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■第5回 太陽光発電
資源エネルギーを活用した住環境ということで、今回は建物を含めた敷地全体も庭と見なした時にできるエネルギー保全・活用対策として、個人の住宅でもできる太陽光発電を取り上げる。
[太陽光発電とは]
地球温暖化などの環境問題やエネルギー問題が切実となり、環境意識の高いユーザーが増えたことに加え、国からの補助金制度もあり、現在個人で太陽光発電システムを導入する家庭が増えている。また、日中太陽光で発電して使い切れず余った電力は電力会社に売るシステムも整備されている。
太陽光は永続的で膨大なクリーンエネルギーである。人間に欠かせないものでありながら、夏場多すぎると冷房による空調費用=石油エネルギーの消費を増大させる。調査によると、最近家庭の電力消費に占める空調関係の電力の割合は、全体の3割程度となっている。
その太陽エネルギーを太陽光発電によって家庭の消費電力のほとんどをまかなうことで、標準的な家庭なら、将来的に年間累計で電力を完全に自給自足することも可能ともいわれる。太陽光発電システムを設置されている個人住宅は現在全国で約15万軒。(新エネルギー財団資料より推測)特に今年度は平成14年度比で約60%増の勢い、毎月5000軒ペースで設置する住宅が増えている。
[普及の背景]

約400万年前に人類が登場してから使われてきたエネルギー源は、火から薪、水や風などから、200年前頃から産業革命により著しく消費エネルギーが増加した頃より石炭になり、今や石油・天然ガスなどの化石燃料が主なエネルギー源となっている。
人間は豊かで便利な文化生活を創造してきたが、その代償として化石燃料から生じる温暖化効果ガスを増大させ、地球環境を破壊している。化石燃料は無限にあるわけではなく、各々の可採年数(埋蔵量 を年間消費量で割った年数)は、およそ石油40年強、天然ガス・ウラン70年前後、石炭230年前後と予測されている。
石炭や石油を燃やす事により発生する亜硫酸ガスなどの硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などが酸性雨をもたらし森林や農作物・魚貝類の減少を招き、二酸化炭素(CO2)などによる温暖化効果ガスの増大は、異常気象や砂漠化、北・南極の氷を溶かし海面の水位の上昇などを引き起こしている。
一方、地球に到達する太陽エネルギーは大気圏外で1m2当たり1.38kW、地表では、1m2当たり1kW程度であり、地球全体に降り注ぐ太陽エネルギーを100%変換できるなら世界の年間消費エネルギーを僅か1時間で賄うことが出来るといわれている。
現在、日本のエネルギーは90%近くも海外に依存している。1997年12月に、気候変動枠組条約第3回締約会議(COP3)における京都議定書で、日本はCO2排出量を6%削減を目標としているが、現実は2000年時点で8%も増えており、特に家庭部門が増えている。今後、エネルギーの効率的な利用と非化石エネルギーの活用によって、環境との調和を保ちながら経済水準の維持、発展を図って行くことをめざし、政府は2010年度の太陽光発電導入に482万kW(一般住宅約150万軒分)という目標数字を掲げて導入を推進している。
[太陽光発電のしくみ]
1.太陽電池の原理

