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潅漑スケジュールの作成

 

 


  • 潅漑スケジュールとは、いつ、どれだけの水を灌漑するか決めることである

  • その目的は、必要なだけの水量を正しく灌漑し、土壌水分を望ましい水準で補充し潅漑効率を最大限にすることにある

  • 潅漑スケジュールは、適正に作成することで水とエネルギー資源を節約する

  • 潅漑スケジュールには、潅漑の必要性を決定するモニター指標が含まれている


 

灌漑スケジュールは、適正水量を正しいタイミングで灌漑できるように決定することである。それは、灌漑の必要性とどのような状況でどのくらいの量を補充するかという戦略によって決定される。

 

潅漑基準と潅漑スケジュール

潅漑基準とは、潅漑が必要かどうか決定するのに使われる指標を言う。最も一般的な灌漑基準は、土壌水分含有量と土壌水分張力である。この基準をもとに、作物の場合は収穫量を最大にするように灌漑のスケジュールを組む方法と、純益を最大にするために灌漑スケジュールを組む方法ある。ランドスケープにも役に立つ方法なので、以下、作物の灌漑スケジュールについて解説する。大切なのは灌漑スケジュールの最終的な決定は、潅漑基準、戦略と目標によって決まるということで、灌漑を行う者はこの3つ、目標を定め、潅漑基準と戦略を確立するのだと認識しなければならない。 

作物の潅漑スケジュール作成では、多くの栽培農家の目標は収穫量を最大限にすることだという点に留意する。土壌水分含有量は潅漑基準として使用するなら、その変化は潅漑のきっかけとなる。例えば、土壌水分含有量が基準の70パーセント未満に落ち込んだら、潅漑を始めるというように、土壌水分センサーと灌漑のコントローラをつなぐのである。

では、潅漑基準としての土壌水分含有量は、どのくらいが適切であるのか?これは、各圃場の状況と灌漑者の目標によって、戦略として決定される。例えば灌漑者は、圃場容水量一杯あまで灌漑することができる。もし雨が降らないと予測され、灌漑者が灌漑間隔を延ばしたいならば、圃場容水量まで一杯に土壌断面を満たすことは有益である。雨が予期されるならば、圃場容水量まで土壌断面を一杯にせず、雨に備えて余地を残すことが賢明となる。どのような場合でも、最大収穫量を目標とした灌漑基準をひとたび設定したならば、灌漑者は、土壌水分含有量をこの基準以上に維持しようと務めることになる。もし土壌水分含有量が基準以下に落ちてしまうと、収穫量も最大可能収穫量よりも低くなってしまうからである。こうして潅漑は、常に、現実の土壌水分含有量が低下して灌漑基準に近づくときに行われる。

 

もし、灌漑者の目標が純収益を最大限にすることにあるならば、純収益を最大とする潅漑基準が必要である。これは潅漑の経費を少なくしつつ最大の純益をめざす。

潅漑スケジュールの重要性は、灌漑者に目標を自覚させ、その実現のために適正水量を灌漑できるようにすることにある。これは潅漑効率を向上させる。このときにデータとして必要なのは、灌漑水量や灌漑深度の正確な測定値である。栽培農家は、どれだけの水を灌漑したのかを知らないまま、効率を最大限にするような水管理を行うことはできない。

また、システムの適正な設置ももちろんである。圃場を横断して均一に配水すれば、潅漑スケジュールと灌漑管理から最大の利益を引き出す。

過剰な灌漑は、水やエネルギー資源、労働力を無駄にする。そして、養分を植物の手の届かないより深い地中へと浸出させ、土壌の通気を減らし、結果として収穫量を減少させる。他方、潅漑不足も植物にストレスを引き起こし、収穫量の減少をもたらす。

 

作成の利点

 

 

  1. 栽培農家は、作物の水ストレスを最小限に抑え収穫量を最大限にするように、複数の圃場での水のローテーション(サイクル使用)を作成できる

  2. 無駄な使用が減り灌漑の効率がよくなり、栽培農家の水と労働のコストが縮小する

  3. 灌水の表面流出と深い浸透を最小限に抑えるので、肥料コストが低下する

  4. 収穫量の増加、作物品質の向上、純収益が増加する

  5. 排水の必要性が経るため、水がたまるという問題が少なくなる

  6. 浸出を抑制するので、根域の塩分濃度問題を制御する

  7. 作物で節約した水を、他の植物の灌水へと回すこともできるという、追加のリターンにもむすびつく

 

 

 

作成の手法

潅漑スケジュール作成は、潅漑の起因となる潅漑基準と、どれだけの水を灌漑するか決める潅漑戦略から成り立つ。まずは潅漑基準を導き出すのだが、この基準の推定あるいは計測の方法はさまざまである。一般に広く使われている潅漑基準は、上述のとおり土壌水分含有量である。

表1は、土壌水分含有量と土壌水分張力のモニターによる異なる潅漑スケジュールの作成を比較したものである。

 

作成の手法
手法 計測指標 必要設備 潅漑基準 長所 短所
土壌の手触りと外見 手触りによる土壌水分含有量 手調査 土壌水分含有量 やりやすく簡単である。 経験と共に精度が向上する。

精度が低い。サンプルを採取などの現場作業を行わなければならない

比重計による土壌水分サンプル サンプルの利用による土壌水分含有量 ボート錐、口金、オーブン 土壌水分含有量 高精度 サンプリングと結果の間に時間的なギャップを生じるのと、現場作業を初めとする集中的な労働が必要である
テシオメーター 土壌水分張力 真空計テシオメーター 土壌水分張力 適正な精度 土壌水分張力の瞬間的な示数を読む作業が必要。メンテナンスが必要。0.7以上の気圧で張力が壊れる
電気抵抗
ブロック
土壌水分の電気抵抗 抵抗ブロック
ACブリッジ(メーター)
土壌水分張力 瞬間的な示数 張力のより大きな範囲上で働き、リモート検針も使用できる。 土壌塩分によって影響される。 低い張力には敏感でない。 メンテナンスが必要。現場読み込みを必要とする
水収支方法 気候の指標: 温度、放射線、風、湿度、雨量とET予測に使われるモデルに応じる 測候所または入手可能な気象情報 土壌水分含有量の推定値 現場作業が不要で、柔軟に対応できる。潅漑需要の今後を予測できる。同一設備で多くのエリアのスケジュールを組み立てられる キャリブレーションと周期的な調整が必要。 ETは推定値のみで、コンピューターなしでは計算が厄介である
補正済蒸発計 参考ET 蒸発計ゲージ 土壌水分含有量の推定値 参考ETを直読でき、使い方が簡単 キャリブレーションが必要。 ETは推定値のみ
INDEX
灌水は簡単になった
住宅灌漑システムの操作とメンテナンス
住宅庭園用ドリップ潅漑
果樹と条植え作物のマイクロ灌漑
灌漑スケジュールの作成

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