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JXDAの月例研究会とは、毎月テーマを設け、専門知識を持ったメインスピーカーが提供する情報や研究成果をもとに、情報や意見、アイデアを出し合い、目標に向かって行動を起こしていくものです。
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■2月度研究会 2004年2月25日実施
メインスピーカー:小出 兼久
JXDAによる気象観測報告とアメリカ最新事情
JXDAでは、ランドスケープにおける資源エネルギーの保全・活用と効率的な都市緑化の推進をめざし、気象観測情報をランドスケープにおけるデザイン、メンテナンス、植物選択、などの不可欠の要素に取り込む研究を進めている。
昨年末よりJXDAによる本格稼働したランドスケープ空間の気象観測経過とその活用・応用の可能性、および小出兼久が2月上旬NWフラワー&ガーデンショーへ視察に行った際情報収集してきた米国最新情報について、緊急報告会を行った。
1.JXDA気象観測プログラムについて
緑空間における水保全や資源エネルギー保全を推進するためには、空間のエネルギー収支を把握する必要がある。JXDAは、次のような各種気象の観測を始めており、データの集積から分析、報告までシステム化している。開始から3カ月、すでにこの結果を受けて、幾つかの具体的な場所で従来の緑化技術の見直しが始まっている。
○測定項目
(1) 温/湿度計・・・・・相対湿度と温度を測定
(2) 風向・風速計・・・平均風速、ベクトル平均風向、最大風速、起時の測定
(3) 日射計・・・・・地表面に到達する全天日射量を測定
(4) 雨量計・・・・・雨量を0.5mmごとに計測
(5) TDR土壌水分計・・・・・土壌中の平均含水率を測定
(6) 測定地温計・・・・・地中温度計測
(7) 熱流板・・・・・地中熱流や壁面からの熱流を測定
(8) 灌水量・・・・・灌水システムにおける使用水量の計測
(9) 蒸発散(ET)・・・・・蒸発散量の測定(平成16年4月より開始)
○ 観測地点:東京など計10地点
活用の方向
上記の項目を観測することにより、地域固有の気候や微気象に合い、水を有効活用する緻密な緑化計画を立てることが可能になる。地域や場所・土壌にあった植物の選択と的確な灌水システムによる緑化=ゼリスケープのノウハウを様々な分野へ活用を進めていく。
○ ET計測に基づいた灌水システム
地域に応じた気象条件と、個々の植物の育成に必要な最低限度の水要求量、土壌などの研究開発を行ない、ET(蒸発散)計測に基づいた灌水システムの開発・導入を行う。
○ 気象観測情報ネットワーク
現在、気象庁などから配信される地域の気象情報は通常5km程度の範囲であるが、このような気象観測機器を用いるとピンポイントの計測ができる。気象庁国際基準をクリアすることで、これを地域に広め、農業分野のみならずランドスケープ分野においても植物の育成・管理に役立て、情報をネットワークで利用できるシステムを構築する。すでに、東京・神奈川・千葉・岡山などこの試みは全国に広がり始めている。いずれは米国にて見られるような、学術的実務的に活用できる気象マップ作成を展望としている。
○住宅開発への応用・効果測定
観測の結果を用いて、屋上・地上を問わず都市緑化に、効果測定・審査基準を導入し、住宅開発に役立てる。
○学校教育への活用
教育、運営に関し、地球環境問題を含めた気象情報の活用を導入する。
2.NWフラワー&ガーデンショー報告
本年2月4日〜8日米国シアトルにてノースウエスト・フラワー&ガーデンショーが行われた。毎年視察に渡米している小出兼久より、今年の報告が行われた。
○今年の傾向
年々商業主義的になっている感はあるが、今年はノースウエスト地域の自生植物のみで構成された提案型のガーデンが目に付いた。
 

[まとめ]
今回の視察は、恒例のNWショーが主目的であったにもかかわらず、現在進めている日本の地域別気象観測の参考となるような、アメリカで進行中の研究や最新機器について多くの情報を得られた。NWショーに見られたように、今や自生植物のガーデンへ回帰し始めている。地域や気象を知り、その結果を踏まえて土地を有効利用していこうというのが、今アメリカ全体で起こり始めた流れのようだ。その根底にあるのは資源の枯渇に対する明確なあるいは漠然とした危機感であろう。日本のランドスケープにおいても、資源の活用は重要なテーマである。JXDAは、来月にも新たな観測機器を導入し蒸発散観測や灌水効果の測定を開始するとともに、民間通信事業とも連携体制を進めている。まだ第一歩ではあるが、今後その経過を随時発表していく予定であり、広く業界や一般の注目を集めることは間違いない。
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