ストームウォーターという言葉で語る雨水の問題

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降雨システムについて学ぶ・環境教育のポスター(米国)

 

地球温暖化や異常気象が原因で降雨事象も変化している。しかしながら、降雨についてはそれ自体を分析して議論することよりも、降雨がもたらす影響を学ぶべきである。中でも集中豪雨はさまざまな被害をもたらす。

 

豪雨という問題を取り上げる。英語でいうとストームウォーターである。我々は、ストームウォーターについて、真剣に取り組む時期に来ている。

 

都市のストームウォーターとはなにか?

 

ストームウォーターstormwaterとは、日本語の辞書を見ると「嵐」とか「豪雨」という訳語が見当たる。なるほど、確かにこの単語は、storm(嵐)とwater(水)という二つの単語をくっつけた造語である。

 

この言葉は、アメリカの水管理行政でよく使われる言葉で、以前は、storm waterと二つの単語のまま書かれていることもあったが、最近では専ら、一つの単語として扱われることが多い。このことは、この「stormwater」という言葉が広く認知されたことの表れではないかと考える。この言葉が使われ出したのは1980年代後半ごろで、私がそれに気が付いたのは1990年代になってからであった。が、ごく普通に当たり前に目にするようになったのは、2003年から2~3年の感がある。しかし、日本ではまだ馴染みのない言葉である。そこで、私もストームウォーターという代わりに、「降雨」とか「雨水」を使うことが多い。「豪雨」と訳さないのは、ひとえにストームウォーターが「豪雨」時の雨水のみの問題ではないからである。どの程度の雨から豪雨と呼ぶのかを考えることもむずかしい。実際のところ、「降雨」と「雨水」と「豪雨」という3つの言葉の間には、若干意味が異なる部分がある。それについては分かっている。そこで、この記事はstormwaterについて語るためのものであるので、通常は「雨水」という言葉を使うところだが「ストームウォーター」を用いていこうと思う。

 

本題はここからである。
そもそもストームウォーターとはなんであろうか?

 

およそ米国でstormwater managementが叫ばれるようになって久しい。豪雨管理、雨水管理どちらもあっているが、どちらも伝えきれないニュアンスがある。伝えきれないのは、ストームウォーターという言葉のニュアンスである。厳密に言うならば、それは純粋な雨水とは少し異なるであろう。それは、雨と共に運ばれる物質が加わった雨水のことを指しているのだ。

 

実はこの、雨水と共に運ばれる物質が問題なのである。ストームウォーターの管理や処理とは、この含有物質をいかにして都市の水域へ持ち込まないようにするか、ということを目的としているのだ。市街化区域では、建物の屋根や車道、歩道などの舗装面に降った雨は、下水系と分けられた雨水管系によって、その場から遠くへと運び去られる。合併式よりも分流式下水道のほうが、処理の手間も費用も抑えられるため、日本同様、アメリカでも分流式下水道を取り入れることが促進されている。しかし、ここで想定外の問題が発生した。汚水と違って、ストームウォーター(日本ではこれを雨水と呼んでいる)は、通常は処理されない。アメリカの地域によっては、(大抵はシステムの最終地に設置される)ストームウォーター処理設備を用いてろ過される場合もあるが、多くの場合は、ストームウォーターは街路や樋から直接的に河川や港、海洋へと流れ出るのが普通である。日本の分流式下水管も、ウトームウォーターを下水と分けて運ぶが、公共の水域へと流すのみである。

 

つまり、ストームウォーターは、街路というその発生地点から魚やカエル、カニその他の水生動物や植物が生息する水路へと直行する。水路の近くに住んだことのある人や河川や湖、海辺または海中でよく時を過ごす人ならば、雨が降った後に起こる現象について精通していると思うが、汚れたストームウォーターが水路・水域へとやってくる。これは泥のような色に見える。また、よくゴミが混じっているので、どのような水か明らかに見て取れるだろう。それが、きれいな水を囲むように散開するのも見てとれることだろう。降雨後の水域は、雨水とともに運ばれた汚染が重大な健康被害を生じさせる危険があるかもしれないため、2、3日の間、泳がないようにすることが推奨される。

 

とはいえ、すべてのストームウォーターが等しく汚れているわけではない。都市部と郊外では汚染の程度は異なり、また、都市部や郊外それぞれの内にあっても、敷地環境によって汚染の段階は異なるだろう。しかしながら、ストームウォーターというのは、雨水が硬質な表面から流出することによって発生する。この硬質な表面というのは、駐車スペースや車両の往来に使われていることが多いのだが、ストームウォーターの中から見つかる汚染物質のリストを見ればわかるように、駐車場や道路は汚染物質が存在する場所として潜在的に可能性がある。

 

ストームウォーターは汚れている可能性が高いとすると、次に問題となるのは、その汚染の程度は一体、我々の生活や環境に影響を及ぼすほどなのか?という点である。しかるにこれは、日本の現状からは非常に答えにくい問題だ。なぜならば、研究や調査以前にストームウォーターは危険かもしれないという警告の類も、皆無といっていいくらい情報がないからである。極端におびえる必要はないが、しかし、汚染が全く皆無とも言えない。

 

車社会のアメリカでストームウォーターの汚染(重金属と油が主)が深刻で、その水源と環境の被害を防ぐために、行政が連邦・州・市・単位で具体的に動いているのは、事実である。まずはこのことを知っておくことが重要だ。それを他山の石としてしまうのかどうかは、その後の我々の問題である。

 

ストームウォーターによる汚染は、誰もが制御できる汚染である。自分たちの住む場所や働く場所で、それぞれが近隣街路からの排水を管理するような役割を務めるならば、それは制御することができる。言い換えると、もし、あなたが自分の敷地から出るストームウォーターを管理するならば、それはつもりつもって、浜辺や港、河川で見られる水質汚染を劇的に改善するということでもある。個々の一歩は小さいかもしれないが、その集まりは大きな改善となる。逆に言えば、これ以上のよい解決策はないのがこの問題である。

 

ストームウォーターの汚染を減らす最も効果的方法とは、第一に、ストームウォーターがシステムに入るのを止めることなのである。

 

※他の記事ではカタカナ言葉であるストームウォーターでなく雨水を(同じ意味で)使っていることが多いのでご注意ください。