太陽の光エネルギーを吸収して電気に変えるエネルギー変換を”太陽電池”と言う。電池の名称がついていても電気を貯める機能はなく、日光が入射した時に、光の日射強度に比例して発電する。英語ではPV(Photovoltaic:光発電)と呼ばれている。
性質の異なる2種類の(P形、N形)の半導体を重ね合わせたもので、太陽の光が当たると電子(−)と正孔(+)が発生し、正孔はP形半導体へ、電子はN形半導体側へ引き寄せられる。この2つの半導体を電線でつなぐと電流が流れるしくみである。
2.太陽電池の種類
太陽電池は用いられる材料により下記の種類に分けられる。
| シリコン系 |
結晶系 |
単結晶シリコン太陽電池
多結晶シリコン太陽電池
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単結晶と多結晶のシリコン基板を使用したタイプで発電効率が優れている。用途:住宅用、公共産業用等
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| 非結晶系 |
アモルファスシリコン太陽電池 |
ガラスなどの低価格基板の上に、薄膜状にアモルファスシリコンを成長させて作る太陽電池で、低コスト化が期待されている。用途:電卓や時計等 |
| 化学物半導体系 |
結晶系 |
単結晶化合物半導体太陽電池
(GaAs.InP等)
多結晶化合物半導体太陽電池
(CdS/CdTe,CIS等) |
単結晶系はGaAs及びInPを用いた太陽電池が人工衛星などの特殊用途に、多結晶系ではCdS/CdT及び、多結晶薄膜系に位置付けられるCISなどがあり、材料によって用途や使用方法がかわる。 |
これらの太陽電池は、用途に応じて住宅分野、道路・海上・通信分野、農業分野、防災保安分野、公共産業分野、エネルギー供給施設、宇宙発電などに活用されている。
3.太陽光発電システムの種類
太陽光発電システムは、大きく分けて系統連系型と独立型のふたつのシステムがある。住宅用や公共産業用では、商用電力系統と連系して電気を売買する系統連系型システムがほとんどで、発電量が不足するときには電力会社から電気を購入し、発電量が余るときには電力会社に買い取ってもらうことができる。住宅用太陽光発電システムは、太陽電池により発電した直流をパワーコンディショナに通すことによって電力会社と同じ電気(交流)に変換し、様々な家電製品に電気を供給する。
つまり、電力会社の電気と太陽光発電による電気を併用することで、必要なだけの電気を使用し、足りない分あるいは余った分を電力会社とやりとりすることになる。 これを系統連係型太陽光発電システムといい、電気のやりとりは自動的に行われる。
独立型は商用電力系統と完全に分離したシステムで、太陽光で発電した電気だけで運転するもので、街路灯や時計、無線機、道路標識、離島や山間部等の非電化地域における交流電源に使用される。
[太陽発電の導入効果]
太陽光発電システムを導入する場合、初期費用はかなり大きい。しかし、企業や公共施設などで導入するにあたって次のような効果があることで、設置に踏み切るケースが多い。
導入効果
- 環境貢献効果
CO2削減などの環境保全、ISO14001取得への効果など、環境マネジメントに直接寄与ないが、環境マネジメント等取得の為の環境意識高揚効果につながるものと考えられる。
- 環境対応企業としてのCI(広告宣伝)効果
- 地域貢献
地域住民への啓蒙、自治体の取組イメージアップ、さらに他地域への波及効果が期待される。
- 防災対策
最低限のライフラインの確保、地域住民への安心感など。
- 教育効果・啓発効果
学校・教育施設において、子供達への実教材、子供達への環境マインド拡大などに。
- 経済効果
また、一般住宅設置においても電気代支出が減るだけでなく、将来生活への設備投資や電気を自給自足できる満足感や安心感、地球環境保全における先駆者としての満足感などメリットがある上に、初期設置費用の一部に対し国から補助金が出ることも、設置に拍車をかけているようだ。
[一般住宅における太陽光発電設置にあたって]
住宅用太陽光発電システムの仕組み

太陽光発電システム(系統連系型)は主に次の機器で成り立っている。
- 太陽電池モジュールパネル

太陽の光を受けて効率よく電気をつくる太陽電池モジュールをパネル化したもの。太陽電池の種類によって価格や発電効率がかわってくる。
住宅用に使用されるのは、上記表中のシリコン系太陽電池で、下記のような特徴がある。
A 単結晶タイプ:多結晶にくらべて価格は高いが発電効率が高い
B 単結晶+アモルファスタイプ:ハイブリッド 高発電タイプ
C 多結晶タイプ:リサイクルのシリコン原料で作られ、コストパフォーマンスが高い
D アモルファスタイプ:ガラスなどの低価格基盤に薄膜のアモルファスシリコンを成長させて作る太陽電池で、現在は主に新築向け。
つくられた電気は家庭で使えるようにパワーコンディショナに送られる。

