウォーターワイズ(ゼリスケープ)について簡単に説明し、千葉にあるゼリスケープの第1号公園を紹介しました。ここでは、面積307�Fに対し緑地面積130�F弱、表面流水の利用や水を余り必要としない植栽・灌水管理を行っています。今後は住民参加の維持管理をしていきます。アメリカではランドスケープにストームウォーター集水が取り入れられ、ナーサリーで灌水の実験が行われていますが、私たちも科学的データを積極的に取り入れてランドスケープを行いたいと考えており、そのために気象観測システムを導入し、観測を始めています。
大橋:ランドスケープにおける水保全は重要です。一番問題なのは都市に土の大地がないということです。我々は木を植えるだけでなく、都市の仕組みを考えていかなければならない。水が蒸発するときの蒸発熱はヒートアイランドの解決にもなります。京都の町屋では、坪庭と門の外に打ち水をすることで蒸発熱から風の流れが生じますが、私はこの原理を都市の中に持って来れないだろうかと考えています。現在浜離宮など大きな緑地の周りに超高層ビルが乱立し、都市の中の風がストップされています。例えば五反田は去年より今年は暑くなっているらしいです。風をどう流していくのかを考えています。
●小出総合案内人:超高層の乱立という意見もありますが、一方で依頼をされてそのビルの中に緑化をしている動きもあります。その経験者として、大林氏に是非とも意見を伺いたいと思います。
大林:汐止駅の地下道緑化の仕事が来たので行いました。我々が一貫してテーマとして行っていますのは底面灌水の方法で、これだと植物が水を必要な時に必要なだけ吸うことになり、このため排水溝は一切設けません。これからは地下道の緑化も重要と考えております。これら施工経験の結果、観葉植物でなくとも地比類などは人工照明下でも生育することも分かっています。
●戸田案内人:大橋さんの町屋の話を聞いて、街の街路と自分の庭を繋げるのは、風であり水であると考えます。そして大林さんの話はその対極にある話であると思います。都市が高度化していったときに、要求されるものがあり、(それが大林さんのような技術で)それはそれでいいのですが、そこで取り残したものもあるのではないでしょうか。素朴な疑問、例えば街路樹についてなぜあのように剪定されてしまうのか、村越さんお願いします。
○都市における緑のあり方、特に街路樹の剪定について
村越:例えば、イチョウ並木を5年切らなければ緑量が3倍に増え、緑陰が心地よくなります。そして大勢の人が歩くようになれば経済の活性化も見込めるでしょう。雨を都市に吸わせ樹木を通して還元することもできます。こういったことを踏まえれば、樹木はもっと活用すべきであるし、緑のあり方を考え直さなければならないと思います。街路樹の剪定は良い例も悪い例もありここでは述べ切れないので述べませんが、私たちは街路樹を見直す時で、これからは樹種まで考えるべきだと思います。
●戸田案内人:青山のケヤキ並木・神宮外苑絵画館前の銀杏並木などの成功例があるのに、街路樹を剪定しつづけるのはなぜなのでしょうか。どなたか意見ありますか。
佐々木:経験から言いますと、都市計画の中で植栽マスの寸法が小さいなど樹木が育つような環境が設定されていないことがあります。街路樹を切る切らないの問題もありますが、その前に都市計画における問題があるのではないかと思います。
また、家の側に街路樹が植えられていて、苦情や病害虫の問題から切らなければならないことも経験しています。
●小出総合案内人:千葉の公園で行政にユリノキの下枝を切ると言われたが、何故そのようなことをする必要があるのかと食ってかかったら、ではいいですということになったことがあります。明確に主張することが必要なのではないでしょうか。これからの若い人もこれを学ぶ必要があると思います。
金澤:現在の計画が穴だらけなのです。物を作ることが経済活動になってしまっているからだめで、これが根本的な問題であります。どういうキャパシティを持っているか、街路樹を植えるのなら、木がどのくらい伸びるのか知らなければ植えられないはずで、それを商品として持ってきていることが問題で、我々は経済活動としてそれをやらなければならないから何とか言いくるめようとしているのであって、本来はもっと長いスパンで論じなければならない問題なわけです。
