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ゼリスケープに関わる商品・資材をクローズアップ。今何が流通し、何が求められるのか・・。
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■第4回 透水性舗装

[透水性舗装とは]

都市化が進みアスファルト舗装面積が拡大するほど、雨水は地中への浸透を阻止されてきた。それは、都市型洪水、地下水の枯渇、地球温暖化の元凶とされ、最近では雨水の地中還元を叫ぶ声が大きくなっている。都市の機能を損ねないという前提の中で、注目されているのが、透水性舗装である。→<参考資料

舗装とは、水の浸透具合により、非透水性舗装と透水性舗装(広義)に大別される。非透水性舗装は、舗装面からの排水・透水機能がまったくない従来からある非排水/非透水舗装と、表層のみ空隙があり排水する排水性舗装に分けられる。透水性舗装(広義)は. 舗装材料に空隙があり排水・透水機能があるもので、舗装材料の形態により、さらに透水性舗装、保水性舗装に分けられている。

舗装の分類

 
 
名称
特徴
歩行性
水保全
熱緩和



非排水/非透水舗装
排水・透水機能がないもの
×
×
×
排水性舗装
表層のみ空隙があり、排水はするが地盤までは透水しない。
×
×


透水性舗装
表層・基層ともに空隙があり雨水を地盤まで透水する。空隙が比較的大きいため、舗装面を流出する水量を減少させる効果がある
保水性舗装
透水性舗装材だが、空隙が比較的小さいため、毛細現象により保水性を持つ。間隙保水が可能でその水の気化作用により舗装面の温度を下げる効果がある。

[透水性舗装の素材とメリット]

透水性舗装の素材は、アスファルト、コンクリート、樹脂、自然土石などで、従来の舗装材にも使用する素材を、その構造や原料を変えることにより、透水性を持たせた舗装材にしている。その効果は、地下水の保全だけでなく、蒸散作用による熱の気化や照り返しの緩和(保水性舗装において顕著)、さらにヒートアイランド現象の緩和にも貢献していると考えられている。他方、平坦で滑りにくいことによる歩行者の安全保護・バリアフリーの観点から推奨される他、雑草の防止、メンテナンスの低減、土砂の流出を防ぐなど法面の保護といったメリットも認められている。このため都市計画、公共施設にはもちろん、個人住宅においても導入が進められている。

[ヒートアイランド化対策の環境舗装]

国土交通省関東地方整備局は、平成14年よりヒートアイランド現象への対策として、「環境舗装東京プロジェクト」を立ち上げ、東京都と連携して舗装による総合的な環境対策を進めている。そこで、ヒートアイランド現象の緩和効果があると考えられている吸水性保水性舗装など透水性を持つ舗装の技術を公募し、平成15年よりそのフィールドテストを開始している。

ヒートアイランド現象は、都市化に伴うエネルギー消費の拡大による排熱量の増加、緑地・水面の減少および人工物・舗装面の増加による蓄熱の増大と水分蒸発量の減少、空間の高度利用や高密度利用による風通しの悪化などにより発生する。舗装面を透水性舗装にすることのみで、複合的な原因をもつヒートアイランド現象が解消されるわけではないが、透水性舗装が都市化による環境悪化を改善するために大きく貢献していることは、いうまでもない。

[透水・保水性舗装の温度低減効果]

最高気温が30℃の場合の実測値では、通常のアスファルト舗装は、路面温度がピーク時で60℃程度まで上昇するが、一方、芝生は35℃程度までしか上昇しないとの結果が出ている。現在実験が行われている保水性舗装は、路面温度がピーク時で40℃〜50℃程度まで下がることが見込まれている。

参考:国土交通省関東地方整備局 関東技術事務所「環境舗装東京プロジェクト」

--------地下に浸透した水はどうなるのだろうか?-------
くわしくは上下水道からみる都市の水事情】へ

[透水性舗装の種類]

透水性アスファルト
アスファルトの空隙が比較的大きく、雨水が地盤まで透水し舗装面より流出する水量を減少させる。この空隙がより小さく、毛細現象による間隙保水が可能なものが保水性アスファルトで、舗装面の温度を低下させる効果がある。実際には、どちらも地盤に透水するので、従来のアスファルト(非透水性)に比べ水の蒸発による冷却効果がある。

