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 >> ゼリスケープ技術講座 -灌水システム編-


ゼリスケープガーデンを創造するための基本的な知識・技術の会得を目的とする技術講座。
中でも専門性が高い灌水システムについて、基礎から学んでいきます。

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第3回 水源についてー1 水道水

灌水をするにあたって水はどこから取るか?
灌水システムを導入する際、最も基本であり重要なことは、安定した水源を確保することにある。

日本における総水量と利用水
日本の年間降水量は約6500億m3。そのうちの35%が蒸発散して大気中に消え、残り約4200億m3は、地表面から河川、湖沼に流れ出る。その中で実際に利用されている量が877億m3(14%)で、残りは河川から海へ流出したり、地下に浸透してゆく。そしてそのうち生活のために利用される水は164億m3である。その他は農業・工業用水として使われる。つまり、雨量の多い国といわれていても、生活に使うことのできる水資源はわずか3%なのだ。
貴重な水を灌水として使うために、正確な知識のもと適切に灌水システムの設計ができるようにならなければならない。

水源の種類
一般家庭での灌水において、水源として考えられるのは一般的には水道水、そして徐々に利用が増えつつある雨水や生活排水を再利用した中水と呼ばれる雑用水、その他井戸から汲み上げられる地下水などがある。今回はまず水道水を取り上げる。

1. 水道水(WATER)

水道水とは水源(ダム、河川、湖沼)から浄水施設に取水され、砂やゴミを除去し、消毒をされたのち各家庭に給水される水で、人が摂取しても問題がないように管理された人工の水だ。その水道水を灌水システムに取り入れるために、まず知っておくべきことは水圧と流量についてである。もちろん水圧と流量は、いずれも他の水源についても考えるべき項目なので概論的な説明もあわせてここで行ってしまう。

<水道の水圧>
水圧とは1kgの水が、面積1cm2に与える圧(力)のことで、1 kgf/cm2 (1 kgf/cm2=0.1Mpaメガパスカル=14.2psiピーエスアイ)と表示される。現在、配水施設による配水圧の最低確保水準の目安は、1.5kgf/cm 2 (0.147MPa)とされている。一般家庭での水圧は地域によって、また時間によって若干上下する。一般的に地形の起伏の差が大きい地域では水圧の差が大きい。また浄水施設から離れるほど水圧は低くなる。水圧を正確に計る場合は、市販されている圧力計を用いるが、地域による大まかな水圧は地方自治体の水道課に聞くとわかるので、灌水システム導入前に確認しておくことが必要である。
灌水器具のうち、ドリップ灌水のように低圧で最適な効果を発揮するものの場合は、適用圧力以上だと十分な効果が得られないので、減圧弁などで水圧を調整する必要がある。逆にスプリンクラーの場合は圧力が足りないと十分な性能が発揮できないので、灌水器具のカタログにて各々の器具の適用水圧を確認の上、設置する。

<流量>
流量とは、一定の管や灌水器具を流れる水の量のことをいう。流量の表記はL/H(Liter per Hour :1時間あたりの流量)、またはL/M(Liter perMinute :1分間当たりの流量)で表される。水道水の簡単な測定は、実際に蛇口をひねってみて1分間に流れる量を測ってみることでわかる。給水栓(蛇口)に灌水システムを取り付ける場合、各々の灌水器具からの灌水量(吐水量)の合計が、給水栓の流量を超えないように設計する。灌水器具のカタログに表記されているそれぞれの灌水量(吐水量)を参考にする。
このことから流量を測ることは、灌水システム設計の上で不可欠である。

<水道水から灌水装置への取水>
まず給水栓の数や位置を把握することが必要である。給水栓が灌水専用でないときは、給水栓(蛇口)と灌水システムをつなぐコネクターを2分岐のものにするか、着脱が簡単なコネクターにする。灌水専用の給水栓でも一般的には着脱が簡単なコネクターに灌水装置をパイプでつなげる。よりよい灌水計画のためには、新たに設計される建物の灌水を請け負う場合は、給水栓が適切に設置されるように計画の時点でアドバイスを伝えることが望ましい。もし既存の物件で給水栓が適切な位置になく、新たに給水栓を引き出す場合は、地方自治体指定の給水装置工事業者に依頼する必要がある。給水栓より元、つまり蛇口から上流の設置工事は指定業者で、それより先が灌水技術者の作業範囲ということになる。

文・美濃輪 朋史