- パワーコンディショナ
太陽電池モジュールで発電された直流電力を家庭で使える交流電力に変換。さらにシステム全体の運転を自動管理する。

- 接続箱
家庭の各電気機器が使えるように電力を分配する。
- 売電用検針メーター

発電により余って売った電力や不足して購入した電力をそれぞれの電力量計で計量する。
kW(キロワット)単価とは
太陽電池モジュール(パネル)1枚の最高出力を150Wとした場合、20枚設置すると、3000W、つまり3kWのシステムになる。パネルの外寸をざっと1m×1mとすると、このパネルを屋根などに20枚取り付けられる住宅は3kWということになる。屋根形状や各メーカーのパネル出力や寸法、電気の配線ルールによってそのシステムが決まる。
例えば3.0kWのシステム設置で費用が210万円(税抜・工事費込み)だった場合
210万円÷3kW=70万円(税抜)
1kW当たりの単価は70万円と求められる。
このkW(キロワット)単価(税抜)とシステム全体のkWが、設置費用が適正かどうかの判断ポイントとなる。
平成14年度の設置者の平均購入kW価格は、727,000円/kWとなっている。(新エネルギー財団調べ)これをひとつの基準とするとよい。
稼働・メンテナンス
基本的に一度設置すれば、数年おきの点検をする以外、後は操作の必要もなく動く。
朝、日が昇ると自動的に発電を始め、お昼前後に発電のピークを迎える。そして夜、日が沈むと自動的に発電が止まる、これが毎日の繰り返しである。全自動運転なので、留守中はもちろん、雨天日でも、雨量や性能によって発電もする。
電気の売買について
電気は夜間や消費電力の多い時は、自動的に買電に切り替わり、昼間発電量の多い時は売電になる。これらの料金は別々に検針され、それぞれの料金を精算することになるので、料金の精算はされない。売電用検針票が送られてくるので、それを設置者が自分で管理することになる。これは楽しい作業でもある。
災害時の電力使用について
自立運転機能付きのパワーコンディショナを使用している場合は、昼間、太陽電池が発電している間は、非常用電源として使用する事ができる。しかし、使用できる電気量には、パワーコンディショナによって限りがあるので注意が必要である。
また、蓄電池を併用すれば、停電時の夜でも使用することができる。
販売施工店によると、家庭内で使用する蓄電装置といえば一般的にはUPS(無停電電源装置)というものがあるが、0.65KW3.3Aタイプ(100Wの電力を21分間使用できるもの)で¥45,000程度で、3KW15Aタイプ(100Wの電力を120分使用できるもの)で¥110,000程度とのこと。家庭で使用する電気を全て賄おうとすると、かなり大型のものを取り付ける必要があり、金額的にも高額なものになる。
現状では産業用のものはあるが、 一般家庭用となるとまだまだ先の話と思われるとのことだ。
見積について
それでは、いざ設置を検討しようとする場合、どこに見積もり依頼をするかが問題になる。現在補助金制度もあり、多くの業者が太陽光発電の設置業務を行っているが、まだ一般的な商品でなくかつ高額で相場もわかりにくいため、1社に見積もりを頼むと安いか高いかもわからず、工事を依頼してしまったり、またはまだ設置するかどうかわからないのに見積もりを頼みにくいといった状況がある。そこでインターネットによる「太陽光発電見積工場」といった見積もり斡旋サイトがある。これは最大5社まで、設置しようとする地域に対応するメーカーや販売店が、設置者は匿名のまま個人宅の条件に合わせて、設置費用、発電量シュミレーションなどを出してくれるサービスである。匿名のままメールにて質問等のやりとりができるため、訪問営業に煩わされることなく比較対照ができ、業者を決定して初めて実際の施工場所での細かい条件を検討できるというものだ。見積もり依頼自体は無料なので、設置を検討される方は是非一度利用してみることをお勧めする。
太陽光発電見積工場 http://www.taiyoko-hatuden.com/construction.html
設置者の声
「発電量をチェックする楽しい日課が増えた」
「自然と共生できる充実感が心を豊かにしてくれる」
「毎日の生活の中で、発電量をグラフにし、電気代の売り買い記録を付けるという家族共通の楽しみが増えた」
「夏の暑い日、モワーとしていた2階の部屋が太陽電池パネルを取り付けてから少し涼しくなった」
など、環境貢献効果だけでなく、実際の生活の中での楽しみや付加価値によるメリットの声が聞かれる。
[補助金制度]
国は代替エネルギーと地球規模での環境問題を解決する手段として、太陽光発電システムを有効と考え、一般家庭への普及を促進するために設置費用の一部を補助している。
経済産業省の補助制度は、一般住宅への本格的な普及を後押しする、平成6年度からの「住宅用太陽光発電システムモニター事業」開始以来今年度で10年目を迎える国の補助金制度である。
申込窓口:新エネルギー財団 http: //www.nef.or.jp
平成15年度 募集期間
上期募集 15年4月21日(月) から 15年9月30日(火) まで
下期募集 15年10月1日(水) から 16年2月20日(金) まで
募集について
先着申込順で受付け、予算が無くなり次第募集終了。
補助金額について
平成15年度上期 1kW当り9万円
平成15年度下期 1kW当り9万円
(10kW未満のシステムに適用)
これは、国の補助金額(平成15年度現在)が1kW当たり9万円ということなので、3kWの場合×9万円=27万円支給となり、上記kW値の例によると、実質の設置額210万円+10.5万円(消費税分)ー27万円=193.5万円(税込・工事費込み)となる。

各自治体でも太陽光発電システム設置者に『追加補助や低利融資などの支援』を実施している。
富山県内の各自治体における太陽光発電補助金マップ
http://www.j-sanyou.co.jp/j_pv_panel.html
長野市
http://www.city.nagano.nagano.jp/ikka/kankyo/onndannka/sun/sunmain.htm
愛知県豊田市
http://www.city.toyota.aichi.jp/ae00/ae02/taiyoukou/hozyo2.htm
愛知県西尾市
http://www.city.nishio.aichi.jp/kaforuda/16kankyou/kankyou/taiyouko/taiyokotetuduki.html
千葉県市川市
http://www.city.ichikawa.chiba.jp/net/kankyou/menu3/cont3_05/cont3_05.htm
和歌山県桃山町
http://www.town.momoyama.wakayama.jp/solar/taiyouko.html
長野県千曲市
http://www.city.chikuma.nagano.jp/b-shimin/k-seikatsukankyo/hozen-taiyou.htm
岡山県新見市
http://www.city.niimi.okayama.jp/soshiki/kikaku/chiiki/taiyou/youshiki.html
愛媛県松山市
http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kankyouj/ondanka/taiyoukou-jyuutaku/j-youkou.pdf
その他多数あるので、お住まいの地域で調べてみることをお勧めする。
資料提供:
太陽光発電協会
太陽光発電システム 見積工場
シャープ株式会社
株式会社イーエスピー
株式会社サンブレス
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