丸茂:街路樹の剪定は、落ち葉が落ちると大変だから落ちる前に切ってしまおうという管理側の論理で行われていて、住民の苦情を行政が責任を回避するために行っています。これには住民の側にも問題があります。私が危機感を抱いているのは、我々団塊の世代は、自然の美しさを愛でる・受け入れるということを経験していますが、次の世代の人々がそれを知っているのか、危機感を持っているのかどうかであります。
また、もうひとつの問題は、日本ではデザインとかシステムができる前に、法律が先行していることです。システムができてから、それをどのように管理するかという法律ができるべきで、これでは本末転倒であります。これに歯止めをかけるには、実際NPOなどが立ち上がっている動きもあるが、我々が声に出して言わなければならず、そうしないと次世代は自然と暮らす術を知らないからますますひどくなっていくのではないかと思っています。これが今日一番に言いたいことです。
●戸田案内人:野口さんに訪ねたいのですが、市民の立場から行政と接するとき市民の立場から疎外感・偏りというのはあるのでしょうか。また、NPOとして既存の制度の中で活動しようとするのか枠外で活動するのかどうですか。
野口:まず制度についてですが、行政は万事を法律に則って行っていて、私たちはその制度の隙間をぬって活動している感じです。私たちの団体は、三鷹から立川までの中央線の連続立体効果事業に対して活動を行っているのですが、そもそもはこの事業には電柱の地中化や街路樹など関連する多くの項目があり、それぞれの意思決定者が別でちぐはぐなのに、行政はそうした不便を分かっていません。例えばメインストリートの木を1本決めるだけでも相当消耗したことがあります。また、市民の意識として私たちはここを「自分たちの庭」と捉えているのですが、この素人の発想をどこに伝えたらいいかわからない、それで組織を結成し、ひとつひとつ行政に伝えていますが、今後はデータをもとに、より明確にその意思を伝えたいと思っています。
●戸田案内人:使い手として、行政あるいは作り手にどういう風に話を持っていけばいいのだろうか。地福さんお願いします。
地福:行政も市民を啓発していくのが大事だと分かってきています。例えば私のかかわる横浜市の取り組みを紹介すると、子どもに焦点あて、子どもの考え方を変えていこうとしています。1つは瀬谷で4年続いている「やってみよう瀬谷の環境」という自然をテーマに環境マップを作る活動で、平成15年度のテーマは生垣を調べることで12の小学校が参加しました。実はこの裏テーマは水循環で、「生垣→土がある→水が浸透する→川の水が増える」というように、活動を通して、緑・自然・生物・水循環に気づかせるプログラムとしています。また、横浜のあずまの地区(約600世帯)は国の水循環再生構想のモデルとして、川の水を増やすために、舗装を透水性のものにしたり、宅地内に浸透マスの無料設置を勧めています。ここでワークショップを開催していますが、開催後には1年間で45世帯が浸透マスの設置申請をしました。(このうち実際に設置したのは25件程)
まだまだ大きな流れにはなっていないかもしれませんが、市民の意識が変わらないと変わらないと思っています。
○ここからフリートーク
大間:私がテーマとしてあげたのは、何をめざすのか。今までの発言を聞いていると詳細ばかりで大局が見えてこない気がします。日本の都市計画は世界の流れから逆行している。それは、英国は10年前から超高層ビルを造らなくなり、超高層ビルの乱立は東南アジアのみで、都市は田園都市からコンパクトシティへと戻っています。我々ランドスケープアーキテクトは何をやればいいのか。都市というのはなんなのか。建築というのはなんなのか。都市をもう一度見直して欲しいと思います。
役人に楯突くよりも「国に楯突く」それくらいの気概が必要なのではないか。
