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> 最新号 | |||||||||
| >> 世界ゼリスケープ事情 | ||||||||||
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■米国アイダホ州ボイジー市 アメリカ全体では上水道事業の15%が民営化されているが、ボイジー市の水道事業を担っているのも、ユナイテッド・ウォーター・アイダホという民営水道局である。因みに、この社名が使われ始めたのは、ユナイテッド・ウォーター・リソース社が、同じく民間企業であったゼネラル・ウォーターワークス・コーポレーションと合併した1994年の翌年からであるが、民営水道事業の歴史は長く、アイダホが州として認められた1890年代に遡る。 ユナイテッド・ウォーター・アイダホは、一般市民向けの各種教育プログラムを通じて水保全の推進を図っている。これらの教育プログラムの運営は、水道局が中心となってはいるが、アイダホ植物園やアイダホ大学、市当局、その他関連組織との連携を図りながら、より多くの住民に向けて水保全意識を高める啓発運動が行われている。 ユナイテッド・ウォーターが実施している水保全活動の主なものは、次の通りである。
ユナイテッド・ウォーターの水保全プログラムに関して、協力関係にある団体のひとつにアイダホ植物園がある。同植物園は、NPOによって運営されており、地域住民や観光客のための美しい環境を提供している。50エーカー(約20万�F)の敷地は、元々アイダホ州刑務所にある農場であった。この刑務所は1973年に閉鎖され、その後の12年間はそのまま放置されていたが、1984年にリース契約が締結され、岩と瓦礫と雑草で荒れ果てていた土地は、耕され、整備の行き届いた植物園として生まれ変わった。ここでは、自生植物の育成・紹介の他、地域住民向けの各種イベントやワークショップ、結婚式、学校の課外授業、園芸教室などが幅広く行われている。美しいランドスケープの中で、教育プログラムとリンクしながら、植物やガーデンに関する技術的なことに加え、環境保全の重要性を訴えている。 ユナイテッド・ウォーターが主催する、水保全のための教育プログラムが14年の実績を持つことは先に述べたが、当初はこのプログラムに対して懐疑的な意見の方が多かったという。それが14年という歳月を経て、広く市民に認知されるまでに成長している。その教育プログラムの核になっているのが、前述のようにゼリスケープの原則であり、水保全を推進するに当たって、その実効性は間違いなく認められている。 また、この成功のもうひとつの理由としては、水道局が中心となって築き上げたネットワークがある。市当局、植物園、自然教育園(ネイチャーセンター)、フィッシュ&ゲーム(環境保全とレジャーを司る州政府組織)、大学、芝生生産者などが水道局を軸に連携し、有機的に補完し合いながら、水保全、環境保全、生態系保護を推進するシステムは、他州にも例がないほど緊密なものである。ボイジー市の水道局は前述の通り民営であるが、飲料水の安定供給は経営面からの至上命題でもあり、また民営水道局であるがために柔軟かつ積極的に各所に働きかけができるとも言えよう。これは、コミュニティーの利益にも合致する。同じ目的意識をもつ人や組織がパートナーシップを築いて行動し、それが持続しているボイジー市の取り組みは、そのパートナーシップがうまく機能している好例であるように思われる。 |
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文・平松宏城 |
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