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ゼリスケープガーデンを創造するための基本的な知識・技術の会得を目的とする技術講座。 中でも専門性が高い灌水システムについて、基礎から学んでいきます。
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第2回 灌水システムの基本構成
ゼリスケープにおける考え方では、灌水システムとは、ただ時間や労力を惜しむために導入するシステムと考えるのではない。
ゼリスケープの実現には、(1)計画とデザイン、(2)土壌改良、(3)芝生の見直し、(4)適切な灌水方法による効果的な水やり、(5)気候にあった植物の選択と必要水分量毎の配置、(6)マルチング、(7)メンテナンスという7つの原則がある。
適切な灌水方法による水やりとは、個々の植物の水要求量や土壌、微気候などをトータルに考えた上で、適切な灌水配置をデザインすることで、必要最小限の灌水方法を確立し、資源エネルギーの浪費を防ぐことである。そこで正しい灌水システムがデザインできることを最終目標に本講座を進めていく。
まず灌水システムの基本構成を紹介する。それは次の1〜6の項目のとおり、取水から植物の根元に届くまでの間を送水したり水を制御する各々の装置からなる。
さらに次回より、この構成要素の各パーツについて順に取り上げ、その後灌水システムのデザインへと進める。
灌水システムの基本構成


1.水源
◎水源
水源として最も一般的なものは水道管からの取水であるが、そのほかに雨水タンクに集水した雨水やお風呂の残り水などの洗剤で汚染されていない生活排水(グレーウォーター)を再利用したもの、または池や川などからの取水が考えられる。
水道以外の水源からの取水は、水圧を必要とするためにポンプの設置が必要である。
2.濾過装置
◎フィルター(濾過装置)
どのような水源でも欠かせない重要な装置の一つ。特にドリップ等の低圧灌水システムを導入する場合は、微細な異物でもその灌水口をふさぐ恐れがある。水道以外の水源を導入する場合は、特に慎重にフィルターを選ぶ。
3.灌水制御
◎電磁弁
主管から配管を分岐する前に、まず付けるもので、電気により弁の開閉を制御することができる。一般には、コントローラーにつなげて、自動灌水システムとする。もちろん手動での開閉もできる。
◎コントローラー(タイマー)
電磁弁の開閉を制御する装置。それぞれの性能に応じて、灌水時間や回数を自由にプログラムすることができる。複数の電磁弁を制御するタイプは、各々の電磁弁を個別に制御することで、複数のラインによるプログラムを、一箇所で管理することができる。現在多く出回っているのは、ひとつのラインのみを制御する、乾電池などで動くタイプで、これは、誰でも簡単に取り付けることができる。
○雨センサー
センサーが降雨を感知し一定の降水量に達すると、電磁弁の開閉を制御して弁の解放を止める。
4.送水
○プレッシャーレギュレーター(定流量弁)
灌水ラインへの水圧を一定量にするための装置。水源側の圧力に対し、灌水側の圧力を一定に保ち送水する。
○逆止弁
水の逆流を防ぐ装置。水道水を使う場合など、水源の汚染を防止するために必要な弁である。アメリカでは灌水装置には必ず取り付けなければならないことになっている。
5.灌水器具
◎スプリンクラー等の灌水装置
植物に灌水するための直接の装置。様々な種類が開発されている。灌水場所、植物、土壌に合った灌水装置を設置する。主なものにスプリンクラー、ドリップ等がある。
6.その他
△液体肥料混合装置
絶対必要な装置ではないが、灌水システムに導入することができる。灌水と同時に施肥をおこなうことができるため時間と労力が省ける。ただし、庭における植物の種類は多種に及ぶため、一概に同じ肥料や濃度を施すことには注意が必要なため、汎用性の広い肥料や、薄めの濃度での使用をする。一般の植栽への施肥は基本的には株もとへ直接固形肥料で行い、液体の施肥は補助的な方法と考えた方がよいであろう。
以上1〜5(場合により6も)の構成要素が、それぞれに適切な働きを示すことが、「正しい灌水システム」を作り上げる。まず、この骨格を認識することが大切である。次回は「水源」について詳しく取り上げる。
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