●小出総合案内人:まず確認したいのは、大間さん、60代-50代の失敗のツケが今回っているということで理解して良いのでしょうか。ではツケをどう修復するのか。それについて午後の部で話したいと思いますが、いいでしょうか。
また、ここで言いたいのは、こういうものを大人たちが作ってきたのは、クライアントがいて作ってきたのだということです。心情的にでは食ってはいけない。街路樹は切るべきでないと誰もが思っていることを、今でも平気で切っています。ガーデンブームにどうのこうの言う人もいるが、それで食っている人もいるわけで、私もその一人です。コミュニティもコミュニティのリーダーがいなくなると続かなくなります。でもシステムは作らなければならない。
大間:お金にものを還元するクライアントということで、これはお金のためにやってきたからこうなるわけです。建築ならその容積率建蔽率ばかり気にするのではなく、存在意義があり、その結果人々がそこから何か恩恵が受けられるようなものを作っていかなければならない。
大間:クライアントがあっていいじゃないか、という視点ではなくて、我々が何がいいのかどういう風にすべきなのかそれぞれの哲学をしっかり持った上で、クライアントとどうコミュニケーションをとるのか、仕事をしながら自分の理想とする悪い物は悪いというところにどう持ち込んでいけるかが重要ではないのかと思います。
●戸田案内人:最後に一言づつお願いします。
野口:私は中央線高架に対して活動をしているのだけれども、今日一番勉強になったのは、行政とコミュニケーションを取ろうとする前に、わたりあう術を身につける必要があるということです。
松崎:いかに信念を持つか、そしてそれと共に様々な良い悪いをクライアントと渡り合うというその積み重ねが大きなものになるということを実感しました。
大橋:我々が行政や他の事業主・クライアントと渡り合うためにすることは、理論武装であると思います。今まで経済論理の中でうやむやにされてきたましたが、理論武装と辻説法が必要であると思いました。
佐々木:人と人とのコミュニケーションが大事であると思いました。出会いは「ご縁」。人と会うのが大事、言葉のキャッチボールをするのが大事、その中で自分のやりたいことを見つめ直したいと思います。
大林:植物は環境に貢献していると言うが、その活動の過程で環境負荷を与える部分もあるので、いかにそれを小さくするか、それを洗い出して小さくする取り組みをすることも必要であると思います。いろんな切り口で環境問題があります。
地福:行政と市民ときちんとコミュニケーションがとれ、信頼されるようになりたいと思います。市民のニーズを捉えられ、行政の中では新しい事業を興せるくらい説得できるパワーを持ちたい。競争入札を超えて、新しい事業で自分が発揮したいと思います。
丸茂:核戦争よりも怖いのが環境問題で、緑・水の問題は次世代が生き残れるかという問題でもあります。2020年には東京の一部が水没するというペンタゴンのシュミレーションもある中、ランドスケープは負の遺産を残さないために、スペシャリストだけのものではなく、経済活動も刷新するほどの新しい考え方を必要としているのではないか。それは物質文明でなく精神文明の考え方で、これからは他の人を思いやることがどれだけ生き延びれるかになっていくと思います。
金澤:実測図には、従来断面図が無かったので、断面図を書き始めました。ここにある龍安寺の庭は、皆が知っているここ一部の石庭だけではなく、ここまで(図を指しつつ)全部がそうなのです。それを実測図を描いて初めて知ることができました。全体があって初めて一部が活きる、それだけでなく龍安寺と他の敷地とは繋がり同じ空気が流れ、同様にして続き、地球をとりまいている。そう言うことが分かっていないと計画はできないと感じています。
村越:緑はだれも反対しない。問題は各論で、つまり「遠くにある緑はすごくいい、でも目の前にある緑はいらない」。この市民意識を解きほぐしていかなければ、そのためには、緑に対する見方を変えていかなければ、この業界はないです。
(第一部終了)
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