透水性舗装アスファルトと従来のものの違いは、特に雨の高速道路で体験することができる。路面に雨が浮き、側溝へと流れていくのがわかるような時、あるところだけアスファルトが今までと違って黒く光り、路面に浮いていた雨がなくなり、側溝に流れる雨が忽然となくなり、雨などない晴天の道路を走っているのかな、と錯覚しそうな道路を走ったことはないだろうか。その部分が透水性アスファルト舗装である。従来のアスファルト舗装よりも価格は高いが、そのメリットには、地下水の保全という環境面だけでなく、雨が路面に滞らないことによって、雨の高速道路で一番怖いハイドロプレーニング現象が起きにくく快適に走行できるという安全面が挙げられる。

施工方法は、通常のアスファルトに準じる。
(用途)歩道、車道、高速道路、駐車場、公園の園路、家周り

 

透水性コンクリート
透水性のある骨材を使用し、またコンクリート自体にも透水性をもたせている。透水性コンクリートは、透水性アスファルトと同様に空隙が大きく、強度を保ちながら水を通過させる。コンクリート厚を上げることで車道にも導入されている。アスファルトに比べてコストは上がるものの、着色が可能であったり、狭い場所や起伏の
ある場所、吹き付け工などの施工が可能であるので、様々な場所で
導入がされている。例えば、実際の施工例では、コンクリートの構
造物の屋上部分に透水性コンクリートによる舗装工事を施し、屋上
に降った雨が透水性コンクリートを通して路盤を伝わり、路盤の内
部に設置されたパイプを通して外部に流される仕組みにしたことに
より、気化作用と水の地盤への浸透を実現させた例もある。

施工方法は、通常のコンクリートに準じる。
(用途)歩道、車道、高速道路、広場、商店街、駐車場、公園の園路、家周り

樹脂舗装
自然石などをエポキシ系樹脂バインダーにより結合させたもので、アスファルトまたはコンクリート層の上に接着させて仕上げるため、地盤への浸透のためには透水性のアスファルトまたはコンクリートによる下地工が必要になる。

メリットは、透水性のアスファルトまたはコンクリートのメリットに加え、天然の豆砂利や小石など、自然石独特の景観を形成できることである。が、その分高価であるため、庭園や墓地などの高級感を出すための仕上げに向く。

(用途)歩道 広場 家周り アプローチ(一部のものは車載可)

真砂土舗装
完全乾燥させた土砂(真砂土)に固化材と混和材を一定の割合で混合し、散水、転圧、養生して硬化させた舗装で、見た目は土だが、防草性や耐摩耗性をもつ。土砂だけでなく、間伐材やチップ化した樹皮、樹脂を混合したものもある。透水性舗装の中では、最も土に近い舗装で、透水性だけでなく照り返し対策にも効果が大きい。車載については、製品によっては可能とされているが、全般にあまり耐性は強くなく、ハードユースには耐えられない。施工方法は、砕石転圧した下地に混合された真砂土舗装材を敷き転圧をかけ、散水・養生する。
(用途)歩道、公園の園路、家周り、屋外スポーツ施設、街路樹まわり、中央分離帯、駐車場(一部のものは不可)

ブロック・平板・レンガ・インターロッキングなど
水を透過する連続の空隙があり、当然空気も透過することから、目地だけでなく舗装面全体での透水が可能である。素材は石やセラミックなどの自然物から、樹脂や廃ガラス、ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰などからも生成が可能で、数々の種類が選べ一般家庭や小規模工事でも施工がしやすいメリットがある。

施工方法は、砕石転圧した下地に直接ブロックを敷き並べるか、車載が要求される場所で透水性を確保するためには、透水性コンクリート下地を行う。
(用途)歩道、公園の園路、家周り、駐車場

 

 

今後、日本全体の透水性舗装の普及割合により、どの程度の地下水源の確保とヒートアイランド現象の緩和が実現できるか、調査結果が待たれる。一方、一般家庭の敷地内においても、透水性舗装は、照り返しの緩和や気化熱による夏の外気温の低下、冬場の凍結予防、果ては犬猫の糞尿害の予防など、生活面でメリットが実感できる。デザイン・用途にあわせて舗装材を選び活用したいものだ。緑化のみならず、最も手間のいらない環境改善・水保全対策のひとつといえよう。

写真協力:
コンクリート 日本道路(株)
樹脂 前田道路株式会社
真砂土 (株)ユタカ産業

企画・文:森山晶子