コロラドウォーターワイズ評議会会報誌

 

" Water Wise " , The official Publication of the Colorado Wate Wise Council,Vol.10, Number4,Winter2004

スポットライト:小出兼久
聞き手:David Winger, Denver Water

 

ー あなたの背景について少し教えてください。

小出:私は、1951年に東京で生まれ、ベルギー国立工芸美術学校を卒業しました。その後、ベルギーのジョス・ワインベルグ建築事務所での仕事を皮切りに、ヨーロッパの各地でランドスケープの授業やトレーニングを受けました。私はASLAのメンバーであると同時に、一級の環境科学技術士でもあります。
アメリカでの仕事の本拠地は、1989年からバーガーパートナーシップにおいています。1981年に、ランドスケープアーキテクトの集団であるランド・ジャパンデザイン事務所を設立し、ランドスケープデザインと現代美術を含む活動を行っています。2001年に非営利団体である日本ゼリスケープデザイン研究協会を創立しました。

ー 日本でのゼリスケープはどのように重要なのでしょうか?

小出:日本におけるゼリスケープは、コロラド州のそれとは異なる環境にありますが、ゼリスケープの概念からは多くの学ぶところがあります。例えば、大都市東京は密集化し、住宅における緑、あるいは公的な施設の多くの表土は、コンクリート、アスファルトで覆われる一方です。これは、都市の砂漠化です。こうした環境下で、「水」は、さまざまな障害をさまざまなところで生んでいます。例えば、地下鉄の洪水、排水システムの不十分な容量、ストームウォーター管理の欠如、都市のヒートアイランド効果などがあげられます。我々は、ますます真剣に「水」問題を受け止めることが肝要であると考えています。

ー あなた方の目標とするゴールはなんでしょうか。

小出:私たちの活動は、まだ始まったばかりですが、ゼリスケープ・モデルガーデンを東京、千葉、岡山と3箇所展開してきました。と、同時に、気象観測を通して、降水量、地温、地熱、土壌水分など、微気象データを計測しています。日本でのゼリスケープに対する意識は、十分とは言えないが目覚め始めています。私たちは、2003年の「世界水フォーラム京都会議」における提言を、私たちのメッセージの出発点にしてきました。「水」を共通の意識として、ゼリスケープを日本にあわせて調整し適用させる、この取り組みを日本だけでなくアジア全体に広げたいと考えています。

ー あなたは10冊の著書を書いていると聞きましたが、それらはすべてゼリスケープやガーデニングの書籍ですか?

小出:私の著書は、たいていが、私が歩んだランドスケープを通した経験から書かれたものが多いです。最近は、米国の入植時代からのランドスケープをテーマにしたもので、「空想家の庭」という本を15年前から書き続けています。これは、マース・ジェファーソンの庭を見てインスパイアされたもので、何故、庭を作ったのか?に始まる、アンドリュー・ジャクソン・ダウニング、オムステッドなどの、アメリカのランドスケープの歴史上で重要な役割を演じた人々も交えたものです。近日刊行の予定です。
現在は、また、「人は何故庭を作るのか?」という視点からのコラムなど、専門誌や月刊誌に記事を書いています。いつかゼリスケープについて書ければいいと思っていますが、まずは、あなた方(=David Winger)の最初の書籍である『Xeriscape Colorado, A complete Guide by Connie Ellefson and David Winger 』を日本語に翻訳してこちらで出版するのがいいかなと考えています。

ー 次に取り組みたいと思っていることはありますか。

小出:活動資金の問題がありますが、大学でランドスケープを学ぶ学生や行政の公園管理局にゼリスケープの重要性と意味を伝えて行きたい。最近、私は、隣国の中国ゼリスケープを推進しはじめました。先月11月3日から広州にて開催されていた地球規模のランドスケープ会議に参加し、ゼリスケープをパネルにして展示紹介しました。さらに、2005年9月には、中国の泰州市の大学でランドスケープの授業を行なう予定です。
また、2006年にメキシコで開催される第4回世界水フォーラムにも、ゼリスケープから分科会を開催し、CWWCと共同提案したい希望を持っています。

ー Water Wiseの読者にむけて一言お願いします。

小出:私たちの組織は数人から始め、資金もないが、夢はたくさんあります。今私は、次の世代に「地球は水の惑星である。人々は、(国や地域・民族や人種を超えて)水でひとつにつながっている「」ということを伝えていきたいのです。

戻る

 

掲載誌一覧へ戻る  PREV   NEXT