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>最新号 | ||||||
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環境、気象、経済、政策など地球上で起きている様々な事項や現象について、ゼリスケープをよりよく理解するための専門用語を、事例を交えて解説します。 ************************************************************** ■第1回 仮想水(バーチャルウォーター)農産物や製品の製造に使われた水を、その製品の購入者が間接的に消費したとする考え方のこと。 総合地球環境学研究所・東京大学助教授の沖大幹氏らが、穀物や肉類を生産するのに、灌漑(かんがい)用水、雨水など、どれだけの「水」が必要かを試算したところ、小麦、トウモロコシなどの穀物には、平均的な栽培期間やその間に蒸発散する水量から、製品の重量に対し約2000倍の水が必要になる。精肉は、家畜が飲む水に、既に多量の水が投入されている飼料の分が加わることで、豚肉が6000倍、飼育期間が長い牛肉にいたっては2万倍になることがわかった。たとえば牛肉100グラムを生産するのに、約2トンもの水が消費されている。
もっと進めて考えると、これらは農畜産物だけではなく、衣料品、工業用品などあらゆるものにもあてはまり、安価な労働力供給のため海外生産が増大している、パソコンや衣類の生産にも大量の水が使われている。それを換算するとより多くの水を日本が消費していることになる。 しかし、これほどの仮想水を日本に輸出する国に、水に余裕があるかどうかは別問題だ。水危機に近づいている程度を示す「水ストレス」という尺度があるが、実際に使った水量が、その地域で使用可能な総量の4割を超えるとストレスが高い。仮想水とはつまり他国依存の水であるが、日本への主な仮想水の輸出元米国の農業地域の多くや、近年輸出が増えている中国でも北部の乾燥地帯が8割を超える。 世界的な水資源不足を考えると、日本は現在の生活水準を将来も維持することはきわめて困難で、世界的な水資源の不足と無縁ではいられない。「水が豊かな日本」という既成観念で考えられがちだが、日本が輸入に頼らずに今の生活水準を維持するには、さらに国土を1.5倍ほど広げる必要があるということになるともいう。 バーチャルウォーターの概念は、あくまでも考えるための道具であるが、これにより、自然の水は少ないが、経済活動によって水が足りている国と、経済活動込みでも水が足りない国を、きちんと評価することができる。また、将来の食料需給についても、人口増加にあたりどのくらいの食糧が必要で、それを作るためにはどのくらいの土地と水が必要かということを推定することができる。さらに、この概念は、灌漑をして畑に水をやり、というプロセスで、どのくらいの水が使われているかを吟味することにもなるので、どこで節約できるか考えることにもなる。食糧だけでなくあらゆる生産活動と水の問題が、非常に密接に繋がっていることを明確にする指標でもある。 また、自分が消費するものを作るために使われているバーチャルウォーターについて考えることは、手に触れないものの価値を見出し、遠くの水に思いを馳せ、世界のどこかで水に困っている人々、将来水で困るかもしれない次世代のことを考えること、つまりは水を有効に使う方策を考えるということに繋がっていくものであろう。 |
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企画:森山晶子 |
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