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ゼリスケープとは
創造的なランドスケーピングである
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適切な計画はランドスケープにおいて水使用を減らすための第一歩である。
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南や西に面した急勾配の斜面で、東や北に面した斜面と同様の植物を育てようとすると、より頻繁に灌漑をしなければならなくなる。
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斜面はテラス(段丘)状にすることにより、流出が抑制される。
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芝生は一般に灌漑が必要なため、小さな範囲かよく手を入れられるエリアのみに限る。
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土壌の整備は水保全の鍵を握っている。
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適切な潅漑システムにより、30〜80パーセントの水を節約することができる。
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植物の水需要を減らし、雑草の生育を抑えるために、マルチを敷く。
ゼリスケープとはもともと、水保全のランドスケープという主要な目的を描写するために、デンバー水道局の特別な専門家委員会とコロラドランドスケープ施工協会(Associated Landscape Contractors)、コロラド州立大学によって造られた言葉である。乾燥を意味するギリシアの「xeros(ゼロス)」とランドスケープ--したがって、ゼリスケープとなる。
水保全のランドスケープは、干ばつ・洪水などの気象変化と、ランドスケープにおける水利用に対する認識が起動力となり推進される。多くの人々は水保全に対する答えとして、芝生の面積を減らし、そこを砂利とプラスチックの海で代用しようとするが、これは水保全にとって自滅的であるだけでなく、樹木や潅木に対しても有害なもので、ゼリスケープと呼べるものではない。
計画 -- 重要な第一歩
新しいランドスケープのデザインを始めるのも、古いランドスケープのデザインを変更する場合も、計画は不可欠である。計画は精巧である必要はないが、まず、敷地がどちらの方角に曝されているかを考慮に入れるべきである。一般に敷地の中で、南や西に面して露出しているエリアは最も水分損失が大きくなり、特に、建物の近くや舗装された地表面のあるエリアでこうした傾向がより著しくなる。このような場所で節水をするには、硬質の地表面から少ない水でも育つ植物の植栽地へと変更をすればよい。他方、水保全に反するからといって既存の芝生を性急に引き剥がし、プラスチックや砂利でその空間を埋めようとしてはならない。南や西に面して露出しているところで多量の石を使用すると、住宅近くの温度を上昇させ水の表面流出を無駄に増やしてしまうからである。
斜面の特性
ゼリスケープにとって、傾斜や勾配もまた考慮すべきことがらである。特に南や西に面して露出している斜面は、表面流出と蒸発により水を浪費する。これを防ぐには3つの方法がある。
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地被植物を植栽する
斜面に地域耐乾性の地被植物を植える。地被植栽は水分損失を減らし地表面を陰にしてくれる。「ゼリスケープ:地被植物 推奨される種類」には、ゼリスケープが推奨する地被植物をリストアップしているので参照されたい。
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樹木を配置する
また、樹木を戦略的に配置することで、むき出しの斜面に陰をつくり、蒸発を抑えて冷たい土壌にしてくれる。
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テラス(段丘)状に成形する
テラス(段丘)状に成形された斜面は、表面流出を遅くし、より多くの水が地面にしみ込むことを可能にする。その結果、より水を節約することになる。
芝生を縮小する
狭い場所やコーナー、独立した島のような場所は、いずれも芝生にしない。メンテナンスの費用が高くつくだけでなく、水やりも困難で無駄になる。すでにランドスケープされている庭では、「ゼリスケープ:庭を改造する :必要ない芝生の範囲を査定し削除する方法」を参照する。
芝生は住居の近くやよく使うエリアのみに限定する。もし、敷地が大きいのならば、より遠くのエリアでは、近くのエリアよりも干ばつ耐性のある芝草を用いたり、ワイルドフラワーを含む草原に生育する植物を混合して植栽もしくは播種するのもよい。いずれも灌漑需要を減らすことになる。詳しくは「ゼリスケープ:芝生およびオーナメンタルグラス、芝生代替案のすすめ(準備中)」を参照する。
土壌整備
適切な土壌を整備することは、成功する水保全の鍵である。土壌が非常に砂質であれば、水や価値ある栄養物は根域以下に浸出して失われる。もし土壌がひどい粘土質ならば、水は表面流出によって地中に浸透せずに失われる。
良い土壌とは植物の健全な生活をサポートし水分を保存するものである。やや粒子の粗い土壌集合体である砂は孔隙をバランスよく含む。いわゆる理想的な土壌は、50パーセントの孔隙容積を持ち、土壌組成が砂、シルト、粘土のよいバランスから成っているものとされている。
