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水保全のランドスケープ :雨水利用

 


雨水に対する責任

雨水は大地に降り、やがて川を経て海にそそぎ込む。建築物や駐車場、道路、庭などに降る雨は、配管システムによって集められるまでは、高いところから低いところへという自然の流出経路をたどり、そしてこの流出の間に、オイルや粉塵などの自動車からの汚染物質や動物の糞便、ゴミ、ちりなどを洗い流し、土壌侵食をもたらすことになる。

 

流れに洗い流される砂利や砂、汚染物質などの異物は、結局は、大小の流れから大洋までのどこかに留まっている。そしてその多くは河川や海洋環境を害し、時に、我々の環境衛生面に危険をもたらす。雨水によって発生した洪水による土壌浸食は、その土地への被害をもたらすだけでなく、面源汚染源ともなり、長期的な環境被害をもたらす可能性がある。そこで我々は、公共の雨水システムや宅地開発で建設される貯水池、公共の排水管などに実験としてフィルターを設置し、我々の身近な雨水の流れから海に流れ込むまでの水質の改善を試みることを計画している。これには、下水に様々なゴミが流れ込むのを防止する役目も含まれている。このフィルター設置の前後では実際の違いが明らかになり、誰もが、個々の敷地に降る雨水に対して責任をとる必要を実感するだろう。都市の水循環は、もちろん生態系だけでなく、巡っては我々の必要とする生活用水の水質に影響を及ぼすのである。

 

我々が雨水をよりよく利用し管理できるようにするためには、都市全域に及ぶ雨水流域管理の指図を作る必要がある。これは洪水と汚染防止に役立つ。我々は同様に、老朽化して漏水するような下水管の水質汚染を減らすことにも協力しなければならないが、公共の雨水システムに責任と管理を求める一方で、実は、誰もが自分の雨水に対して責任を負わなければならない。雨水流域管理は、行政や専門家に注目され、さまざまな試みが端緒に付いているが、これからはさらに、雨水政策に対する理解を市民に広く促し、各自が応分の負担を自覚することが求められるようになるはずである。各自がフィルターなどの器具、雨水浸透設備、住宅地などの開発計画、雨水利用の方法に対して基礎的な知識を持ち実践することが、世界規模で行われようとしている。JXDAはこれらの技術を公開しながら取り組む段階に来ている。

 


雨水の問題

我々の身近な流れから大洋まで流れ込む雨水は、環境を傷つけ時に私財にも損害をもたらす。雨水が都市にもたらす問題をまとめると次のようになる。

 

  • 洪水

  • 浸食

  • 水質

  • 資産管理


●洪水

温暖化による気候変動で集中豪雨が一段と激しさを増す中で、一時に大量の雨水が流れ込むのに充分な雨水管が存在していないため、地盤の低い場所や舗装面の多い都市は、洪水の危険に常にさらされている。今日見られる集中的な市街地開発は、屋根や道路からの表面流出を増加させ、雨水流出による都市の洪水を著しく助長している。

   

●浸食

雨水が斜面を流れると浸食が引き起こされる。それを助長するのは、集中的な市街地開発による草木の損失である。根にしっかりと支えられていた土砂が雨の地表流出により、浸食される。

   

●水質

水質は、都市に住む多くの人々にとって重大な問題である。

   

●資産管理

浸水による建築物への被害だけでなく、敷地への被害、ある特定エリアへの被害もまた資産価値を低下させる。誰が洪水が発生すると分かっている場所にわざわざ住みたいだろうか。

 

ここで認識すべき問題は、こうしたことは今まで都市の特に中心部においては、まるで無縁と受け止められてきたということである。理解はできても自分達の地域とは関係ないことではないか・・・こうした認識は本当に的を得たものと言えるのだろうか。

 

 

 

雨水品質と環境効果

雨水は海水と真水両方の水環境の広範囲な破壊を引き起こす。地域の雨水からは、多種多様の化学製品とその原料が確認される。地域や環境によって汚染物質の種類は異なるが、汚染物質は主に次の4つに分けられる。

 

  • 浮遊物質

  • 栄養素

  • 毒性物質

  • 病原体

 

次の表は、都市に降った雨水の中から見つかった汚染物質について要約したものである。

汚染物質
発生源
浮遊物質
粉塵
ゴミ
土壤、道路材料、腐食生成物
栄養素
窒素
有機リン酸
硝酸塩、アンモニア、有機体窒素
リン酸塩、工場資材、油と油脂
下水、産業有機化学物質
毒性物質
重金属
石油炭化水素
殺生物剤
鉛、亜鉛、銅 (時にニッケル、カドミウム、クロム、水銀)
多環芳香族炭化水素、クロルデン
リンデン、ジエルドリン
病原体
微生物
バクテリア、ウイルス


