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芝生が向かない場所で、地被植物はよき代替植物となる。
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地被植物にふさわしい場所は、歩道や建物の間の狭い場所や芝刈りが実践的でない斜面である。
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樹木や潅木の下にできる陰地、暑く乾燥した日なた地の植栽には、芝生よりも地被植物のほうが適している。(過酷な環境に強い)
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植栽の前に必要に応じて土壌を改良する。
地被植物とは何か
地被植物は芝生の育たない場所で芝生に代わる有益な種類の植物である。「何を地被植物あるいは、グランドカバープランツと呼ぶのか分からない」という人には、基本的に丈があまり高くならない、地表を被うような植物のことを総称すると言えば、通じるだろうか。パンジーは草花だが、地被植物とは言わない。地被植物の多くは、宿根草(多年草)や低木で、長命で、花よりも地味な雰囲気のものである。例えば、あなたが敷地のある部分を、「何でもいいけど緑で被いたくて、できれば手間もかけずに育つ丈夫なもので。」と思ったときに、使う植物が地被植物である。
一見地味に見える地被植物でも、結構、鮮やかな花の楽しめるものや、細かい葉、大きな葉、覆輪の葉、明るい緑の葉、産毛の生えた銀緑色の葉、などのさまざまな質感と色彩の葉があるものである。そこで、いろいろなものを組み合わせると、結構、個性的な空間を作ることもできる。ここでもいくつかリストに植物名を挙げておくが、ネットや図鑑などで調べれば、いろいろなものがあることが分かる。
地被植物の役割
ある一定面積を被ってくれるので、裸地と異なり、土壌侵食を減らす。また、芝生と潅木や草花のボーターとの間の移行地帯ともなりうる。これはつまり、植栽の奥行きを出してくれるということである。植物を植えることでまず思いつくのは、芝生とか花壇であるかもしれないが、そこに、地被植物で緑化したエリアも加えれば、何というか、全体の統一感や、緑化を意識的にしているという、一歩進んだ積極的な意思が感じられる。もっとも、マンションや商業空間などでの外構で、アイビーやサツキツツジなどの地被植物が多いのは、見慣れた光景であるが、一度植えたら手間要らずで、緑化が保たれるからで、このように、使って便利な地被植物の無難に代わり映えのない選択をしてしまえば、ありきたりの退屈な景観を作りだす危険もある。だからこそ、いろいろな地被植物を知り、状況に応じて上手く使いこなして欲しい。
ゼリスケープTMにおける地被植物
一般に手間をかけたくないところを緑化するために地被植物を用いるが、この使い方はゼリスケープTMにしても変わらない。さらに言えば、よりしっかりと、敷地の中の過酷な環境条件の場所や手の届かないところを見きわめて、地被植物を植えようとするのがゼリスケープTMである。地被植物が相応しい植栽場所というのは、基本的に、灌水や芝刈りなどの特別なメンテナンス作業が困難なところ、日当たり良く乾燥しやすいところ、などである。以下に具体的な場所を示す。
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通路と建物や、塀と建物との間にできる狭い場所
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芝刈りが難しい斜面
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日当たりの良い壁やフェンスに沿ってできる細長い場所場
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壁やフェンスの北側にある樹木の下草や、低い窓の前に行う基礎植栽として
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拡大屋根緑化(草屋根)
地被植物は、地域の気候や生態系にあうものであるので、自然降雨以外の水がなくてもやっていけるものである。ゼリスケープTMを実践しようとする人は、このことも意識しておきたい。
土性と日光への露出
地被植物による植栽を成功させる鍵は、それが土質に適しているかどうかである。地被植物の多くは、シュートやランナーにより繁殖し、土壌の通気がよく、排水もよく、適当な有機物の含有量があれば、急速に広がっていく。重粘土の土壌は、水はけも通気性も悪く、根も伸びることができない。痩せ地で生育する植物にとってさえふさわしくない。地被植物は、一般に、大抵の土壌で生育可能であるが、重粘土の場合だけは、事前に改良をしておく必要がある。堆肥や腐葉土を混ぜるだけでよい。痩せ地と栄養分に富む土地については、それぞれにあったものを植えればよい。痩せ地に自生する植物に栄養分に富む土地が適さないのは、自明の理である。
露出という、日や風にさらされる環境の程度には、注意が必要である。ゼリスケープTMに向く地被植物の多くは、日なた地での植栽に適するが、数は少なくとも部分日陰の中でよりよく生育する種もある。下の表1、表2は、代表的なゼリスケープTM地被植物について、日陰向きか日なた向きかによって分けて掲載し、さらにコメントを加えたものである。日なた、日陰、それぞれに適したものを選ぶことが、その後の手間も水やりも減らすコツである。それがゼリスケープTMの極意でもある。
| 表2:日陰に向く地被植物 | ||
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植物名
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草丈(cm)
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備考
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| Aegopodium podagraria 'variegatum' アエゴポディウム・ポダグラリア 'ヴァリエガータ ' |
25-30
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斑入りの品種で緑と白色の葉の茂みになる。侵略性。 セリ科の植物 |
| Arctostaphylos uva-ursi クマコケモモ |
10-15
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常緑植物で赤い食用の果実をつける。 酸性土壌でも活着する |
| Campanula carpatica カンパニュラ・カルパティカ |
15-36
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侵略的になりうる。青または白色の花をつける |
| Convallaria majalis スズラン |
15-25
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5~6月にかけて芳香のある白い花をつける。赤い果実は食べられない。 侵略性 |
| Galium odorata セイヨウクルマバソウ |
15-20
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非常に侵略的であるが、潅木の下にむく最も良い地被のひとつ。 5~6月にかけて芳香のある白い花をつける |
| Lonicera japonica 'Halliana' スイカズラ ハリアナ |
15-30
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日なたでも生育するが、日陰ではより濃厚なマット状となる |
| Mahonia repens ツル性ヒイラギナンテン |
15-30
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常緑で春に黄色の花をつけ、 西洋ヒイラギのような葉群を持つ |
| Penstemon caespitosus ペンステモン・カエスピトースス |
2.5-5
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小さな下向きの葉をつけ、マット状に茂る、5~6月にかけて紫色がかった花をつける。 |
| P.strictus ロッキーマウンテンペンステモン |
2.5-5
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6~7月にかけて青い花をつける。 |
| Vinca minor ビンカミノール |
10-15
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半常緑で春に白あるいは紫の花をつける。 |
雑草の防除
地被植物を植える前に、雑草は除草しておく。どうしようもないときには、除草剤を使う。特に、多年生の雑草は、植栽に先立って除去されないと、後に面倒を起こしやすい。ラウンドアップなどの除草剤は、雑草の多い場所に植栽の数週間前に用いれば、ほとんどの雑草を枯らす。霧吹きの1週間後には、植栽をすることができ、土中に有害な残留物を残さない。
雑草対策にはまた、雑草防除シートを用いても良い。たいていの園芸センターで入手できる。適当な大きさにシートを切り、約15センチの間隔でU字型のピンでその端を地中にとめていくと良い。植物はこのシートに切れ目を入れて植栽する。植栽後、シートの上にマルチを敷き、シートを隠す。プラスチックフィルムも雑草の発芽を妨げる効果があるが、植物の根を窒息させるので、使用しない。また、最近土舗装を行い、植栽の周りのみ、孔を空けたように土を極わずか残す施工が、たまに、見られるが、確かに雑草は生えないが、生育も観察した限りでは、通常の半分から1/3程度であった。



