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ゼリスケープガーデンを創造するための基本的な知識・技術の会得を目的とする技術講座。
中でも専門性が高い灌水システムについて、基礎から学んでいきます。
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第5回 フィルター
マイクロ灌水やドリップ灌水では、*エミッター口径が非常に小さいため、水中の微
少な浮遊物質によって目詰まりが起こることがある。すると、計画された灌水の水量
が著しく低下してしまったり、電磁弁の開閉をする部分にゴミがつまり、水漏れの要
因にもなる。その対策として、浮遊物を取り除くフィルターが必要となる。

<フィルターとは>
フィルターは配水管内に混入した微細な粒子や水垢など浮遊物質をろ過し、灌水装置
の目詰まり等を防ぐための器具である。フィルターには、大小さまざまのサイズや仕
様があるが、ランドスケープの灌水において使われているのは、樹脂製の配管に直接
つなぎ、システムを妨げない大きさの小型フィルターである。
フィルターには、ろ過をするために、フィルター装置の内部にエレメントと呼ばれる
ろ過材が入っており、それによって微粒子や水垢などが除かれる仕組みになっている。
エレメント(ろ過材)には2つの種類がある。
1.スクリーン
2.ディスク
<エレメントの種類>
1.スクリーン
金網や繊維を材として作られている。筒状に加工されたエレメント(スクリーンと呼ぶ)に水が通過する際、スクリーンの網目の大きさ(メッシュ値)に対応した浮遊物が除去される。
2.ディスク
溝の掘られた円盤を何枚も重ね合わせて作られているのでこう呼ばれる。盤と盤の間に溝孔が形成され、その孔に水を通すことで孔(あな)の大きさに対応した微粒子等のゴミを除去する。溝孔の大きさはスクリーン同様メッシュ値で表示される。
<メッシュ値とは>
1インチ当たりの孔の数や溝の数を示している。メッシュ番号が大きくなれば、インチ当たりの孔の数が多くなるため、より細かな物質まで除去できることになる。例えば50メッシュとは1インチの中に50の孔(あな)があるということである。
現在は、メッシュ値以外にも、直接孔の大きさを表示するmm(ミリメートル)やミクロン**とが指標として表示されている場合もある。
主な灌水装置における最適なエレメントのメッシュ値
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灌水装置
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メッシュ値
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スプリンクラー
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20-30メッシュ
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マイクロスプリンクラー
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50-75メッシュ
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ドリップ
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120-155メッシュ
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参考:イーエス・ウォーターネット資料
注釈)
*エミッター ・・水の吐出する部分のこと。
**ミクロン ・・長さの単位。1ミクロンは1ミリメートルの1000分の1、すなわち1マイクロメートル。
[雨水利用の場合]
これまで説明したものに加えて、水源の水質に混入物が比較的多い場合や、混入物の
大きさが大きい場合がある。例えば、雨水利用を考えた場合である。この場合には段階的な除去処理が有効である。目の粗いフィルターから目の細かなフィルターへ段階的に水を通すことで大きな浮遊物から順に効果的な除去ができる。確実に除去を行わないと器具の故障の原因ともなるため注意したい。
段階的な除去
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除去段階
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浮遊物の大きさ
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フィルターの目の粗さ
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第一次
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大

微少
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粗い

微細
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取水前の樋に流れる段階で、目の粗めの網等を用いて枝、落ち葉などのゴミの除去。 |
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第二次
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雨水タンクに貯水される前の段階で、メッシュが中程度のエレメントや***砂フィルター(砂ろ過)で比較的大きな浮遊物質を除去。 |
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第三次
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灌水装置末端部に配水される前のコントロールヘッド部での除去。この段階で前述した灌水末端部の装置に適したメッシュ値のエレメントを用いる。 |
***砂フィルター(砂ろ過)・・
ろ材は細かい砂または細かな砂利(主に砕いた花崗岩か珪土)を使用する。ろ過効率が低くなるため、粒径の違う砂などを層状にして使うことは避ける。水が下方に浸透する際に砂や砂利によって浮遊物質を除去する。しかし非常に細かな物質を除去することは困難である。
<フィルターの管理>
フィルターは定期的な洗浄が必要となる。
洗浄する回数は混入する浮遊物の割合によるが、これは灌水末端部の吐出量を定期的に観測し、ある程度低下が確認されたら行い、以降はその期間を参考に定期的な洗浄を行えばよい。水源が上水道などの場合は混入物は少ないが、雨水などの場合や、装置を一定期間使用していなかった場合には、フィルターの点検を忘れないようにしたい。
参考資料
『マイクロスプリンクラーかんがいテキストブック』(社)畑地農業振興会
『土地改良事業計画指針 マイクロかんがい編 』農林水産省構造改善局計画部
『イーエス・ウォーターネット製品ガイド』(株)イーエス・ウォーターネット
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