汚染物質
自動車の利用に起因する割合(%)
浮遊物質
50
100
亜鉛
40
50
多環芳香族炭化水素
40

 

 


環境にやさしい雨水計画

我々は、住居とその周辺環境に共生する雨水利用のアドバイスを行っている。それは、環境にやさしい雨水計画であり、次のようなステップで計画される。

 

  • 雨水の利用

  • 流出抑制

  • 植物の利用

  • 開水面距離

 

我々は、家庭や敷地あるいは農業用水利用のために、かつては雨水に何世紀も依存していた。共同体社会がより大きくなるにつれて、より多くの水が都心に集められるような水処理と流通システムが出来上がり、上水道による給水が徐々に雨水集水利用に取って変わった。しかし今では、世界中いたるところの人々が、水の持続可能な使用とは雨水を集め利用することだと、ふたたび新たな関心を抱き始めている。

 


●雨水の利用

環境にやさしい雨水計画として、まず雨水の利用を考えてみる。

 


雨水利用の目的

  • 水の消費量を節約し、上水道の利用を減らす。

  • 雨水の一時的な貯留ができるので、洪水を抑制する。

  • 雨天時に下水管のオーバーフローを減らす。

  • 水源に入る汚染物質の量を減らす。

 

雨水利用の条件

  1. 庭に灌水するための雨水利用には、建築的な承認は必要でない。

  2. 庭の灌水だけでなく洗濯やトイレに雨水を供給するシステムには、建築的な承認や安全性への配慮が必要である。

  3. 公園や洗濯、トイレに雨水を供給する重力方式で本給排水系統との接続には、逆流防止装置を備え建築的な承認が必要である。

  4. 公園や洗濯、トイレに雨水を供給するポンプシステムで本給排水系統との接続には、逆流防止装置を備え建築的な承認が必要である。

 

健康に対する配慮

都市の上水供給域においては、飲料水、食品準備、台所とバスルームでは、上水道が使用されるべきである。雨水の飲用は、災害非常時を除き、通常は安全で適切な処理を経たものでなければお勧めできない。

 

一般に家庭ではどのくらいの雨水を使用することができるか

屋根からの集水により、家庭で使用する非飲用水のおよそ65%をまかなうことができる。

 

どれだけの雨量を集めることができるか

集水可能な雨量は、集水する屋根面積と地域の降水量によって決まる。この量は一般に、集水面積と年間降水量と流出係数を乗じて求められる。

 

 

屋根集水による年間の雨水集水可能量

例:
年間降水量1458mmの地域(2004年東京値)で150m2の屋根表面から集水される年間雨水集水量は次のように求められる。


年間雨水集水量[m2/年]=集水面積150 [m2]×年間降水量1458[mm/年]x 流出係数*10-3
            ≒180m3/年
            =180,000リットル/年
            =500リットル/1日平均

*流出係数は集水場所により異なるが、屋根の場合は一般に0.85〜0.95程度を用いている。ここでは0.85を乗じている。

 

これは雨水集水の可能なであり、この1日平均500リットルという量だけを参考に雨水貯留槽(タンク)の大きさを決めるのは無理である。タンクの大きさは、あくまでもこれを目安に検討する。(次の雨水システムの構成の4を参照)

 


雨水システムの構成

雨水集水システムは次の6つの部分から構成される。

 

1. 集水部 屋根・屋上:雨水を集める表面

雨水は、トタン屋根、粘土瓦、スレート屋根などの屋根から集めることができる。
屋根材や屋根塗料に鉛が含まれている場合、雨の弱酸性の成分は鉛を分解し、水を汚染し、屋根も傷める。また、長期利用により、コンクリートの中性化や使われている金属類の腐食も生じてくる。このため、屋根・屋上の定期的な点検が必要となる。鉛については、鉛が含まれる材料を経由する雨水の利用は避ける。樋のハンダ合金にも鉛が使用されていないかどうか確かめる。また、ある種の合成アスファルト材料、アスベスト、屋根板、コンクリート瓦と鉛の混じった塗料は汚染物質を浸出し水質に悪影響を与えるので、注意する。

 

