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環境、気象、経済、政策など地球上で起きている様々な事項や現象について、ゼリスケープをよりよく理解するための専門用語を、事例を交えて解説します。 ************************************************************** 第5回 京都議定書
2008〜12年における温室効果ガスの排出量(年平均)を1990年比で、5.2%(日本6%、アメリカ7%、EU8%など)削減することを義務付けている。京都議定書の発効要件として、�@55カ国以上の批准、�A批准国の1990年における温室効果ガスの排出量(二酸化炭素換算)の合計が先進国全体の1990年の温室効果ガス総排出量(二酸化炭素換算)の55%以上を占めることを定めている。 アメリカの反対とロシアの曖昧な態度のために保留状態にあった温室効果ガス削減の京都議定書も、ロシアが2004年9月30日閣議において批准を決定したことで、05年にも発効する見込みとなった。産業界に対する配慮から批准をためらっていたロシアも、国際世論の反発を買うことを恐れて決着を図ったようだ。ロシアは近年EUに急速に接近しているが、その流れの中での行動だろう。 日本の目標は、1990年と比べて6%削減するとしているが、実際は2002年度の排出量は、削減どころか逆に7.6%も増加している。人間に例えると、ダイエットをして6kg体重を減らすつもりが、逆に7.6kg太ってしまったような危機的状況となっている。ダイエットがうまくいかない原因は、化石燃料などを使用したときに排出される二酸化炭素が増えていることにある。 二酸化炭素排出の8割近くは企業活動によるもので、1990年と比べ5%近く増加している。温室効果ガスの排出と経済成長は完全にリンクしており、同じ経済構造で経済成長を維持したまま温室効果ガスの排出量を削減するのは、至難の業であるということが言えよう。目標達成のためには環境税の導入などのかなり思い切った施策が必要だと意見もあるが、産業界からの反発は必須である。 しかしながら、環境機器の開発や、環境対策への投資は、経済発展を抑制する要素ではなく、これからの時代、むしろ新たな需要と技術革新を産む、経済の起爆剤となりうると発想の転換をし、それが、産業革命、IT革命に続く、第三の「環境革命」をもたらすことも一方で期待されている。 アメリカの京都議定書離脱は、世界規模の地球温暖化防止を阻むものとして各国の批判を浴びているが、その理由としては温暖化対策の効果への疑問、開発途上国の参加義務がない問題、アメリカの経済に利益を与えないという三つが考えられる。 批准した国が第一約束期間の2012年までに削減目標を達成できなかった場合は、超過量の1.3倍にあたる量の削減義務を次の約束期間に持ち越されるなど罰則があるが、それには法的な拘束力はない。 そのため、アメリカの出した京都議定書の代替案は、2002年を基準に国内総生産(GDP)当たりの温室効果ガス排出量を、10年間に18%減らすといったものだ。けれどもGDP当たりの目標では、GDPが増えるにしたがい、目標の排出総量も増えてしまう。経済成長は是が非でも手放さないアメリカらしい譲歩策といえよう。 こういうと、「アメリカ国民の環境意識は概して低い」と思われがちだが、「ゼリスケープ」の思想そのものを生み出したのもまたアメリカである。 「消費大国としての生活を享受し過ぎた結果、そこから抜け出すのは至難の業となってしまっている」とも言われるが、 その一方で、実際に環境について調べている外国人に聞くと、「アメリカは、世界最大の環境破壊の国ではあるが、また世界最高に環境保護意識の進んでいる国でもある。環境保護の意識が市民レベルで非常に高い」と違った答えが返ってくる。 つまり「環境保全意識が高い人はとてつもなく高く、環境を気にしない人は、まったく気にしない」と言え、そしてその双方とも数は多い。つまり、必ずしもそのスタンスが国内でも一貫しているわけではない。「環境よりも経済」の姿勢を貫くアメリカ現政権であるが、政府とは裏腹に、やはり環境大国でもあるのだ。現在、広く知られる環境思想家の多くが米国出身で、「沈黙の春」の著者レイチェル・カーソンをはじめ、アースポリシー研究所のレスター・ブラウンなど世界に向けて環境に対する警鐘を鳴らしている。 アメリカは技術、知恵を大事にする国でもあり、ただやみくもに「みんなの環境意識を高めよう」とするだけでなく、市場で役に立つ技術を新しいシステムとして活用する「知恵」で、問題を解決しようという姿勢を国民性として持っている。 現在の状況は、現アメリカ政府のブッシュ政権の支持基盤によるところも大きいが、環境に対する草の根運動から今後どのような動きがでてくるか、日本も同様に経済優先のみではない企業が増えていき、環境と経済の両立を実現する原動力となることが期待される。
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企画:森山晶子 |
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