もし土壌が重粘土であるならば、そこで発生する大きな問題は、粘土は土壌複合層を支配する傾向があるということである。分かりやすくいうと、粘土は均一な平板状に配列する微細な結晶から成るが、土中にこの結晶の量が多くなると、それは接着剤のような役目を果たし、一緒に砂やシルト分子を結合して、土壌を圧密されたほとんど空気のない状態にしてしまう。こうしてできた圧密土壌は、地表の水を浸透させないため、表面では水の流出が生じる。そしてさらに、土中に存在する水は、粘土自体によって非常にしっかりと保持されていて、植物がそれを使うことはできない。粘土質土壌に植えられた植物が、その地の土壌がたとえ湿っていても、しばしば水分の欠如からしおれてしまうのはこのためである。植物の根は生きるために酸素を必要とする。しかし、粘土質土壌では、酸素で満たされる孔隙は小さいばかりか、水で満たされてしまい、そのため、根はしばしば酸素欠乏に苦しむ。
他方、ひどい砂質土壌ではまったく反対の状況である。砂質は粒子が大きいので、粒子間は非常に大きな孔隙空間になり、そこに水を維持することはほとんどできず、水は重力により急速により下に浸出する。
しかし、敷地の土壌が「よい土壌」ではないからといって、なげくことはない。よい土壌とは1年でできあがるものではないのである。特に、庭のエリアには毎年有機物を施すようにして、徐々につくりあげていくものである。株の植え付けも播種をする場合も、そのひとつ前の手順として有機改良材を加えるようにする。このひと手間を惜しまずに、植物に適した土壌整備に時間をかけることで、その後の種まきや植え付けが、より完全な仕事となる。
有機物には幾つかの効用がある。土中の有機物は、根の深い発育を助け、土壌に保持されている水を取り出す。そして不経済で頻繁な給水の需要を減らす。土壌改良についての詳細は、「ゼリスケープ:土壌(準備中)」を参照する。
適切な潅漑による節水
適切な潅漑の方法を取ることにより、住宅屋外で使用する水量の30〜80パーセントを減らすことができる。
もしスプリンクラーシステムが既に設置されている場合は、それが全体をカバーしているかチェックする。植栽範囲が適切にカバーされないか、水が通路やテラスまで降りかかっている場合は、システムの調節が必要となる。これはスプリンクラーヘッドを代えること、つまり、より多くのヘッドを付け足すか、飛散範囲の角度設定ができるより効率的な性能を持つヘッドに取り替えることを意味する。
スプリンクラーシステムの飛散距離を見きわめるには、 灌漑システムをオンにしたまま、水が必要ないところまで飛散していないか、散水している範囲を観察する。舗装エリアまで水が飛散したり、潅木のエリアで水が重複している場合は、要注意である。いずれも水の無駄になるばかりか、後者においては、水の樹木や潅木へのかけすぎが(根腐れなど)他の問題に結びつくことがある。
芝生エリアの灌漑は、潅木のボーダーや花壇を潅漑する方法とは異なる。北や東に面して露出したエリアは、南や西に露出したエリアに比べて、頻繁な灌漑は不要である。傾斜地の灌漑は、平地に比べてよりゆっくりと水が吐出するようにしなければならない。こうしたもろもろを考慮するために、敷地と既存システムの関係をよく調査し、潅漑システムデザインの中で非能率を修正する。
ランドスケープをちょうど作ったばかりで灌漑システムはこれから設置というのならば、専門の潅漑会社に適切な仕事をしてもらうのが一番よい。システムは、そのランドスケープに適合し、植物の異なる水要求度にそったデザイン、つまり水の不必要な適用を縮小するためにゾーンを分けて設計されなければならない。ランドスケープデザインも、植物の選択も、潅漑システムも、目に見えてわかる節水体系をつくるように、すべて調整されるべきである。
レイズドベッドや灌木のボーダーなど、狭い植栽エリアにドリップシステムを設置するときは、従来の地上(ドリップ)システムのままでは、水の浪費を生じさせるので調整が必要である。
また、灌漑システムは、地下システム(地中に埋設すること)を使わずに灌漑ラインを地表に設置すると、水の流れ(配管)を観察することができる。芝生のように中に入り活動をするエリアでは地下システムを採用することが通常であるが、それ以外の植栽エリアでは、どちらでもかまわない。
芝生の灌漑では、毎回芝生全体を潅漑する代わりに、芝生が灰緑色になりはじめるなどの水を必要としているという目に見える徴候があらわれている場所の灌漑のみを行うのも、節水には効果的である。
少量を頻繁に灌漑する方法は、浅い根の発育を促すのでやめる。圧密土壌はすぐに捏ね土となり、水が浸透せずに流出する。この場合は、機械・器具で土に規則的に穴を開けるエアレーションが必要となる。
樹木や灌木の植栽エリアは芝生のエリアから離して設ける。そうすることで、灌漑により深い根まで水が届くようにするのが、もっとも適した灌漑の方法である。
ランドスケープ におけるマルチ
植栽エリアには、適切なマルチを選びマルチングをする。マルチングは地温の上昇を抑制し、土壌が風にさらされる率を減らすことにより、水の利用を減少させる。また、雑草の生長を抑え、土質も改善する。
マルチには2つの基本的な種類がある。すなわち有機マルチと無機マルチである。有機マルチには、ワラ、コンポスト、ウッドチップ、樹皮、緑肥作物や新聞紙などがある。無機マルチは、プラスチックフィルム(ビニールシート)、砂利、織布シートなどがある。時に両方を組み合わせて使用することもある。
土壌改良を優先する場合は、有機マルチを使用する。ウッドチップと堆肥がもっとも適している。こうした材料は分解すると、土壌に対して有機改良材を入れたのと同じ効果を与えてくれる。ミミズなどの土壤生物が土壌にこうした有機物を組み入れるのを助ける。
どのような場合に有機マルチを利用するのか。土壌の有機物含有量が低いところに腐植質を好む植物を植えることは不適である、この場合は、有機物を加えて通気と保水力を改善することが必要となり、有機マルチが好まれる。
他方、プラスチックフィルムのような無機マルチは、一時、効果的に雑草を除外する。しかし同時に、植物の根にとって不可欠な水と空気を遮断してしまう。織布シートやマットは、プラスティックフィルムよりも好まれる。織物とマットは、雑草は遮断しながらも水や空気交の換を可能にするからである。これに、砂利や樹皮のマルチを併用するのもよい。これらはそれほど費用がかからず、短命なプラスチックフィルムより長持ちする。より詳細については、家庭の庭で使用するマルチを参照する。
植物の選択
土壌、日照および潅漑システムに適した植物を注意深く選択する。
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