2. 集水配管(樋と縦樋)とルーフドレーン、初期雨水
3.  :集水表面から貯留槽までの移送経路

樋と縦樋には、継ぎ目なく成型されたアルミニウムや鋼、またはPVC材を利用する。適切な大きさで傾斜を合わせ、縦樋から雨水貯留槽まで、集水する雨量を最大限にするよう備え付ける。集水配管の手前、つまり屋根・屋上にはルーフドレーンが必要である。ルーフドレーンは、金属かプラスチック枠の中に約6mmのワイヤーメッシュ(ストレーナ)が入っていれば良い。ルーフドレーンは、目に見える大きさの汚染物質の除去や雨水の集水管(樋と縦樋)への流入を制御することができるが、その効果を維持するためには、定期的な清掃が必要である。また、もし近くに樹木があり、落ち葉が問題を起こすと考えられる場合は、落ち葉に対する遮壁を樋の全長に沿って設置する必要が生じることもある。

また、初期降雨については、屋根・屋上ともに集水場所の環境によって、取り除かずにそのまま貯留槽に取り入れてもよい場合と、汚染の危険を防ぐために排除する場合がある。例えば、交通量の激しい地域の屋根・屋上や、屋根材質に問題がある場合、ルーフドレーンを通過した雨水は、異物としての汚染物は除去できても、化学的に汚染されている可能性もある。そこで、例えば個別の小さな器へ初期降雨を逃がすことにより、(ルーフドレーンが不完備でも)雨に先立って屋根に一般に溜まっていた鳥の糞や落ち葉も除去できる。一旦このスペースが満タンになったら、それ以上の水は、貯留槽へと接続された縦樋を流れるように接続し、初期雨水を溜めるスペースは、次の降雨の前までに水を空にすることができるよう、底に栓や小さな管が付いていることが必要である。
初期降雨を排除すると集水できる量は減少するが、一般に、降水量4mm/日以上から集水するとし、このうち0.5mm/日を初期雨水として排除する。または、屋根面積100 m2ごとに40リットル削除する。降雨量のおよそ6〜10%を削除すると考える。

 

4. 貯留槽(タンク):地下・地上、あるいは建物の壁上に設置

タンクには、プラスチック、鋼、コンクリート、ファイバーグラスなどさまざまな素材で出来たものが利用可能である。耐久性と耐水性があり、不透明な外観と清潔で滑らかな内部を持っていればなお良い。蒸発と蚊の繁殖を防ぐための蓋を備え、昆虫、げっ歯類、鳥の侵入と子どもが遊ばないよう工夫が必要である。また、タンク内部に藻類が繁殖しないように、直射日光を遮る涼しい場所に置くようにする。必ずオーバーフロー管を接続し、定期的清掃もやりやすいような開口部であることが望ましい。タンクの設置高さはポンプにより揚水をするか重力方式かによって、推奨する高さが異なる。また、大きさは次のものに依存する。

 

  • 雨水利用量

  • 年間降水量、日別降水量、降雨パターン、降雨強度

  • 集水面積

  • 必要とする供給面での安全性

  • 上水代替率

 

 

5. 処理:雨水専用の送水システムか本線接続か

雨水利用システムが単独で設置されるのではなく、本給排水設備と接続される場合には、効率的な雨水集水と貯留システムが、本システムを妨げないことが求められる。汚染から本給排水設備を保護すること、異物の除去、逆流防止装置の設置が必要である。給排水設備はすべて限定された専門家によって施工されるよう勧める。許可された給排水設備基準に対応することを必要とされる。

 

 

6. 水処理(非飲用使用の場合)

雨水を非飲用に利用する場合には、沈殿物の除去とpHと簡単な添加剤を和らげるフィルターの設置が、基本的な水処理の処置である。飲用する場合、つまり飲料水に対しては、精密濾過用フィルターと微生物を利用する消毒槽が必要である。
しかし、飲用非飲用にかかわらず、鳥とげっ歯類の糞から安全で、初期雨水を除去することのできる雨水センサーとそれによって流入経路を切り換えられる電磁弁がついているシステムの場合でさえ、例えば、配管から来る汚れ、さび、湯垢と、大気から菌がタンクに入る可能性はあり、水質が不十分かもしれないということを常に心に留めておくことは重大である。
そこで、できるならば、貯留槽の前に沈砂槽(スクリーンストレーナ)により浮遊固形物を沈殿させて除去すること、貯留槽の後に精密濾過用フィルターによるろ過装置を設けること、といった水処理が推奨されるのである。プールや浴槽で使用されている簡単なカートリッジ・フィルタ(例えば80ミクロンで洗浄できるフィルター)を用いても良い。フィルターの効果を維持するために、設置とメンテナンスは説明書の指示に従って行う。あらかじめ雨水の水質を検査し、どの水処理方法を適用するべきか専門家のアドバイスをもらう方法がもっとも確実である。

 

 

貯留タンク

例えば下表のように、150m2の屋根から雨水を集めるために4,500リットルのタンクを設置したとすると、最大雨水流量を20〜35%縮小することができる。

 

雨タンク容量(リットル)
 
利水(リットル)
200
200
3,000
4,500
9,000
 
125
50%
80%
95%
100%
100%
 
225
40%
65%
85%
90%
100%
供給された水の平均の年1回の%
(150m2屋根面積に対して)
325
35%
50%
70%
80%
90%
 

 

 

タンクの容量と形

30m2程度の屋根面積の場合は、用水桶あるいは樽で十分に対応できる。これらは一般に240リットル程度であるが、「サイロ」形のより大きなものもある。
比較的小さなタンク容量でも、家庭での水利用として必要な量の相当量を提供することができる。典型的な家の屋根に対して200リットルの貯蔵タンクがあれば、平均的なトイレ使用水の半分までを提供することができる。


安全管理

雨水システム設置の際には、水源が上水道ではないことから、その特性について明確に示すサインが必要となる。次に示すのは、その一例である。

これはすべての雨水システムの水栓脇に貼る飲用禁止のサイン。(ニュージランド)

逆流防止器具が本給水系統の水質汚染を防止に取り付けられている、のサイン。(ニュージランド)

 

建築側の承認の必要性

  • 一般に、庭への潅水をするための雨水タンクには、建築的な申請は必要としないが、開発の場合に下水システムへの汚雨水流入などには確認申請の類の許可が必要である。また、すべての家庭の給排水設備に雨水集水システムを接続したいならば、後からの付け足しであっても建築側の承認が必要だろう。

  • バックアップとして本給水系統に接続する場合には、逆流防止装置が必要である。

  • 25,000リットル以上の処理能力のタンクは、地面に直接設置する。

  • 2,000リットル以上の処理能力のタンクは、地面から2m以上上に設置する。

  • 500リットル以上の処理能力のタンクは、地面から4m以上上に設置する。

  • 6,000リットル以上の大きなタンクは、それ自体が境界などに関しての絶頂のようなある判定基準を満たすことを保証するための資源同意を必要とするかもしれない。

 

逆流防止装置の必要性

逆流防止装置は汚染から本給水系統を保護するために必要である。特に、システムバックアップとして雨水システムが本給水系統と任意の形で接続されるときには、逆流防止弁(ダブルチェックバルブ形)などの装置を必要とする。

 

給排水設備

給排水設備はすべて公認の配管工によって施工されなければならない。水道工事は水道工事の免許を持つ業者のみが行うことができる。

 


雨水利用のための維持管理チェックリスト

屋根
□ 無害な無鉛の屋根塗料を使用した屋根かどうか確認する。

□ 屋根に雨による傷みと思われるものは生じていないか。

□ ルーフドレーンの目詰まりや材の劣化など定期的にチェックし、清掃する。

集水管

□ 無鉛材料であるか。劣化はないか。

タンク
□  定期的に貯槽をチェックする。昆虫やげっ歯類が入らないように、また子どもの安  全のために、ふたが安全に閉まっていることを確認する。
□ 異物や落ち葉、汚れがタンクに入り込まないように、定期的にタンクと樋を洗浄する。
□ 藻類の繁殖を防ぐために、タンク内部に光が浸透しないことを確認する。
   光を通さない材質を用いたタンクにするとよい。
□ 雨水の検査と水質改善のために、最初の段階で雨水センサーと切り替え電磁弁による  初期雨水除去システムを設置することも検討する。

□ 水質汚染を防ぐには、タンクの水を毎年1回塩素殺菌することもある。
□ 給排水設備に逆流防止の措置がとられているか確認する。
  (必要な場合には建築側の承諾を得る)

□ 定期的な清掃を意図した、清掃しやすい構造であることを確認する。

フィルタなど器具

□ 劣化や目詰まりはないか確認、洗浄する。

安全性への配慮
水に色がついていたり、香りがするなど、水質が以前と比べて少しでもおかしいと感じたら、専門の水質サービス機関と連絡をとり、菜園への灌水にはその水を使用しないようにする。

 

※植物の利用、開水面距離については、もうしばらくお待ちください。

 


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